第10話 やっぱり北野後輩は面白いよ
説明しなくても分かると思うが主に話すのが紗那と清美で、麗奈は二人の話を聞いていることの方が多い。
真希も一人で食べたい派だったので、基本は聞き専に回っていた。
ご飯を食べ終えると昼休みが終わるまで暇になる。
もし、一人だったら仰向けになって空を見ながらリフレッシュするつもりだったが、賑やかな先輩たちがいる以上それは難しいだろう。
「もうあたしら高校三年生だよ。早くなーい」
「そっか、もう残り一年しか通えないのか。寂しいな」
「でしょでしょー。来年の今頃はもう高校生じゃないんだよ。全然想像がつかないんだけどー」
三年生の清美と紗那にとって、高校生としていられるのは今年が最後である。
残り一年しか残っていない高校生活に思いを馳せて二人は憂いている。
真希は入学したばかりの高校一年生であり、まだ三年も高校生活が残っている。
だから二人の気持ちには共感ができなかった。
「もう来年の三月で卒業すると考えると寂しい気持ちになりますね」
麗奈も高校三年生ということもあり、二人の気持ちに共感している。
「での清美だけは来年も高校生かもしれませんよ。留年して卒業できなくて」
もしかしたら麗奈は真面目で大人しそうに見えて、実は結構毒舌なのかもしれない。
息を吐くかのように自然な流れで毒を吐いてきた。
「確かに否定できないのが面白い」
紗那も紗那で麗奈の言葉を否定しきれずにクスクス笑っている。
「ちょっ、ひどくなーい。さすがにあたしだって卒業ぐらいできるっつーのー」
二人に馬鹿にされたことが遺憾らしく、反論する。
「そんなに沢田先輩は馬鹿なんですか?」
今までほとんど人と関わってこなかった真希は、オブラートに包むことなくストレートに質問する。
「あはは、やっぱり北野後輩は面白いよ」
その質問がツボったのか紗那は大声で笑い、麗奈も声を抑えながら笑っている。
「ちょっとなんで二人とも笑ってるのよー。それにあたしは馬鹿じゃないから。赤点だって一回も取ったことないし」
真希に馬鹿だと思われ、それを二人に笑われて清美は一人不服そうだ。
「いや、清美は毎回赤点ギリギリだろ。さすがに馬鹿ではないと否定はできんだろ」
「もっと早くテスト勉強を始めればテスト前に焦ることなく余裕で赤点も回避できるのに。これでは大学や社会に出て困るのは清美です。もっと計画的に行動してください」
毎回赤点ギリギリな清美に紗那は呆れ、麗奈は清美のことを心配して怒っている。
「だから馬鹿じゃないってばー」
清美は馬鹿だと思われるのが相当嫌らしく、馬鹿ということを否定し続ける。
毎回赤点ギリギリというのが事実だとすると、真希から見ても清美は馬鹿の分類に入る。
さすがに学校のテストで赤点ギリギリは馬鹿である。
学校のテストなんて、授業を聞いて予習復習をしていれば赤点なんて滅多に取らない。
なぜなら学校のテストは学校の授業で習ったところしか出ないからだ。
「鈴木先輩は赤点ギリギリじゃないんですね。意外です」
「まさか北野後輩に清美と同類に見られていたんて。悲しいぞ。普通に毎回平均以上点数は取っている」
「紗那、それはあたしに対して失礼だぞー」
紗那と清美は似た者同士と見ていた真希は、てっきり紗那も毎回赤点ギリギリだと思っていたが勉強は結構できるらしい。
本当に意外だった。
紗那は真希に清美と同類に思われていたことが心底心外だったらしい。
本当に嫌そうな表情を浮かべていた。
清美が紗那に抗議していたが馬鹿の言うことは聞かなくても良いだろう。
「ちなみにこの中で一番頭が良いのは麗奈だ。毎回トップ五には入っている」
「やはりそうですか。納得です」
「自慢しているようで嫌な女みたいですが、この中では私が一番勉強できますね」
見た目通りと言ったら失礼かもしれないが、この三年生の中で一番頭が良い先輩は麗奈らしい。
真希の予想通りである。
麗奈は頭が良いことは自慢しているようで嫌だと感じているらしい。
「別に頭が良くても悪くてもその人の個性なので嫌な女だとは思いませんよ」
世の中には頭が良い人もいれば頭が悪い人もいる。
それはその個人の個性であり、否定されるものではない。
「……あ、ありがとうございます」
後輩にフォローされるとは思っていなかったのか、麗奈はハニカむ。
「良いこと言うじゃーん北野ー。さっきは馬鹿だと言われてショックだったけど見直したわー」
馬鹿でもそれを肯定されて嬉しいのか清美の声は弾んでいる。
「誰にだって得意不得意はあるので、勉強が不得意だからと言ってダメだとは思いません。ただし勉強は多かれ少なかれ社会に出ても影響があり、仕事の勉強や業務内容を覚えないと仕事はできないので学習能力は必要だと思います。だから学校のテストの赤点は本当に最低ラインなので赤点を取るのはさすがにヤバいとは思います」
誰だってそうだが、人には得意不得意がある。
だから勉強ができなくても、真希はダメだとは思わない。
ただし、勉強は社会に出てからも多かれ少なかれ使う知識であり、社会に出てからも仕事をするための知識を勉強しなければ仕事はできないため、最低ラインの学習能力は必要だと真希は考えている。
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