第2話 誕生

 俺、ななしの権兵衛(仮)は20歳の時、なんらかの原因によって死んでしまい別の世界へと転生した。

 これだけ聴くと全く情報が見えて来ないが要するに、前世の記憶を持ったまま別の世界に転生してしまったようである。


 せっかく転生したならと、俺は情報集めに奔走する事にした。この世界の事を何も知らない状態では何もできないと思ったからだ。

 とはいえ、まだ0歳の俺にできる事は特に無く、周りの景色を見る程度である。美人な母さんに抱っこされて周りを見回したりしたが、情報はあまり多くない。ただありがたい事に、彼らの言語は俺のよく知る日本語と同じであった。しかし文字に関しては、見た事も無い文字であったためなんて書いてあるのかは分からず、解読できなかった。一体どうなっているのだろうか。

 どうせなら文字も統一して欲しかった。

 まず1番最初にわかった事は、この時代の技術力の低いことだ。電気やガスといった現代日本であれば誰もが当たり前のように使っていた物たちが全くない。

 部屋の明かりも火を灯すタイプで、どんだけ前のやつだよって思わず突っ込んだ。多分通じていないと思うけど。


 そして、同時に俺は絶望を味わった。

 スマホがないだと?

 嘘だろ・・・・・・

 スマホが無い生活とか、耐えられないぞ?俺


 前世でスマホをよく使っていた俺は、生後1ヶ月足らずで早くもスマホ中毒になりかけいた。禁断症状が出始め、意味もなく身体を動かした。


 だが、それとは別に俺の興味を引くものを発見した。


「うぅぅ(これが魔力か・・・・・・)」


 この世界には、魔法という物理法則を超越した物質があった。イメージとしては体内に漂う浮遊状物質といった感じだ。

 初めてその存在を知った時は、俺は飛び上がって喜んだ。

 おおー魔法があるのか!なら魔法使いを目指そっかな!と、我ながら単純なものである。


 早速、魔法の研究を始めた。

 この赤ちゃん生活は時間が有り余るので正直言って暇すぎるのだ。


【魔力を感知しました。これより、解析を行います。】


「うぅぅ(んじゃ、後よろしく〜)」


【了解しました。】


 どうせ異世界に来たなら、やっぱり魔法を使ってみたい。だが、元現代の地球人である俺にそんなモノが使えるはずもなく、魔法の解析はもう1人の俺に任せる事にした。

 いや、一応自分でも魔法使えないかな〜って試してみたのよ?でもダメだった。魔力を感じる事が出来ても、それを事象へと変換する事が出来ない。

 赤ちゃん語で「ステータスオープン」って言って何も起こらなかった時の事を思い出すと死にたくなる。

 とはいえ、魔法についての情報は皆無なので今はその解析が終わるまでしばらく寝ようと思う。


【解析が完了しました。】


 はえーよ

「うぅぅ(それで?どうやるの?)」


【体内の魔法式に魔力を流す事によって魔法が発動します。まずは、体内の魔法式を実感して下さい。】


「うぅぅ(は?魔法式?何だよそれ!)」


【魔力をなんらかの事象へと変換させる際に・・・】


 もう1人の俺の説明を聞きながら、俺は何を言っているのかわからなくなった。



 ✳︎



「おーい!レオルド!」

「待って〜お姉ちゃん!」


 っとその時、俺が普段放置されている部屋の扉が開き、2人の幼女が入って来た。


「うぅぅ・・・(来んなよ筋肉だるま!成長の邪魔だ!)」


 2人とも俺の姉で、1人は親父譲りの黒髪黒目の5歳年上の長女のスワンナ、もう1人も親父譲りの黒髪黒目に4歳年上の次女ファリアで、2人ともこうして時々俺の所へ侵入してくる。

 そして、長女のスワンナの方はまだ6歳なのにも関わらず見た目が完全に脳筋である。ちなみに、もう1人の姉は同じように育てられたはずなのに、次女のファリアの方はまともな人だ。


「おー、見てみろファリア俺たちを見て喜んでいるぞ。」


「うぅぅ(んなわけあるかー!!)」


 長女なはずなのに一人称が『俺』である。

 一人称『俺』の美少女なら一定の人気が出るかもしれないが、こんな筋肉女に人気は出ないと断言しよう。


 また、赤ちゃんとは不便である。伝えたい事が伝わらない、色々な人にペタペタ触られる、すぐに眠くなると、いい事はひとつもない。

 強いて言うならば、こうしてごろごろしていても誰も何も言わない事だ。ニート最高!


「そうかな〜」


 どうやら次女のファリアの方には俺の気持ちをわかってくれたらしく、姉を止めようと努力をしていた。努力は・・・・・・


 それと、俺が1歳の時、新たに弟が誕生した。『ユリウス』と名付けられたこの天使は、本当に天使であった。

 もう天使すぎて天使であった。

 1歳差のユリウスは、最近言葉を話すようになった。ちなみに1番最初に覚えた言葉は、『ママ』でも『パパ』でもはなく『レオウド』だった。我の勝利ぞ。正直勝てるとは思わなかったからめっちゃ嬉しい。

 もう可愛くて可愛くて仕方がない。

 俺は、魔法の特訓と並行してユリウスを愛でる事にした。



 ✳︎



 この世界に誕生してから3年の月日が経過し、3歳となった俺は、勉強と戦闘に明け暮れていた。貴族である父親は、当然のように俺を次期当主にするべく張り切っていたため、地獄のような日々を送った。

 唯一の救いは優しくて美しいお母様と可愛い天使と優しい方の姉だけだ。

 筋肉だるまの方の姉はって?そんな奴ら俺は知らんぞ。


 だが、数年前まで社会人であった俺を舐めてもらっては困る。四則演算など朝飯前である、文字の方も7、8日に1回その日に起きた事を日誌に書く習慣ができると、どんどん覚えていき最近はスラスラと書けるようになってきた。

 日々の訓練があるからか、運動の方も身体が思ったより動ける。そしてさらに、体内の魔力を動かす方法を覚えた俺は、魔力を全身に行き渡らせる事で身体が軽くなり、普段の数倍の力が発揮できるようになった事に気付いた。

 そこからは、どんどんと稼動可能領域が増えてきた。


 そして、もう1つ俺にはとっておきがあった。


【マスター、今の動きでは身体に負荷がかかり過ぎています。改善を提案します。】


 彼女(声が女声なので)のおかげで俺の成長速度は凄まじい物になっていた。体内の管理はもちろん、安定的な睡眠の供給など、身体をうまくコントロールしてくれている。

 そして、彼女最大の特徴はなんといっても


「じゃあさ、いつものやってよ」


【了解しました。】


 そう彼女が告げると、俺の身体が勝手に動きだした。否、彼女に操作されて動いたのだ。

 広過ぎるこの庭を走り始める。

 それは、この身体で出せる理論上最速の動きだった。どこまでも機械的な彼女は、演算能力が恐ろしく高い、そして脳で描いた動き方を完璧にトレースできるのだ。

 もしかしたらこの3歳の身体でも、動きの遅い一般人程度であれば喧嘩で勝てるかもしれない。それほどの動きであった。

 彼女は、高性能な人工知能といった感じだった。そこで俺は、彼女を前世の知識にあるAIからとって『アイ』と呼ぶようにした。


 ちなみに『アイ』って名前を付けた時、照れ臭そうにしていた事は、本人に秘密にするように言われているから、バラさないでおこう。


 ____________________


 どうでもいい話


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