第11話 side クレア2

最近の私の生活は、楽しい事や嬉しい事で溢れていた。


私は、レオルド様の下で『戦闘メイド』として仕えながら、SHSのメンバーとして訓練を受けながら、子供兵舎に通うという3つの顔を持っていた。

最初のうちはどれかが疎かになりがちであったが、2年が経過した今ではだいぶこの生活に慣れてきていた。


私も例に漏れず気づけばサッカーにハマっていた。レオルド様が指揮するRSWのファンとして、『テンペストカップ』での優勝を祈って応援していると、とんでもない情報がSHS内を騒がせた。

隣国であるサラージア王国と、最近対立の溝が深まってきていたトリアス教国が、連合を組んでここ、サーマルディア王国に攻めてこようしているというのだ。

サラージア王国軍8万弱、トリアス教国軍30万強の合計40万弱の大軍が侵攻の準備をしているとの事だ。対するサーマルディア王国は、国防軍20万と貴族の私兵15万ほどで王都や領地の警備を抜くと動員可能人数は30万ほどしかいない。

そして、サラージア王国というのはハーンブルク領の目と鼻の先、サラージア王国が侵攻してくるとしたらまず間違いなくここを通るだろう。

すぐさまSHS内で会議が行われた。もちろん、議長はレオルド様で私も末席に加わった。


「どうやら噂は本当らしい。早くても2ヶ月、遅くとも3ヶ月以内にサラージア王国はここに攻めてくるだろう。」


「敵の兵力はどれぐらいなのですか?」


「およそ8万とされております。」


「そんなにっ!」

「ハーンブルク軍の10倍か・・・・・・」

「王都から援軍を要請せねば・・・・・・」


SHSの中隊長クラスのほとんど慌てる中、ただ1人レオルド様だけは平然とした顔をしていた。

正直言って、私は8万の兵というのがどれほどのものな想像できなかった。

だが、サッカーのスタジアムの観客席数が2万席という事を思い出し、その4倍という事に気付いた。

それも農民や漁師ではない、正規軍が8万人だ。どれほどの脅威なのか想像がつかない。


すると先ほどから沈黙を貫いていたレオルド様に自然と注目が集まった。

SHSのリーダーであるシェリングさんがレオルド様に尋ねる。


「いかがいたしますか、レオルド様。」


「ハーンブルク軍8000、SHS1000、予備軍1000の合計1万として、8倍の兵力のサラージアにお前は勝てると思うか?シェリング」


「はっ!私の見立てでは、サラージア王国軍だけであれば何とかなると考えております。続々と開発される新兵器の威力を私も確認しておりますが、それは素晴らしいものでした。あれらが量産され、我らがその性能を存分に発揮する事が出来れば勝てると思います。」


シェリングさんのその言葉に、SHSメンバーの多くが納得した。確かに8万の兵も強力だが、SHSが所有する新兵器の性能も驚くほど強力なのだ。

確かに、勝算は十分あるように思える。

しかし、レオルド様の考えは私たちには遠く及ばないものであった。


「残念ながら不正解だ、シェリング。新兵器があれば100%勝てる。はっきり言って負ける気がしない。」


「それほどでございますか?」


「あぁ、これは冗談ではないぞ。考えてみろ、100人の新兵器を装備した兵士に剣を持った兵士が何人いれば敵うと思うか?」


レオルド様の問いかけに、その場に集まった者の多くが悩んだ。確かに剣を持った兵士だけでは何人いても足りない気がする。


「例え100人足らずでも、時と場合によっては1万の兵に勝てるかもしれません。」


「そういう事だ。それに、敵は新兵器の事を知らない。そうなると、さらに苦戦するはずだ。だから、適切に兵を使えば100戦100勝、負けるはずがない。」


「おっしゃる通りでございます。では新兵器の訓練を実施いたしますか?」


「あぁ、だがSHSだけでは意味がない。軍部と合同演習を行おう。SHSメンバーを集められるだけ集めてくれ。新兵器の使い方を教えよう。」


「「「了解」」」


そして、そこからの一気にSHS内は忙しくなった。今年からSHSに入隊したメンバーを含めたほぼ全員でレオルド様が考案したゲリラ戦の訓練が行われた。

ゲリラ戦の訓練ならば昔やった事があったが、その時とは装備も緊張感も全てが違った。

私はいつものメイド服のままであったが、他のメンバーは新たに支給されたSHSの戦闘服を着用し、実弾演習も含めた厳しい訓練の日々が続いた。

文句を言う者やサボる者は1人もおらず、全員が一生懸命に励んだ。

なんせ、自分や家族、周りの人々の命がかかっていたのだ。

レオルド様の指示は的確であった。小隊ごとバラバラに行動し、4人中2人が射撃を行い、残りの2人が周囲の監視や敵の発見を行った。もちろん4人全員が銃を装備しているが、基本小隊ごとに戦う。


今まで特殊ナイフしか使ってこなかったため、銃には初めて触った。最初のうちはもちろんまったく的に当たらなかった。

この銃の有効射程が20m〜150mに対して、レオルド様がSHSメンバーに掲げた目標は200m、私たちはもちろん苦戦した。

遠くが見えるようになるスコープと呼ばれる物を取り付け、練習を繰り返すことでなんとか当たるようになってきた。


レオルド様の熱心な指導の下、やっとの事でメンバーの全員が無風であれば200m先の目標を当てられるようになった直後、後10日ほどでサラージア王国軍およそ8万がハーンブルク領に侵入するという情報が入った。

そしてついにサラージア王国との戦争が始まったのだ。


______________________________


どうでもいい話


このライフル銃にはちゃんと名称がありますが、今のところは秘密です!

大した理由じゃないけど・・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る