第9話 交易

自慢の赤髪を短く切っていたイレーナに比べて、肩よりも長い髪を持つヘレナとユリアは少し遅めに身体を洗い終わった。

タオルを取る事をだいぶ躊躇していたイレーナに比べて、ヘレナとユリアはあまり気にせずに湯船に浸かった。そして、クレアも入る。

ヘレナは俺の左側、ユリアとクレアは、恥ずかしいからか、イレーナの右側に座った。

左から、ヘレナ、俺、お母様、イレーナ、ユリア、クレアの順だ。流石に誰も、反対側に行く勇気はないので、横一列に並ぶ形となった。


入浴剤などは入れていないので、お風呂の中は透き通っている。屈折率の関係で、多少位置はずれているが、2人の身体はここからでもくっきりと見えた。


俺は、後で何を言われるかわからないので、バレない程度に堪能しつつ、お母様やイレーナとの会話を続けた。


「そういえば、ガラシオル帝国やパラス王国との貿易の件はどうなったのよ。」


「まだ結果はわかっていないけど多分成功したと思うよ。現在戦争中のあの国が武器の販売を断るわけがない。」


【それに、今回販売する予定の武器の数は合計4万人分です。長い期間戦争を続けている国家にとっては、喉から手が出るほど欲しがると思われます。】


ギャルドラン王国は、思ったより武器を蓄えていたため、ありがたく全て没収させてもらった。ちなみに、彼らには外国に売る事は伝えていない。

お陰様で、大儲けだ。


「確か、両方とも物々交換じゃなくて現地のお金と交換していたわよね。外国のお金は手に入れても意味が無いんじゃなかったの?」


「お金っていうのは信用だからね。信用が無くなれば、お金の価値は簡単にゼロになる。」


「じゃあなんで?」


「外貨を稼いでおけば、選択肢が広がるからね。現状、ガラシオル帝国からどうしても買いたいものとかはあんまり無いから、物々交換ってのが面倒だったんだよ。」


他にも、SHSがガラシオル帝国内で活動する時の費用にも使える。ハーンブルク領の通貨である『ベル』との交換レートが決まっていないのも理由の一つだ。

だが、交換レートを設定するためには、両国の経済状況を考える必要があり、お隣のサーマルディア王国ならばともなく、遠く離れたガラシオル帝国とハーンブルク領の経済状況を考えた上で、毎回交換レートを設定しなきゃいけないのは流石に面倒だ。


ならばいっそのこと、金や銀といった価値がある程度安定する物の方がいい。ガラシオル帝国の貨幣は、金や銀の価値を基準に作られているので安心だ。


パラス王国についても同様だ。

一度、お金に変えてもらってから、信頼できる商人を通してほしい物を手に入れる作戦にした。


「では具体的に、何を買う予定なんですか?やはり、例のアレですか?」


今度は左から、声が聞こえた。

何を買うか、まだ教えていなかったはずだが、勘の鋭いヘレナは俺が何を買おうとしているのかわかったようだ。


「あーアレね。前までは、鉄鉱石や石炭に夢中だったけど、次はアレの時代って言っていたものね。」


「ハーンブルク家が強く興味を持っているという噂が、商人の間で出回り、価値が高騰しています。とは言っても、普通の商人ではなく一部の大きな商会だけですけど・・・・・・」


「ハーンブルク研究所でも、アレの研究を優先度一位にしていましたね。既に、試作機は幾つも完成しているそうですよ。」


う〜む、結構秘密にしていたと思ったけどバレているっぽい。

まぁイレーナは軍艦の燃料としてアレが少しだけ使われている事を知っているし、ユリアは貿易系を調べるの得意だからハーンブルク家が多く輸入しているものを調べられるし、お母様もハーンブルク研究所には定期的に視察をしているので、ハーンブルク研究所が何を研究しているか調べるのは容易だ。


「正解。今後の構想としては、石油の研究に全力を尽くそうと思っているよ。まぁまだわからない事はたくさんあるけど、その分すごい力を秘めているかもしれない。」


俺は、今後の目標を語った。

戦争が無くなれば、その分色々な事に挑戦できそうだ。人や物が、シュヴェリーンに集まるようにすれば、科学技術は大きな発展を遂げるはずだ。

お母様の話によると、俺が遠征に行っている間、シュヴェリーンは特に何事もなく、平和だったそうだ。つまり、優秀な研究員がたくさん育っているはずだ。


既に、石油精製技術はあるので、あとはこれを複数作って、活用するだけ。

夢は広がる。


「それはまた、何か面白いものを作るためですよね。」


「うん、戦争が始まる前から考えていた事なんだけど、石油を上手に使えば、色々な面白い事ができそうなんだ。」


「ふふふ、それは楽しみですね。」


ヘレナは、まるで自分の事のように微笑んだ。俺は同時に、興奮して熱く語りすぎでしまった事を悟る。

周りを見回すと、他のみんなは既に呆れていた。お母様だけは嬉しそうな顔をしているが、普段の俺をよく知っているイレーナとクレアはお察しだった。


その後、先程お母様の報告で聞いたテラトスタで起きた問題点を、解決するための策を練りながら、久しぶりのお風呂を楽しむ事にした。







ちなみに、俺だけタオルを最初からしっかりとつけていた。

まだ14歳だけど、一応念のため・・・・・・




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どうでもいい話


人気投票の締め切りは、本日(9月15日)の23時59分までですっ!

まだ投票していない方はお早めにっ!



明日は、結果発表回になりそうです。

それと、コメント欄で1位予想待ってますっ!

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