第3話 成長
赤ちゃん生活はあっという間に過ぎて行き、俺はついに5歳となった。
5歳というのは、思っていたよりもずっとできる事が多い。身体は随分と大きくなり、自由に動かせるようになってきた。
知能面においても、『アイ』のおかげもあり学習能力が飛躍的に上昇している今の俺は、おそらく前世の俺を超えていた。
「97・・・98・・・99・・・100!終わった〜」
【お疲れ様です。筋肉量や肺活量の増加を確認しました。明日からは150回を目標に頑張りましょう。】
「はぁ、はぁ・・・無理、しんどい、やめてくれ・・・・・・」
【では、すぐに呼吸を整えて下さい。】
「へいへい。」
疲れを取る作業は結構簡単で、魔力を体内で流せばすぐに元気になる。実際には、疲れが取れるのではなく、元気が有り余った結果楽に動けるようになるという表現が正しいが、今はどちらでもよい。とにかく身体に負荷をかけて強くする事が大事だ。
午前中は、まるで日本の昭和のような腕立て100回やランニング、剣術の練習を毎日やらされ、午後は家庭教師や母親と勉強という日々が続いた。
現在の俺の一日は、
6:30起床
7:00朝食
7:30〜11:30鍛錬
12:30昼食
13:30〜15:30昼寝
16:00〜18:00勉強
19:00夕食
21:00睡眠
といった具合だ。まだ5歳なのにも関わらずアスリート並みのスケジュールだ。これは、『アイ』から提案された、現在の俺のレベルに対する最適解らしく、それに従っている。
ちなみにユリウスがいる時は、ユリウスの事優先だ。
そこは許してほしい。
この前は一緒に紙飛行機を作ったのだが、めっちゃ可愛かった。
次に両親の事だが、父親の方は色々と忙しいらしくたまにしか会えない。父親の職場は王都なのでそもそもたまにしか会えないのだ。
最初のうちは、父親が勉強を教えてくれたりもしたが、最近では俺の勉強についていけなくなったのか、王都に戻る事が増えた気がする。
だがこれは、別におかしい事じゃない。この世界の教育レベルは小学校の低学年が平均レベルだ。そもそも、学校が国内で一つしかなく、それも通学できるのは貴族と平民の一部だけらしい。
そして、計算などが全くできない父上は、領地経営を全て母親に丸投げらしい。母親は、俺の将来をとても気にしているらしく、小さい頃から足し算やら掛け算を教わった。たしかに俺も、よく字を間違えている父親を見ると頑張らなきゃだなと思う。
また、父親は貴族兼、国の軍人らしい。大陸の西の果てにある俺のいる国サーマルディア王国は、この世界で10番目ぐらいの国力を持つ中規模国だ。当然、国境を接して敵対国や友好国があるわけで、その防衛及び侵略を目的とした軍隊である国防軍の幹部クラスらしい。
しかもこれは、単に爵位の高い貴族だから、と言うわけではなく、武力によって認められたかららしい。
俺はそれを知った時、勉強が全くできない父親が幹部を務める軍隊とか終わってるな、と思わず思ってしまった。ついこの間も、簡単な掛け算を間違えて母上に怒られている姿を目撃した。まったく、これでよく軍人が務まるなと感心してしまう。
おそらく、俺の父親は脳筋担当で、作戦とか裏方とかはちゃんとまともな人が運営しているんだろうな、とこの時は期待していた。
この時は・・・・・・
そして最後に、俺はとりあえず順風満帆に長生きするという目標を立てた。転生してしまったのならまぁ仕方ない、生き残る手段を考えるまでである。
これからはこの目標に向かって頑張る事にした。
✳︎
翌日
「お父様、レオルドです。」
「入れ!」
「失礼します。」
呼び出された俺が部屋に入ると、真剣な顔つきの父親が俺を待っていた。執事長と母親がそれぞれ隣に控えており、何やら真剣そうな顔だ。
「お前に伝えなければならない事がある。」
「はい。」
「知っての通り、我が伯爵家の長男であるお前は将来この家を継ぎ、王国のために尽くす事になっている。もちろんこれは決定事項でお前に拒否権はない、だがどのような貴族になるかはお前の自由だ。」
「はい。」
父親の言おうとしている事がわからない。確かにこれは大切な事だとは思うが、今改めて言う必要はないと思う。
何があったんだ?
俺が疑問に思うと、すぐに答えが返ってきた。
「というわけで、お前の貴族として最初の任務だ。『領民のためになる事を何でもいいから一つせよ。』方法は問わない、自分で考えて自由に動いてくれ。」
「へ?」
おもわず、目が点である。
政策を何か1つしろという事か?
おいおい俺はまだ5歳だぞ?
「困ったらリヒトを頼れ、あいつは優秀な執事だ。お前の疑問にきっと答えてくれるはずだ。」
「身体に気をつけて下さいね、レオルド」
「と、いうわけだ。期間は半年以内だ。頑張れよ。」
「は、はい。」
そして俺は、訳も分からないまま、部屋を後にした。出されたこのお題は、俺の人生を変える事になる。
✳︎
レオルドが退室した直後。
「・・・・・・本当にこれでよろしかったのですか?」
「あぁ、通常では10歳の誕生日の際に貴族というものがどういうものなのかを教えるために代々我が家で出されてきた訓練だが、レオルドならなんとかなるだろう。」
「レオルドはまだ5歳なのですよ?」
「それは知っている、だがあいつの才能がどれほどのものなのか見てみたいというのが、本音だ。まだ5歳なのに四則演算を完璧にこなすレオルドならきっと、俺たちが想像もしない事をやってくれるさ。」
「そうでしょうか・・・・・・ところで1つ気になったのですが、あなたは昔何をやったのですか?」
「俺は周囲の森で狩りをして、獲った肉を領民に配るってのをやったな。何しろただで美味い肉が食えるという事で大好評だったぞ。」
「あなたらしいですね。」
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どうでもいい話
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