第2話連合発足
ゲートをくぐりぬけた先、こちらを向いて待っているメグが居た。
くぐって入ってきた鏡のあった台と階段、それと全く同じ物がここ(出口)にもある。
ただしさっきまで居た荒野とは似ても似つかない。
辺り一面緑が生い茂り、整備された道は巨大な城まで繋がっている。
広大な陸地とは違い、ここはかなりの高度のある地域らしく、そこまで陸地が広がっていない。
代わりにふわふわしそうな雲の塊が確認できる。
「このゲート、もっと大きければいいんですけどね~」
現状大人数で移動するときは瞬間移動術式によるテレポートしかない。
ファストトラベルはあくまで個人か1パーティ用だ。
「待っててくれたんだ?ありがとね」
私は彼女に微笑みながら感謝を告げると、はいっ!と声が聞こえたので歩き出す。
ここはこの世界で私の一番信頼がおけるギルドマスターが籍を置いている場所だ。
私とメグはここのギルドメンバーという訳ではない。
ただ最近はさっきの件もあって色々と物騒なので、各地でギルド同士が同盟を組んでいる。
まあ私のとこはギルドというよりチームで、所属しているのは私とメグ含めても6人だ。各員の紹介はまた今度しよう。
少し歩くと石造りの城門が見えてくる。
「お疲れ様ですっ!」
城門の門番がこちらに気づくと気を付けのポーズで姿勢を正し声をかけてくる。
この鉄の甲冑で身を固めた青年は、プレイヤー名をCharger、形だけの門番をしているが結構すごい奴。
周りからは親しみを込めて突進くんって呼ばれている。
「ゲームシステム的に門番なんて要らないのに今日も突進くんは精が出るね~」
メグは手を振って笑顔で声に答える。
「あなたのとこの天使さん、今いる?」
私は軽く手で挨拶をして突進くんに訊ねる。
天使さんとはこの城門を抜けて奥に建つ城を拠点にしているギルド、守護する者(ガーディアンズ)のギルドマスターのことだ。
常に頭上に天使の輪っかのようなものが付いているのでそう呼ばれている。
本人曰くスキルの一部なので外しようがないらしい。
「はい!先ほどお二人のオンラインステータスが戦闘中に入った事を確認し、ここへ赴くだろうと守護者の間で待っておられます!」
そう言うと城門の奥へと案内してくれる。
城門の奥に城があるのだが、城の所有者とその配下はテレポートゲートで簡単に城の内部へ入ることが出来る。
「ところで!例の連中と戦闘を!?」
突進くんが目を輝かせながらウッキウキできいてくる。
突進くんは戦闘狂……とまでは言わないが少なくとも戦闘厨だ。
いや、正確には突進狂だ。
突進くんという愛称の通り、とりあえず敵に突っ込む戦闘スタイルで槍を装備しているが周りからすれば突進くんこそが槍そのものである。
「戦いはしたけどほんの数撃だけよ」
「え!!いいなあ~~!僕も天使様に許されていたら外歩きまくるんだけどなあ~」
あー。私たちにとっての数撃と、突進くんにとっての数撃は意味合いがちょっと違うんだったっけ……。
君は興味本位で突っ込んでいくからねぇ……
「天使さんの槍として突っ込む日まで死なれちゃ困るんじゃない?」
メグが諭す。
「そういうことならまぁ……っと、ここっすね!」
城門の内側、見たところただの木の扉だがこれがギルドメンバーにしか開くことのできない扉(テレポートゲート)だ。
突進くんが扉のドアノブを右手で握ると扉全体が明るい緑色に光る。
光った扉を引くと中には守護者の間で待つ天使さんの輪郭が見える。
「出来れば僕も報告を聞きたかったんですけど、残念ながら立ち入りが禁止されてますので……」
「それではいってらっしゃいっす!」
「ありがとう」
「ありがとね~!」
私とメグは扉の奥へと入っていく。
扉をくぐったその瞬間から、さっきまで居た城門付近の、外の感覚が一切なくなる。
「ごきげんよう、お久しぶりでしょうか?会いたかったわ」
そう私達に話しかけてくるのはこの地を拠点にしているギルドのマスター、プレイヤー名:Mari、通称天使さんだ。
会議室のような20人ほどが座れる円卓机の入り口から見て最奥に座っている天使さんは、今日も頭の上に白い天使の輪っかが付いている。
「今日も頭のわっかが綺麗に輝いていますね」
「もうっ、スキルの一部なのだから仕方がないでしょう?」
若干頬が赤くなっている気もしなくもない。
「は、ははは初め、まして!」
天使さんと面識があまりないうちのくノ一は緊張からか噛み噛みで挨拶をする。
そもそも天使さんと直接の面識があるというだけで、この世界ではそこそこ有名なほう。
「お初にお目にかかります、Meguさんですね?Kaedeさんの相棒だとお聞きしています」
天使さんはメグにニコッと微笑みかけながら話す。
「えっ、まぁメグと一緒に行動することは--」
「はいっ、相棒です!!!」
私が文を終わる前にメグが割り込んできた。
嬉しそうだしまあいいか。
私とメグが席を取り、私は始める。
「今回の接敵の件です」
「これまでも襲われたという報告はありましたが、死亡者が居なかったのはおそらく敵はHPではなくMPを削る攻撃を繰り出してきたからだと推測されます」
天使さんはじっと聞いている。
「攻撃を受け流すことも出来ず、回避しながら戦うというのは難易度のかなり上がる話だと思います」
それを聞いた天使さんは口を開く。
「ではやはり、私の方から他の大まかな勢力に声をかけ、私達の世界(ゲーム)連合を作る方向にいたしましょう」
「あなたにも会議に参列して頂きたいのですがどうでしょうか?」
「すみません、一度私のほうでも全員集めてこれからを話し合いたいので一度失礼させてもらいます」
「謝る必要なんてありません」
「あなた達6人が揃うことなんて早々ないでしょう。また何時でもこちらへいらしてくださいね」
「では失礼します」
そう天使さんに伝えると席を立つ。
それに続いてメグも席を立った。
帰りはこの守護者の間の扉に手をかざす。
「転移、冒険者の洞穴(トラベラーズハイドアウト)へ」
そのまま扉を開け中へ消えていく。
メグは天使さんに一礼してから扉へと歩んでいく。
ゲームに幽閉された挙句に別ゲーの敵に襲われたんだが @mizuki22minami
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