第7話「反逆学園ってどんな映画」
曲の動画を投稿して数日経ったが、案の定A面B面の曲どちらも再生回数は伸びない。A面「踊り続けて」の方は原曲を歌ってたステファニー・マイルス経由で知った海外の音楽好きが聴いたからのか、B面「クワイエット・ララバイ」よりもやや再生数が多かったが、それでも少ない方だ。
ネットでは一通り調べ尽くした感じだし、次はどうするか。そうだ、書籍や雑誌を漁れば何かしらの情報が掴めるかもしれない。僕は早速、大学の授業が終わると近くの図書館に寄ってみることにした。ここには専門的=つまりマニアックな趣味向けの本も数多く揃えているからだ。案内図を参考に、音楽、邦楽、歌謡曲、と少しずつ細かい分類に分けられた棚の中から、特に80年代の歌謡曲、もしくはアイドルについて書かれた本を探す。幾つかそれについて書かれた本を見つけるが、どれも薄かったり、特定の著名なアイドルに特化したものが多く、なかなかこれといった本にはめぐり逢えず。
すると、棚の隅に「昭和歌謡名曲ガイド 80年代アイドル編」という、やや分厚い本が目に入った。表紙には様々なアイドルのレコードジャケットの写真が所狭しと並べられ、これだけで良い予感がする。早速手に取って読んでみると、1年別にデビューしたアイドルのシングル・アルバムがちゃんと紹介されており、ある程度の長さの評論まで載っている。滝沢百合のデビューは1986年だったから、その年のページまでページをめくる。あった!ちゃんとカラーの写真でジャケットも掲載されている。評論は以下の通り。
<クールビューティーな魅力を持つ滝沢百合はトシちゃんやキョンキョンの如くカバー曲でデビュー。原曲は当時全米でも大ヒットしたステファニー・マイルスのユーロビート「Keep On Dancin'」。彼女にとってユーロビートはぎこちなさを感じたのか、少々ラフなもののよく通る声質による歌唱はデビュー曲なら及第点で、その後の活躍が期待されたがこの1枚のみでフェードアウトしたのが残念。なお、彼女は飯村優輝の初出演映画「反逆学園-傷だらけの放課後-」にも出演しているゾ。>
最後のカタカナの「ゾ」に時代を感じたし、B面に言及されていないのが少し残念だったが、また新しい情報が手に入った。飯村優輝は確か吉川晃司(あえてコージと表現したい)とか、坂上忍や長島ナオト的な、アイドル的人気も高かったロック寄りの歌手・俳優の人だ。映画のタイトルこそ聞いたことなかったけど、これは観てみたい。DVDになっているんだろうか?そんな事を考えていると、閉館の合図である「蛍の光」の侘しい旋律が耳に届いた。
アパートに戻って、早速「反逆学園-傷だらけの放課後-」を検索してみる。何十件かのページが引っ掛かり、今作の出演者リストを参照しても滝沢百合の名前は見つからず。エキストラとか、軽い扱いの役だったのだろうか。いや、たぶん表記ミスだ。色んな想像が働く。しかし今となってはマイナーな映画なのか、あらすじやストーリー、レビューさえ見当たらない。DVD化もされておらず、ビデオやレーザーディスクでしか観れないようだ。それらのプレイヤーを持っていない自分にとっては、ハードルが高い。ママゾンのマーケットプレイスで売ってるビデオの値段も無駄に高い。何で1万5千円もするんだよ。
すると、神田の映画館のページが目に飛び込んできた。読めば、今週土曜日から懐かしのアイドル映画特集として「反逆学園」もリバイバル上映されるそうだ。僕の為に上映されるとしか思えない程の、見事なタイミング。そうだ、神田なら当時の雑誌も数多く取り揃えている店があるはずだ。早速土曜日、神田へ行ってみよう。画像検索でヒットした、解像度の低い粗い画像の当時のポスターを眺めながらそう決心した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます