第14話 若者

「圧倒的だな。やっぱり教官が良かったのかな?」


【恐縮です。】


新設された特殊部隊MYOHの教官を務めた青髪の謎の美少女は、一体誰だったのだろうか。

MYOHメンバーには正体を伝えていないので、おそらく彼らはいつ目の前に現れるかわからない恐怖から、ビクビクしながら日々を過ごしているだろう。


【想定していたよりも、ずっと無駄撃ちが多いですね。】


そうか?

割と普通だと思うけど・・・・・・


【何人か、同じ標的を撃っている馬鹿もいました。これは後で、追加のハードモードトレーニングを必要としているというアピールなのでしょうか。】


うわ〜

ほどほどにしてやれよ〜

戦争終わったら大変そうだな〜あいつら。


【マスターも、戦争が終わった後の事を覚悟しておいた方がいいと思いますよ。】


え?何か言った?


【いえ、何でもありません。それよりマスター、敵が撤退していくようなので、深追いはせず彼らを労いましょう。】


了解っと。

何かアイの謎の呟きが聞こえた気がするが、難聴系主人公である俺は、聞き流す事にした。


ボクナニイッテイルカワカラナイ


とりあえずカタカナにしたら読みにくい事を考えておく。

そして俺は、イレーナとの夕食を楽しみつつ、今後のプランを練り直した。



✳︎



「まさかこれほどとは・・・・・・」


ギャルドラン王国国王に、最後の反抗を行う事を提案した張本人、ダンタリオ侯爵は、城壁の上からハーンブルク陸軍に圧倒されるギャルドラン王国軍を眺めていた。


彼の父で、ギャルドラン王国軍の参謀長を務める男を説得し、最後の反抗を行わせて異分子を排除する計画を作った。


まだ20代の若き侯爵家当主は、これが自国の損害、最小限に食い止めるための最善策だと考えていた。

今のうちに潰しておかないと、ハーンブルク家による占領が完成した後に反乱を起こされる可能性があったからだ。


そして、死ねと命じた者の責任として、彼は最後の反抗の現場を遠くからといえど、しっかりと目に焼き付けていた。


噂に聞く、超兵器や恐るべき練度の高さ。彼は、ハーンブルク産の双眼鏡を使いながら、戦場を眺めていた。

ハーンブルク家の化け物、レオルド・フォン・ハーンブルクの噂を聞いた時、彼は顔も見たこともないレオルドに少し親近感が沸いていた。


剣の事しか頭に無い父親が、政務が嫌だという理由で、まだ20歳だった次期当主であり息子である自分に家督を継承し、その日から一生懸命に頑張った自分とレオルドが少し似ていると思ったのだ。


だが、レオルドという男は、自分とは比べ物にならないぐらいの化け物であった。

戦力差8倍の敵に圧勝したというニュースを聞いた時から、薄々気付いていたが、比べるのも烏滸がましいほど、彼は上を行っていた。


「なるほど、ハーンブルク軍は全て、民兵ではなく常備軍であるという噂は本当のようだな。」


簡単に言えば、練度が違いすぎる。

先ほどから、ギャルドラン王国の兵士達はバラバラに突撃を繰り返すのに対して、ハーンブルク軍の兵士達は一糸乱れぬ動きを見せていた。

そしてもう一つ、ハーンブルク家が開発した、ライフル銃の恐ろしさが良くわかった。

先程から、ギャルドラン王国の兵士達は一向に近づけていない。仕組みはわからないが、従来の銃とは比べ物にならない早さで次の弾を発射できるシステムが鍵となっているだろう。もちろん、すごいのはそれだけでは無い。そのような超兵器が、何千何万とあるのだ。


「あのレベルの兵器を量産か、次元が違うな。これはハーンブルク家の時代が来たと言っても過言ではないな。」


量産体制に入っていると言う事は、それができるだけの国力があると言う事だ。まぁハーンブルク家は、国ではなく領なので、領力と言うかもしれないが、おそらくギャルドランと比べても上を行かれているだろう。


そして、忘れちゃいけないのが弾丸だ。30秒に1発しか撃っていなくても、1万人で1時間撃てば120万発、5時間撃てば600万発だ。

しかもそれを、ハーンブルク軍全員が行っているのだ。

もう笑うしか無い。


そもそも、ハーンブルク家と事を構える方が愚かだったと、言わざるを得ない。




✳︎



翌日、俺の読み通り1人の若者がハーンブルク家の本陣を訪ねて来た。

もちろん、ただの若者ではない。王都に残っていた貴族の中で最も爵位が高かったダンタリオ侯爵家の当主だそうだ。

護衛を途中まで連れて来ていたが、ハーンブルク軍の陣の中では1人で行動していた。


「護衛無しとは、驚いたわね。」


「いや、ここで俺たちが殺すような真似はしないと確信しているんだと思う。」


ハーンブルク家が彼を殺せない理由は簡単だ。もしこの場で彼を殺せば、その事実を餌にギャルドラン王国の国民を焚きつけ、死兵となる可能性があるからだ。

それと、この戦争を早く終わらせたいハーンブルク家にとっては、何のメリットにもならないからだ。


「なかなか胆力があるわね。」


「そうだな。」


俺とイレーナが軽口を言い合っていると、不思議なオーラを放った男が、用意してあった椅子に座った。

想像よりもずっと若い。

侯爵家の当主という話だったから、てっきりお爺さんがくると思っていたが、どう考えても20代以下だった。

彼も俺と同じで、脳筋な父親に政務を押し付けられた同志なのかもしれない。


【何となくですが、同じような雰囲気がありますね。】


おいおい。


「さて貴殿が、ギャルドラン王国の代表という事で、よろしいかな?」


「はい、お初にお目にかかります。ダンタリオ侯爵家当主のジャスタルと申します。」


さて、彼は何を語るのだろうか。



___________________________


どうでもいい話


考えてみると、作家仲間いないな〜って思う今日この頃。

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