第16話 ……どうして早苗のように可愛くできないのかな

「せっかくだからボクたちも二人で勉強合宿でもしようか」

「えっ……あっ……うん」

「今年はカップルだから二人っきりでお泊りとか一緒にお風呂に入ったりできるね。楽しみだな」

「ば、馬鹿。まだ気が早いわよ」

「ごめんごめん。ミチルは照れ屋さんで可愛い」


 ミチルたちもカップルになったので二人だけの勉強合宿を考えているようだ。

 去年は二人ともただの友達だったので、早苗の部屋で勉強をして男の娘は早苗の家に泊まり、女の子は茜の家に泊まって勉強会を行った。


 お互いカップルになったので、お互いが良ければ一緒にお泊りしたり一緒にお風呂に入ったりといろいろなことができる。


 渚はミチルとの勉強会を想像しウキウキしているが、ミチルはまだ恥ずかしいのか照れている。


 ミチルが渚を罵倒するものの、それが照れ隠しということが分かっている渚はニコニコしながら受け流している。


「照れてるミチルちゃんも可愛いよね」

「うん、可愛いね。あれをツンデレと言うんだっけ?」

「ツンデレ言うなー。……別にツンツンしてないから」


 照れてるミチルを見て、早苗と茜が可愛がっていると恥ずかしいのかミチルが声を荒げる。


「ボクはツンツンしてるミチルも可愛いよ」

「……馬鹿」


 そこに渚の援護射撃も入り、あえなくミチルは撃墜する。


「あれは完全に彼女の尻に敷かれてますね、奥さん」

「そうですね奥さん。あれは完全に尻に敷かれてますね」

「別に尻に敷かれてないからっ」


 早苗と茜でミチルをからかうコントをすると、ミチルは必死な形相でそれを否定する。


「ボクはどちらでも良いよ。ミチルが尻に敷かれたかったらそれでも良いし、逆にボクを尻に敷きたいならそれでも良いし」


 渚は尻に敷くのも敷かれるのもどちらでも良いらしく、ただミチルと一緒にいるだけで幸せそうだった。


 付き合ってから二人は本当に幸せそうだった。

 でもまだミチルの方は、付き合い始めたばかりということもあり、渚に遠慮している感じで気を使っているように見えた。


「勉強合宿のことは六月になったらまた考えよう。とりあえずそろそろホームルームが始まるから教室に向かおうか」

「えっ、もうそんな時間なんだね。学校にいるのに遅刻なんて恥ずかしいからね」


 廊下で駄弁っているうちにホームルームが始まる時間になっており、茜の一言で四人は教室へと向かった。


 さすがに学校の中にいるのに、それで遅刻は恥ずかしい。

 早苗は茜の左腕に抱き着きながら廊下を歩く。


「……どうして早苗のように可愛くできないのかな」


 誰の目も気にせずイチャイチャしている早苗を見て、ミチルは暗いため息をこぼした。

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