第8話 sideユリア4
短めです。
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「報告しますっ!付近ギャルドラン王国軍の姿は見えないようです。」
「それは少し妙だな。こちらの守りが薄すぎる。」
トリアス方面やサーマルディア方面に軍を送っているので、ポラド王国方面が手薄になるのはわかるが、1人も敵兵が見えない事には少し違和感を覚えた。
普通なら、最低でも数千名の敵兵が待ち構えているはずだからだ。
「いったいどういう事なのでしょうか・・・・・・」
ジルバートの隣を馬に乗りながら歩く私は疑問の声を上げた。政務ならともかく、戦争の事となると私はあまり詳しくない。今回も、一応ハーンブルク連合軍の総指揮の座に座っているが、半分はお飾り見たなものだ。
私なんかより、ジルバートさんやハーンブルク軍の将校の方が戦場をよく知っている。
ポラド王国の攻略も、ハーンブルク軍の将校が、それぞれ話し合って方針を決定し、私はその指示通りに命令を出していただけだ。
そのおかげで、わずか3ヶ月でポラド王国の王都を攻略できた。
というわけでこういう時は、ハーンブルク軍の将校を頼る。
「どう思いますか?」
「はい、可能性は2つあります。1つ目は、伏兵がいる可能性です。もちろんこちらからも、何名か斥候を派遣する予定ですが、敵の方が土地に詳しいので、思わぬところに敵が潜んでいる可能性は十分にあり得ます。」
SHSは、その方針として将来的に敵対するかもしれない国の大まかな地形や戦力について事前に調査を行っている。
敵の行政にスパイとして潜り込む事はもちろんの事、裏切り者を作らせたり、場合によっては暗殺を行ったりする。もちろん、ハーンブルク家の仕業であるとバレるような事はしないし、仕事はきっちりとこなす。
しかし、土地の調査となるとそれは難しい。戦争になった時に有利になりそうな地点は抑えてあるが、必ず穴は存在するはずだ。
「確かにそれは用心しなければならないですね。それで、もう一つというのは?」
「はい、SHS及びSKSETによる情報封鎖によって、王都にポラド王国崩壊の知らせが届かなかった可能性です。」
この男にとって、より可能性が高いのはどちらなのか聞かれれば、おそらく後者を選ぶだろう。
SHSにとって情報封鎖は、何度も行っているので、難しいとはいえ不可能ではなかったからだ。
「そんな可能性があるのですか?」
「はい。ハーンブルク領が誇る精鋭部隊であるSHSが本気になれば十分可能だと思います。そうなると、出来るだけ敵に気づかれないようにして迅速に首都を制圧するのが最善かと。」
「どうして?」
「はっ。おそらく、レオルド様なら敵の首都の南側に陣を展開しているはずです。となると、我が軍が北側から攻撃する事で、挟み撃ちの形になります。」
ハーンブルク軍の将校であるこの男にとって、ハーンブルク軍の参謀総長を務めるレオルドは、教官とほぼ同じような存在である。
そのため、レオルドの行動をある程度予想できる。
「なるほど・・・・・・ならこのまま直進するべきですね。」
「はい。時間を与えた結果、敵に我々を発見されるぐらいなら、このまま進むべきです。」
「わかりました。ではそれで行きましょう。」
「了解。皆と情報共有してきます。」
「はい、よろしくお願いします。」
そして、ユリアを中心としたハーンブルク連合軍は、ギャルドラン王国の国境を越えた。
✳︎
「ユリア様、ジルバート様、ギャルドラン王国の首都マルカトが見えました。」
「アレが、マルカト・・・・・・」
数週間後、結局1度も敵の軍隊に出会わずに進軍を行ったハーンブルク連合軍は、ついに敵の首都マルカトを目前に捉えた。ほぼ間違いなく、既に敵に発見されているが、敵の攻撃が無かった。おそらく敵は、首都を決戦地に選んだのだろう。
例によって、ハーンブルク連合軍はマルカトの北側にある高台にひとまず陣を構えた。
「あぁ。それでその向こうにうっすらと見えるのが、レオルドの陣地だと思うぞ。あいつならあそこに陣地を作るだろうな。」
「遠いですね。」
双眼鏡を使って、ぎりぎり見えるか見えないかの距離に、レオルドの陣地だと思われる建物が見える。
兵力や武装などはさっぱりわからないが、おそらくあそこに、私の夫がいるのだろう。
そして、遅れて気付いた。
「あれ?マルカトが所々燃えていませんか?」
「あぁ、そのようだな。」
隣で双眼鏡を覗いていたジルバートにも、同様のものが見えたようだ。
「喧嘩か、反乱か、ただの火災か・・・・・・」
「おそらくですが、レオルド様が絡んでいるのでしょうね。」
「あぁ。そうだろうな・・・・・・」
私とジルバートさんは、ひとまず次の指示がレオルド様から来るまで待機する事にした。
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どうでもいい話
この作品の紹介文を少し工夫しました。
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