打ち上げ花火
柚
打ち上げ花火
3月12日、僕の町では花火大会があるらしい。
君は気になる人ともう会場にいるのだろうか。
僕が君と出会ったのはテスト終わりに立ち寄ったラーメン屋。
食券を買う君の横顔に僕はすぐに一目惚れをした。
我ながら変な恋の始まりだなと思う。
しかし、恋の始まりなどなんでもよかった。
僕は片っ端から友達にメールを送り、君を探してもらった。
君のアカウントを見つけた時はすごく嬉しかったのを覚えている。
君とは1ヶ月色んな話をした。
趣味の話。進学の話。そして元カレの話。
君は元カレに未練はないと言った。しかし、僕はその文章には画面越しに伝わるくらいの未練の香りが漂っていた。
僕は君の支えになりたいと思った。
僕のそんな願いも君の何気ない一言で叶わないものになってしまった。
「気になる人ができた」
僕はその言葉を聞いた時にすぐに嫌いになればよかった。
君が気になる人の話をすればするほど君の文章から未練の匂いは薄れ、甘酸っぱい匂いが僕の心をむず痒くした。
午後8時、家の外からドーンと大きな音がする。
君は気になる人ともう花火を見ているのだろうか。
ドーン。ドーン。と姿が見えない花火の音だけが空っぽの胸を打つ。
どうかこのもどかしさを君への想いと一緒に花火で打ち上げてほしい。
ドーンと大きく音を立てて打ちあがり、きらびやかな色を輝かせながらすっとちりちりに無くなって消える打ち上げ花火のように。
打ち上げ花火 柚 @CITRON0724
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