第2話 二人の幼馴染

 武田早苗。今年高校二年生の男の娘だ。


 男の娘と言っても創作で出てくる男の娘と同じようで違う生き物である。

 この世界には男子である男の娘と女子である女の子の二種類しかいない。

 だから、顔だけで見ると男の娘なのか女の子なのか分からない。

 男の娘の特徴は胸がないことと、男性器がついており、女性は胸が発達し女性器が付いている。

 だから体つきは男の娘の方がゴツゴツしており、女の子の方が丸みを帯びているが、パッと見はあまり大差はない。


 閑話休題。


 身長は百六十半ば。

 茶髪のロングヘアで、栗色のように鮮やかな色をしていて後頭部で編み込みをしている。

 柔和な性格で甘えっこである。


 一方、幼馴染の神崎茜は同い年に女の子である。

 同い年と言っても、茜は四月生まれで早苗は三月生まれなので約一年も年が離れている。

 そのせいで早苗は茜に甘えることが多い。

 身長は早苗と同じ百六十半ば。

 黒髪のスーパーロングで腰近くまで長い。

 髪はしっかりとケアがされているので枝毛一本もない。

 他の人からはクールな印象を持たれやすいが、意外にも甘い一面もある。

 胸は平均的なCカップである。


 制服は赤を基調としたブレザーで、黒のネクタイに、男の娘は赤と黒のチェックのスラックス、女の子は男の娘と同じ色のスカートである。


 二人は家が隣同士で親同士も仲が良いため、早苗と茜も姉弟のように仲が良く育った。


 それは高校生になった今も変わらない。


 学校へ行く時も基本、早苗の方から手を握り茜もヤレヤレと表情を浮かべながらも早苗を甘やかす。


 学校に着き茜と教室で駄弁っていると友達のミチルたちと合流する。


「おはようミチルちゃん、渚ちゃん」

「おはようミチル、渚」

「おはよー早苗、茜」

「おはよう二人とも」

「それで二人には大事な話があるんだけど、茶化さないで聞いてほしいの」

「うんうん、大丈夫。茶化さないから。それで大事な話ってなに?」


 あいさつを交わし終えるとミチルが物凄く言いづらそうに前振りをする。


 早苗もすぐに大事な話だと理解をし、真剣な表情でミチルの話を聞く。


 友達だから、なにか重要なことを言おうとしていることだけはヒシヒシと伝わってくる。


 ここで茶化すほど早苗も茜も子供ではない。


「やっぱ無理。ごめん緊張しすぎて言葉が出ないから渚から言って」

「分かったよミチル。ミチルが凄く緊張してるからボクの口から伝えるよ。あのねボクたち、付き合うことになったんだ。大事な話っていうのはそのご報告」

「えぇーおめでとー。とってもお似合いだから絶対上手くいくよ。もちろん応援するよー」

「あたしも二人はお似合いだから良いと思う。おめでとう」


 緊張で言葉は出てこなかったミチルは渚に助けを求める。

 渚は紳士のように快く引き継ぎ、ミチルが緊張のあまり言えなかった大事なことを二人に伝える。


 友達の早苗からもミチルと渚はお似合いで、いつ付き合ってもおかしくないと茜と話していた。


 そんな二人がようやく結ばれたのだ。

 それが本当に嬉しくて、早苗も茜も心から二人を祝福する。


「二人は友達だから、直接すぐに伝えたかった」


 ミチルは渚にまだ恥ずかしいのか、渚の背中に隠れる。


「ボクとミチルは付き合うけど、これまで通り二人とは仲良くしていきたいと思っている」

「そんなの当たり前だよ。渚ちゃんとミチルちゃんとは大人になっても仲良しでいたいもん」

「あたしも。別に二人が付き合ったからってあたしたちと友達じゃなくなるわけじゃないじゃん。全然気にしなくて良いよ」


 渚もミチルも自分たちが付き合ったことにより、この四人の関係が壊れることを危惧していたらしい。


 そんなことは杞憂だ。


 早苗も茜もミチルや渚のことは好きだし、大人になってもずっと友達でいたいと思っている。


「ありがとう二人とも。これでやっと肩の荷が降りたよ」


 渚もかなり不安だったのか、ようやく安堵の表情を浮かべる。


「これでこれからはあたしたちでダブルデートができるわね」

「「えっ」」

「「……えっ」」


 ミチルはダブルデートができると言っているが誰のことを言っているのだろうか。

 早苗も茜も誰のことを言っているのか分からず素っ頓狂な顔をすると、なぜかミチルと渚も素っ頓狂な顔になる。


「えって、あたしたちと早苗たちに決まってるじゃない」


 ミチルは早苗と茜を指差しながら説明する。


「いや、私たち付き合ってないよ」

「そうね。あたしと早苗はただの幼馴染だ。恋人じゃないよ」


 ミチルがどうして勘違いをしているのか分からないが、早苗と茜はカップルではないし付き合ってもいない。


 ただの仲の良い幼馴染である。


 恋人になったことなんて一度もない。


 それを説明すると、ミチルだけではなく大人な渚までも困惑した表情を浮かべていた。


「はぁ―――――――――――――――――――――――――――――――――」


 ミチルの絶叫が教室全体に響き渡った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る