男友達系のヒロインを寝取り、メス落ちさせる悪役に転生〜物語に関わらないようにしてるのに、何故かメスの目で襲ってきそうなんだけど

ひつじ

1章

第1話

「ねぇ、ちゅーしよ〜」


「ふん、貴様のような下賤な女とそんなことするか」


「うっさいなぁ、もう。動けないようにしよ」


「くっ、離せ! 抱きつくな!」


「ちゅ〜ごっこしよ、ちゅ〜」


 襲いくる舌の攻撃を口内で何とかいなし、押し返した時だった。


「ふえぇ?」


 突如、ぺたん、と女の子座りした義妹を見る。その瞬間、酷い頭痛に襲われる。


 恍惚とした表情、このメス顔、見覚えが……あるっ!!


 この子は、赤髪の姫騎士、クウェスト国代表ローレル・クウェスト。ということは、その義兄の俺は、レイン・クウェスト……。


 俺は頭を抱えてしゃがみこむ。


 まずい、まずい、まずい、まずい、まずい!!


 レイン・クウェストそれは、オトダチに出てくる悪役の名前だ。


 男ノリ幼馴染み、王子様系女子、姫騎士、からかい系僕っこ、いわゆる男友達系ヒロインズと織りなす学園ファンタジーゲーム『姫様は男友達で乙女』、通称オトダチ。4つの小国からなる連邦の、次代の元首を決める選挙に勝つため、学園に通う元首候補のヒロインたちを支えるゲームだ。


 そしてそのゲームに登場するレイン・クウェストは、ヒロインを選挙に勝たせようと動く主人公を、たびたび邪魔する男である。功績を残そうとする主人公達の邪魔、罠にかけるだけでは飽き足らず、badendではヒロインを寝取りメス落ちさせるのだ。


 そんなレインには、当然の報いで、どのヒロインのルートでも破滅が待ち受けている。レインは悪事が露呈し、くびちょんぱだったり、魔物の生き餌だったり、薬漬けだったり、と悲惨な最後を迎えるのだ。


 血の気が引いていく。


 そ、そんな筈ない、認めたくない!!


 涙で霞む視界の中、ゲームじゃないと否定する要素を探す。天蓋付きのベッドに、王冠を形どった赤いソファーに、芸術的に彫られた木の机、そしてその横に立ち鏡を見つける。


 鏡に映っているのは、輝くような金髪、透けるような白い肌、色気漂う線の細い美少年。


 わぁ、イケメン、かっこいいなぁ〜、オトダチに出てくる、レイン・クウェストみたい……ぐすっ。


 い、いや、俺がレイン・クウェストと確定したとはいえ、泣いていても仕方ない。


 そうだ、ヒロインの邪魔をせず、物語に関わらないようにすれば、俺は生き残れるんじゃないか?


 ハハハ。何を焦ってたんだ、ただそれだけの話じゃないかー。


 本当に?


 物語の強制力とかで、体が勝手に動くとか、濡れ衣をきせられるとかない?


 ……う、うん、恩! ヒロインズに恩を売っておこう! 情状酌量の余地があるように、恩だけは売っておこう!


 今は5歳。物語が始まる10年前。時間はまだまだある。


 よし、そうと決まれば、さしあたって、やらねばならぬことがある。


 俺は、ぽーっと蕩けた顔の義妹に頭を下げた。


「あの、下賤な女とか言ってごめんなさい。反省してるので、どうか許してください」



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