第14話 一転

【今回の学習】


今作は恋愛ではなく内政メインです。


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結局、ハーンブルク家が提出した3つの要求は全て了承された。

ほぼ独立と同じような内容であったが、貴族達による反乱を恐れた王宮は、1つの条件をハーンブルク家に呑ませた上で合意した。

その1つというのは、王族と宰相の娘をそれぞれ1人ずつ、ハーンブルク家の次期当主であるレオルドに嫁がせる事だった。

元々仲が良かった事もあり、ハーンブルク家はこれを全面的に了承し、王宮とハーンブルク家の繋がりを強化した。

この事は、ハーンブルク家が発行する新聞に大きく掲載され、多くの領民からお祝いのメッセージが届いた。


婚姻の儀の日時は、話し合いの結果、1年後にハーンブルク領内で大々的に行う事が約束された。

儀式の日付を遅らせた理由として、ハーンブルク家が王宮に報告したある情報が原因となった。


そして、書面上は婚姻が成立し、シュヴェリーンへと帰還してからおよそ3ヶ月後、俺たちの下に、宰相であるギュスターさんが訪ねて来た。


「ではやはり、ギャルドラン王国がトリアス地域に侵攻しようとしているという情報は本当の事なのですね。」


エルフであるスピカが出した紅茶を普通に飲みながら、ギュスターさんは言った。

それに対して、ハーンブルク軍の参謀長を担っている俺が隣に座るお母様の代わりに答えた。


「はい、さらにそれに乗じて、今回の戦争であまり褒美をもらえなかった事に不満を持った一部の貴族から裏切り者が出る可能性があります。」


「王宮が所有する諜報部隊からも、ほぼ同じような情報を得ました。」



ギャルドラン王国とは、サーマルディア王国の東に位置する中規模国家である。

大陸三大宗教(トリアス教徒も未だに少数健在)の1つである『ソーカテ教』を信仰しており、国民の半分以上が信者だ。

また、トリアス教とは仲みて、ギャルドラン王国がトリアス地域への侵攻を企てているという情報がSHSからもたらされた。

このギャルドラン王国の厄介な所は、同じ宗教を信仰している国同士で連合を組んで同時侵攻を企てている事だ。

その標的にはもちろん連邦国も含まれておりハーンブルク家も巻き込まれる事は必至で、南北に大きな戦線を作る大戦争が勃発する可能性があった。


「外交的努力はしていますが、対立は避けられそうにありません。また、王国の貴族達の多くはリベンジができると、王宮内でも戦争賛成派の数が日に日に増しています。」


実は王国は、15年前にギャルドラン王国に敗北している。

前回も、トリアス教国との戦争で弱った隙を突かれ、王国南部の領地を割譲されており、王国貴族にとって、その事実は屈辱的であり、リベンジを望む声が多かった。

また、戦争に勝ったのに、戦争における出費が多すぎて逆に散財をした貴族達に不満が募っていた。


「敵の兵力はどれぐらいの規模と想定されますか?」


「はい、ギャルドラン王国単体で15万、連合軍を合わせると合計30万弱に上ると考えられます。さらにそれに加えて、王国内から裏切り者が出ると考えると・・・・・・」


「では問題は、どこで防衛戦をするかですね。」


「はい、そこも問題です。兵力が劣る我々は、地形的優勢を前提にしなければなりません。ですが、あの辺りは守れそうなところが少なく、まともに戦ったら必敗です。そこで、ハーンブルク家には北側の守りを任せたいと考えております。」


俺は、頭の中でそろばんを弾く。そして、ハーンブルク軍だけでも十分に可能という結論が出した。


「わかりました、ではギャルドラン王国を国防軍が担当し、それ以外の国々をハーンブルク家と連邦国が担当するということでよろしいですか?」


「それでお願いします。」


とりあえず俺たちは、戦線の整理を始めた。何しろ、防衛しなきゃいけないところがとてつもなく多い。

『アイ』の分析によって判明した予想進軍地点と日時を共有しておく。

実は俺たちは、かなり前から周辺各国との戦争について、作戦行動計画等を入念に準備しており、ハーンブルク軍の上層部には仮想敵国として戦争になった際の行動について共有してあった。


戦争は、準備段階から始まる。適切な兵器運用と戦力配置は戦争をする上で最も大切な事の1つだ。


「これが、最新の戦術なのですか?」


王国の政治のトップであるギュスターとて、戦争というものがどのようなものかある程度知っていた。

ただ、ハーンブルク軍の戦法はギュスターの知っている物とは大きく違っていた。

ハーンブルク軍の圧倒的な機動力と大胆な攻勢計画は、見たことも聞いたこともない話であった。


「はい、兵力の少ない我が軍では、戦時研究をあらゆる方向から行っております。また、領内に多数の軍事拠点を設置し、外敵が進軍してきた際の防衛についてもあらゆる可能性を想定しております。」


「これが、今や無敵と呼ばれるハーンブルク軍の秘密なのですね。」


ギュスターは、素直に関心していた。

以前、王宮内でも話題になった事があった。ハーンブルク家は、どのようにしてサラージア王国軍8万弱を撃退したのか。

もちろん誰も、思い浮かばなかった。

まぁ実際の戦闘には参加しない文官達に分かるわけがないが・・・・・・


「もちろん、前線で軍を指揮する指揮官の技量の高さもあると思いますが、我が軍は諜報部隊も中々に優秀です。」


「うちの国防軍とは違うという事ですか・・・・・・」


ギュスターさんは、どこか遠い目をしていた。

兵士全員が銃を持っている軍隊などおそらく聞いた事がないだろう。


「では戦争の話はこれぐらいにして、サッカーでも観に行きませんか?」


「いいですな、本日は確か、新たに作られた『SAK』と『YMS』の対戦でしたな。」


「はい、どちらもハーンブルクサッカー協会に寄付をして下さったので新たなプロチームとして認められました。どちらもまだまだ弱小ですが、今後とも長期に渡る契約を結んでほしいところですね。」


「それは楽しみですね。」


その後、レオルドとギュスターがスタジアムに顔を出すと、既に多くのサポーターが試合の開始を今か今かと待っていた。

やがて、選手達が入場し、センターサークルの中心にボールが置かれると、キックオフを告げる笛が鳴り響いた。


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どうでもいい話


明日の更新で気になる各国の情報が。

(星☆1900以上いけると嬉しいですm(_ _)m)



*怒られたら変えます。

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