第20話 sideユリア
だいぶ迷ったのですが、いきなりクライマックスではなく、まずはユリアの掘り下げから入ります。
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『ハーンブルク家』
今や大陸西側で知らない者はいない大陸西側最強の陣営だ。
何故『陣営』なのかというと、ハーンブルク家には『サーマルディア王国』『ジア連邦共和国』『エラリア王国』『グニルタ公国』という4つの同盟国が存在するからだ。
総兵力は50万を超え、同時に複数の国を相手にしても負けない強さを持つ。
私は、ハーンブルク家の最大の強みは教育だと考えている。ハーンブルク領内の子供なら誰でも他国の最高峰と同等以上の教育をほぼ無料で受ける事ができる。
失業防止制度やハローワーク制度などによって人口が増え、学校教育によって優秀な愛国者が増える。
愛国者が増えれば、彼らはハーンブルク領の発展のために一生懸命に働く。
一度このループに入ってしまえば、他国が無理矢理介入しない限り、誰にも止められない。
私がハーンブルク家の存在を知ったのは、サラージア王国という大国がただの一貴族でしか無かったハーンブルク家に大敗したというニュースを聞いた時からだ。
「その噂は本当なのですか?」
「はい、ユリア様。間違いございません。サラージア王国軍8万は、ハーンブルク軍1万に大敗しました。」
「そんな事が・・・・・・」
当時まだ9歳であった私にも、この事実がどれほど大きな事か理解できた。
「ツァルタ、今すぐハーンブルク領に偵察に行って下さい。」
「え?ハーンブルク領へですか?」
「はい、今後、私たちが最も警戒すべき相手かもしれません。」
「わ、わかりました、お嬢様」
私はすぐに、私のお世話係であったツァルタをハーンブルク領へと向かわせた。
そして、私の嫌な予感はことごとく的中した。
まず、ハーンブルク家がバックについた革命軍が、サラージア王国で革命を成功させた。そしてそのままサラージア王国はジア連邦共和国となり、ハーンブルク家のほとんど属国のような存在となった。
次に、何を血迷ったのかギャルドラン王国とポラド王国が、ハーンブルク家と戦うように命令を出した。ここリトア王国も、ソーカテ教繋がりで参戦を強いられるだろう。
そうなれば、行き着く道は破滅だ。
私はすぐに回避するべく動いた。
しかし・・・・・・
「変更はできない、もう決めた事だ。」
「お父様・・・・・・」
「私は敵がどれほどの強さを持つか知らないが、ユリアが心配をするという事はそれほど差があるという事か・・・・・・」
お父様の呟きに、私は何と答えれば良いかわからなかった。
私の計算では、兵力も武器も統率力も練度も何もかもがハーンブルク軍に劣っていた。農民の寄せ集めのリトア王国軍に、勝ち目は無かった。
「では、行ってくる。家族の事を頼んだぞ。」
「はい、ご武運を・・・・・・」
「あぁ・・・・・・」
私がどれだけ説明しても、お父様は決して首を縦には振らなかった。詳しくは聞いていないが、おそらくポラド王国か、ギャルドラン王国から圧力がかかっていたのだろう。
そこからは、全て私の予想通りの展開となった。
最初の本格的な戦闘で、ポラド王国軍は甚大な被害を出し、さらにポラド王国領へと敗走した。
つまり、リトア王国を見捨てたのだ。
その後も、実際に見て確かめたわけではないが、予想通りリトア王国軍はハーンブルク軍にことごとく敗北し、ついに王都を包囲された。
全ての門を完全に包囲されたので、食料を外部から調達する方法を失い、もはや王都陥落は時間の問題であった。
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そして今、講和会議が行われているこの場でも、私は何も出来ずにいた。
何処の誰が虚偽報告を行ったのかは知らないが、ハーンブルク家が提示した講和条件は私たちが知っていた物とは大きくかけ離れた物であり、国の解体は避けられないものとなっていた。
さらに、お父様の良き友人と思っていたドウグスさんの暴走によって起こった毒殺未遂事件によって、リトア王国側は一気に不利な状況に陥っていた。
このままいけば、リトア王国の王族は良くて一生牢屋行き、最悪皆殺しになるだろう。
私は、このまま何も出来ずに終わるのだろうか。
また同じ失敗を繰り返すのだろうか。
いやだ。
もう同じ失敗はしたくない。
自分の道を自分で掴み取る。
気付いた時には、口を開いていた。
「レオルド様、発言をしてもよろしいでしょうか。」
その場にいた全員の視線が、私の下に集まる。
レオルド様は、少し驚いた顔をしつつ、優しい声で答えた。
「どうぞ、ユリアさん。」
「は、はい。では・・・・・・」
基本的に女、さらに子供である私に発言権はない。そのため、まさか一発で発言の許可をいただけるとは思えず、一瞬驚いて言葉が詰まる。
一度深呼吸をし、呼吸を整えた私は、レオルド様にはっきりと言った。
「講和の条件を大幅に変更して欲しいと考えております。」
「具体的には?」
「まず、リトア王国軍の解体とリトア王国民の非武装化はお約束致します。」
「それで、王族はどうするのだ?」
「はい、リトア王国の王族を象徴化した上で、ハーンブルク家がジア連邦共和国で試験的に行っていた民主主義化をリトア王国でも進めます。」
おそらく、ハーンブルク家は民主主義についてまだ実験段階なのだろう。しかし、私は新たな取り組みである民主主義に大きな有効性があると考えている。
つまり、リトア王国領を大きな実験場にするというわけだ。
「国防はどうするのだ?」
「ハーンブルク家に、リトア王国領南にある港とその周辺を、軍事拠点としてハーンブルク家に割譲します。」
「なるほど・・・・・・」
大陸西側のほぼ全てに影響力を持つハーンブルク家だが、唯一アルバス河への影響力は低い。
というのも、アルバス河はトリアス地区の中央を流れる河であるため、ハーンブルク家はその周辺に軍港を持っていない。
かつてハーンブルク家が、アルバス河で海戦を行った事を考えるとその重要性は高いはずだ。
さらに、ハーンブルク家の軍事拠点が、リトア王国内にあるというだけで、各国は容易にリトア王国を攻められなくなる。何もしなくても、ハーンブルク家とリトア王国には深い繋がりがあると信じ込ませる事ができるからだ。
「最後の質問だ。どうしてこの案を思いついた?」
「はい、ハーンブルク家が、リトア王国に求めているのは、土地や権力ではなく、労力と資源だと判断しました。そう考えた時に、リトア王国を守りつつ、ハーンブルク家が納得できる方法は無いかと考え・・・・・・」
「なるほど・・・・・・確かに納得できる案だな。」
「で、では・・・・・・」
「ならばこちら側からも1つ条件を出させてもらう。」
「何でしょうか・・・・・・」
「それは・・・・・・」
私はレオルド様の目を真剣に見つめる。すると、レオルド様は驚くべき事をおっしゃった。
「ユリア・フォン・リトア、貴方がハーンブルク家に嫁ぐ事だ。」
はい?
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どうでもいい話
アルファポリスでも連載を始めました。良ければ、応援お願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/179993120/311655504
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