第2話 突撃

「おいっ!何なんだありゃっ!」

「味方の船、だよな・・・・・・」

「当たり前だ、おそらく何かトラブルが発生して、やむを得なく撤退してきたのだろう。」


ギャルドラン王国の首都『マルカト』周辺を、海賊から守る事を目的として創設されたギャルドラン王国海軍のうちの1隻が、水平線上に謎の海上物体を発見した。

遠すぎて、船種や数は特定する事ができなかった。

しかし彼らは、特に焦る様子も見せずに海の向こうを眺めていた。

といのも・・・・・・


「え?どうして我が国の船とわかるんですか?」


「ははは、考えてみろ。ここからでも船種が特定できないほど遠くにあるという事は、相当大きな船のはずだ。」


「確かに、海賊ならあんなに大きな船は持っていないはずですよね。」


「あぁ、ガラシオル帝国の船って説もあるが、滅多に無い事だからおそらく無いだろうな。」


動力が無い小型船で、遠くまで行くのは流石に厳しい。

多少船の操作が上手な者でも、ほとんどの確率で転覆するのがオチだろう。


このような理由から、ギャルドラン王国の海軍は完全に油断していた。


アレが敵の戦艦であるという事に気づいた時には、既に周囲の船が多数沈められた後であった。


「お、おいっ!話が違うぞっ!」

「何なんだアレはっ!」

「いったい何者なんだっ!」


遥か遠くに浮かぶ船の一隻が、何かが光ったと思ったら隣にいた船が文字通り真っ二つに割れた。

海軍全体に、困惑と動揺が広がる。ギャルドラン王国の海軍は、一瞬何が起ったのかを理解できなかった。


やがて気づく、自分達が何者かから攻撃を受けている事に。

一体どこから?

真っ先に疑ったのは正面にいる謎の船からであったが、流石に遠すぎて攻撃が届くはずがないと判断した。しかし、すぐにそのあり得ない可能性が、事実である事に気付かされた。


「嘘だろ・・・・・・どれほど距離が離れていると思っている・・・・・・」


「お、おいっ!早く逃げるそっ!」


「逃げるって言ったって何処へ・・・・・」


「それは・・・・・・」


彼らが乗るギャルドラン王国海軍の中型船は、動力などあるわけが無く、風かオールを使って移動するものであった。

そのため、逃げようと言っても、神に祈るしか手は無かった。


もちろん、海に飛び込むという判断は死に等しい。救命ボートや救命フロートの類は無いし、助けてなんて来るわけがない。

海に飛び込む=死というのは、海軍全体の共通認識であった。


「全員で漕ぐぞっ!」


「「「おうっ!」」」


彼らはオールを手に持ち、息を揃えると、一切に漕ぎ始めた。もはや、これしか助かる方法が無いと悟って。

残された僅かな希望は、上手く波に乗り、戦域を脱出する事のみであった。

しかし無慈悲にも、砲弾の雨は止む事を知らず、彼らの乗る船を容赦なく海の底に沈めた。



✳︎



「目標である敵、中型船の撃沈を確認、次の目標に照準を合わせます。」


「わかった。」


一つ、また一つと敵戦艦の撃沈の報告が艦橋に、響き渡った。高速で移動する戦艦ならともかく、おんなじ方向に同じ速度でしか動かないギャルドラン王国海軍の船など、我々ハーンブルク海軍の的でしかなかった。

敵の船の中で、大砲を積んでいる艦は全体の2割ほどしかおらず、大砲を積んでいる船を優先して沈めるように指示を出した。

後は各々の艦の艦長が、敵の船の位置と味方の船の位置を考慮した上で、片っ端から沈めるように命じてある。


【やはり、練度が最初に比べて桁違いに上がっていますね。ハーンブルク軍養成学校を設立したのは正解でした。】


そうだな。

ハーンブルク軍の頭脳面での強化を目標としたハーンブルク軍養成学校のお陰で、ハーンブルク海軍はさらに強くなった。

卒業後、数年間の徴兵と数十年間の予備役を義務とする代わりに、年齢制限無し、学費、食費、完全寮制で寮は全て無料、おまけに給料付きという、軍人養成のためだけの学校を建設した。


意外な事に結構人気で、多くの優秀な軍人を発掘できるようになった。貧しい人や子供だけでなく、現役バリバリの軍人も入学を希望した。もちろん、出身地や思想は入念にチェックしているので、変なやつが紛れる心配は少ない。


すると、止む事を知らないハーンブルク海軍からの砲撃によって、チラホラ敵の中に離脱しようとする船が現れ始める。

その動きを受けて、俺の頼れる相棒であるアイが俺に提案する。


【目標を変更しましょう。離脱した敵の船が、何らかの手段を使って敵の首都にハーンブルク海軍の襲来を伝えられたら厄介です。この場で敵の船は片付けておきましょう。】


了解っと。


「目標変更、戦域を離脱しようとする船を優先的に狙え。一つも逃すなっ!」


「「「了解っ!」」」


俺の指示で、掃討戦へと移行したハーンブルク海軍は、被弾ゼロでギャルドラン王国海軍を撃滅し、ギャルドラン王国首都であるマルカト目前まで迫った。



___________________________


どうでもいい話


星3000(後97)

ブックマーク7000(後400)

200万PV(後18万)


果たしてどれを最初に達成するでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る