第24話
一言で言うと、気味が悪い。
町に入ったバスティンとモユに向けられたのは、人々のキツい視線。舌打ちだけにとどまらず、罵声も投げかけられている。そんな敵意が向けられる中、バスティンは悠々と歩き、その後ろをモユが怯えながらついていっている。モユは何かバスティンに話しかけているように見えるが、バスティンは答えるどころか、振り向く様子すらない。
「これはどういうことですか?」
「わからない」
町の様子を見にきたモユが予想外のことに怯えているのはわかる、そのことをバスティンに尋ねているのも、答えがなくとも一人残される恐怖に抗えずついていっているのもわかる。正常な反応だ。しかし、バスティンのあの堂々とした態度、とても嘘がバレた人間とは思えない。
知る必要もないかと考えてはこなかったが、バスティン自体に疑問はいくらでもある。そもそも何が目的で侯爵家に仇なす行為をしているのか、全てが謎だ。
「レイン様、いかがいたしますか? もう十分現状を知ったでしょう、問い詰めに行きますか?」
「いや、もうちょっと様子を見よう」
バスティンの行動が読めない。町の現状を見せた後、侯爵様方に気苦労をおかけしないよう黙っていたのです、とでも言うかと思った。だが、モユの顔色が悪いままなので、そんな気はなさそう。
弁解もしないし、隠す気もない。一体、何がしたいんだ?
注意深く窺っていると、バスティンとモユは通りから横道へ入っていった。俺たちも遅れてついていく。
雰囲気が悪い。
出た横道はとても細く、建物に挟まれて昼なのに暗い。どこか埃っぽい感じもしてむせ返りそうになる。
こんなところに、何の用事があるんだよ。
とても主人の娘を連れてくるような場所ではない。そう考えると嫌な予感がしてきた。
「もう問い詰めよう」
そう言って、足を早める。
街路の角を曲がると、二人の姿が消えていた。
「どこに行ったのでしょうか?」
ロレンツォがそう言った時、側の建物から悲鳴が聞こえた。
「レイン様!」
「ああ!」
慌てて扉を開けると、そこには見るからにガラの悪い男が3人と、モユを捕らえ口に手をあてているバスティンがいた。
「な、何故ここに!?」
バスティンの問いに問いをぶつける。
「これはどういうことですか?」
柄の悪い男たちが鋭い視線を向けてにじり寄ってくる。が、バスティンが、よせ、と制した。
「ロレンツォ将軍がいる! まともにあたるな! 返り討ちにあうぞ!」
そう言ったバスティンの手元がきらりと光る。見れば、モユの首元に小さなナイフがつきつけられている。
「んんーっ!」
「黙れ!!」
脅迫されたモユは青ざめて瞳に涙を浮かべた。
「ロレンツォ、レイン、動くな! 少しでも動けば、このガキを殺す!」
そう脅されてるわけだけど、その脅し、あんま効果ないんだよな。ロレンツォはもとより、俺としても将来殺しにくる子が消えても問題はない。
けどまあ、流石にそれは、な。それにここでモユが殺されたら、事実を話したところで、侯爵に信用されないだろうし。
とりあえず、話だけは聞くか。
「バスティンさん、貴方はどうしてこのようなことを?」
尋ねると、バスティンはゆっくりと語り出した。
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