第一章 幼馴染
第3話 藤原ミチルと加藤渚
藤原ミチルは早苗と同じ高校二年生の男の娘だ。
身長は百四十後半とかなり小柄である。
ロシアと日本のハーフらしく、髪は鮮やかな金色をしており、ラビットスタイルのツインテールにしている。
口調が強く、誤解されやすい性格をしているが実は気の弱いところもある。
ギャップの可愛い友達である。
加藤渚も当たり前だが高校二年生の女の子だ。
身長はミチルと正反対で百七十半ばとこの四人の中で一番高い。
黒髪のショートヘアで可愛いよりも恰好良い顔をしている。
基本は大人しいが、芯の強い女の子である。
胸の大きさは少し小さめなBカップである。
ミチルと渚とは高校一年生で同じクラスになり、そこから仲良くなり今に至る。
ミチルの声があまりにもうるさく、教室にいた全員がミチルの方を振り向く。
教室にいる全員に注目されたミチルは恥ずかしくなり、渚の体に隠れる。
「なんでミチルちゃんはそんなに驚いてるの」
「あたしも全く分からないから教えてほしい」
早苗はなぜそこまでミチルが驚いているのか理解できず、ミチルに尋ねる。
幼馴染の茜も全く心当たりがないらしく、首を傾げている。
「いや、だって、あんなにイチャイチャしてたら誰だって付き合ってるって思うでしょ」
ミチルはカップルではないにも関わらず、バカップルのようにイチャついている二人に驚きを隠せないでいた。
「そんなにイチャついてたかな~」
「どうだろう。あたしも記憶がない」
心当たりがない早苗は茜にも聞いてみるものの、茜も心当たりがなく首を傾げる。
一体、どこら辺がイチャついているようにミチルには見えたのだろう。
「二人とも本当に仲が良いんだね」
ミチルと違いすぐに二人が付き合っていない事実を受け入れた渚は穏やかな表情を浮かべている。
「昔から茜ちゃんとは仲が良いよ。幼馴染だし」
早苗は仲の良さを強調するために茜の腕を抱く。
茜の腕は華奢で柔らかくも力強いので抱いているだけで安心する。
「それよそれ。普通恋人でもない男が女に抱き着かないでしょ」
「確かにっ。私たち異性だったね茜ちゃん。全く意識してなかった」
「そうだね。異性と意識する前に仲良くなったからあたしも早苗の性別なんて意識してなかった」
「私も。茜ちゃんの性別なんて全然意識してなかった」
ミチルに当たり前のことを指摘され、早苗は茜を異性として意識していなかったことに気づいた。
もちろん、茜が女の子だということは分かっている。
ただ早苗は茜を異性としてではなく『茜』として接しているのだ。
だから、今まで早苗は茜を異性として意識したことがなかった。
もちろん茜だから抱き着くのであって早苗だって他の女の子に抱き着くことはしない。
茜も早苗と同じらしく、早苗の性別なんて意識していなかった。
「それに早苗は昔から甘えん坊だから。早苗に抱き着かれるのは慣れてるし」
「だって茜ちゃんに甘えたいんだもーん」
早苗が三月生まれで茜が四月生まれということもあり、実質二人は一歳近く年が離れている。
それに加え甘えん坊という性格もあり、昔から早苗は体が大きかった茜に甘えていた。
茜も早苗に甘えられて悪い気はしていないらしく、今も早苗に甘えられている。
「それに早苗は弱虫で泣き虫だし、あたしがいないと心配だから」
「弱虫じゃないもん。茜ちゃんの意地悪」
「もう早苗ったら」
茜に意地悪と言われた早苗はポカポカと茜の胸を叩く。
もちろん、本気で怒っているわけではなくこれも甘えの一種である。
それが分かっている茜も本気で嫌がっているわけではなく、ただ早苗とじゃれ合っている。
「もう一度だけ確認するけど二人は仲が良いだけで付き合ってないんだよね」
「うん」
「そうだね」
渚が念には念を入れて最終確認をすると、二人はよどみなく即答する。
「二人が付き合っていなかったなんて今年一のビックリなんだけど」
ようやくミチルも二人が付き合っていなかった事実を受け止めた。
「逆に私はいつの間にみんなの中で茜ちゃんとカップルになっていたことにビックリだよ」
「あたしも。別にあたしも早苗も告白なんかしてないのにね」
ミチルが早苗と茜が付き合っていなかったことに驚いているように、早苗も茜も茜と付き合っていると思われていたことに驚いた。
茜の言う通り、早苗も茜も告白した覚えもないし、告白された覚えもない。
早苗たちが普通だと思っていたスキンシップも、傍から見ればイチャついているように見えるらしい。
その後、ホームルームが始まる時間になり四人は自分の席に戻る。
「やっぱり、ゴールデンウィークの後の学校はマジでだる~い」
「早苗、声が大きいからもう少し小さな声で言いなさい」
五月病でやる気のない早苗は机に両肘をつけながらホームルームを受ける。
早苗に甘い茜はそんな早苗に的外れな注意をするのであった。
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