第6話 sideイレーナ4
「やっぱりレオルドは天才ね・・・・・・」
私が乗る『霧雨』の艦橋からは、おそらく誰も見た事が無いだろう光景が広がっていた。
この光景を見て、私はそう呟くしかなかった。
✳︎
私は今日、ハーンブルク領の軍港テラトスタへとやって来ていた。
昨日進水したばかりの『マウントシリーズ』4隻、そして先日新たに造られた『レインシリーズ』2隻を加えた、合計24隻のハーンブルク海軍の軍艦が一列に並んだ。
これを見れば、ハーンブルク家がいかに強大かがわかる。
また、多くの領民も自分達を守る存在である海軍を一目見ようとテラトスタに集まった。
第一艦隊
レインシリーズ・・・春雨、秋雨
マウントシリーズ・・・富士、北岳、穂高
第二艦隊
レインシリーズ・・・時雨、五月雨
マウントシリーズ・・・荒川
黒船×3
第三艦隊
レインシリーズ・・・霧雨
黒船×3
帆船×3
第四艦隊
レインシリーズ・・・氷雨
帆船×5
レオルドは、合計24隻の軍艦による新防衛体制を領民に向けて発表した。
そして、それぞれの艦隊のリーダーにはハーンブルク家の人間が選出された。
それぞれの役割と艦隊のリーダーには、
第一艦隊・・・レオルド
テラトスタ-リバスタ間
第二艦隊・・・エリナ
テラトスタ-ハワフシティ間
第三艦隊・・・イレーナ
テラトスタ-デュークス島間
第四艦隊・・・ユリウス
テラトスタ-ジオルターン間
の防衛をそれぞれ担当する事となった。また、戦時中は動きなどもそれぞれ共有し、ハーンブルク海軍の強さを盤石にした。
「どう考えても過剰戦力だけど、今の私たちの勢力範囲を考えたらこれぐらいでも妥当なのよね〜」
「そうなのですか?」
隣で私の呟きを聞いていたアキネが疑問の声を上げる。
「えぇ、レオルドとしてはもう一つ艦隊が欲しかったみたいだわ。敵拠点をいつでも攻撃できる打撃部隊が欲しかったみたい。」
「そんなに必要なのですか?」
今度は反対側にいたセリカが食いついた。気持ちは私もわかる。
私も今までは、海軍の必要性を疑問に思っていたし、同じような事を何度かレオルドに聞いた。
私は振り返らずに質問に答えた。
「簡単に説明すると、ハーンブルク家には強力な海上戦力を持つ同盟国がいないのよ。だから未知の敵が飛び地に攻めた来た時でも対応ができるように自分達の戦力だけで他国からの侵略に耐えられるように船が沢山必要なのよ。」
レオルドが何を恐れているか、何となくわかった。
昔こんな話を聞いた事がある。愛する人ができると、その人の価値観や口癖がうつるという話を。
私もレオルドの構想に触れ、私も価値観が変わってきたのかもしれない。
「確かに、領土が遠いと、色々な方面をカバーしなきゃですからね・・・・・・」
「まぁ今レオルドがこっそり開発していたアレが各都市に設置されたらもう少しマシになるかもしれないけど、まだまだ先の話でしょうね。」
『無線通信器』
私も実物を見せてもらったが、その時の驚きは言葉で言い表せないほどであった。
遠く離れた相手と連絡ができるというのがどれほどの利益をもたらすか想像がつかない。
お父様がレオルドの才能を見抜き、私をレオルドとの橋渡し役に選んだのにも納得できる発想力と行動力、お父様もレオルドがこれほどの天才だとは思いもよらなかっただろう。
さらに、仲が深まってレオルドと結婚するに至るなんて・・・・・・
今ではレオルドは私の、夫・・・・・・
「顔がニヤけてますけど、何かいい事でもあったんですか?」
「な、なんでもにゃいわよっ!」
「噛んでますよ。」
「う、うるさいっ!さっさと出港の準備するわよっ!」
「「「了解」」」
今日ここに4つの艦隊が全て集結したのには、2つの理由がある。一つはお披露目、陸軍が戦勝を記念して軍事パレードを行った事を知った海軍が、我々も何かやりたいとレオルドに打診し、どうせならお披露目パーティーやるか、って話になった。
軍事パレードなはずなのに、テラトスタの街は今年で一番活気に溢れていた。街には屋台やステージが並び、お祭り騒ぎとなっていた。
そしてもう一つの目標は、これからある地点に向かおうというものだった。
レオルドが指揮する第一艦隊と私の第三艦隊の合計12隻という大艦隊で向かう予定だ。
ハーンブルク海軍の主力艦『レインシリーズ』3隻と新型艦の『マウントシリーズ』3隻ももちろん含まれている。
現在も、大量の軍事物資が積み込まれている。今回は別に侵略しに行くわけではないが、拠点を作りに行く予定なので、そのための人員と物資が積み込まれていた。
それからしばらくして、ついにその時がやって来た。
「イレーナ様、レオルド様より命令が届きました。」
「内容は?」
「3時間後、
「カレーか・・・・・・」
いつかレオルドが言っていたのを思い出す。
同じ景色が続く海上では、曜日の感覚を失いやすい。そこで、海軍では毎週金曜日にカレーを食べ、曜日の感覚を保つというものだ。
そのため、カレーが好きな海軍の軍人は多い。
「今日は金曜日だったわよね。」
「はっ!金曜日でございます。」
「じゃあ街に行って船員全員分のカレーを買ってきてちょうだい。」
「はっ!」
イレーナは再び視線を前に戻すと、どこまでも広がる海を眺めた。
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どうでもいい話
最近誤字減った気がする。
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