ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

第一巻 プロローグ ウザい先輩

第1話 ウザい先輩

 朝の駅構内は通学者や通勤者で混んでいた。


 通学者も通勤者も真新しい制服やスーツを着ている人が多い。


 それもそのはず。


 今は四月。


 新入生、新社会人からすれば新しい環境での生活が始まる季節である。

 不安を抱く者や期待に密ている者もいれば学校や会社に慣れ、いつも通りの日常をむかえている人も多い。


 北野真希もその中の一人であった。


 真新しい制服を来て電車を待つ真希。

 別に真希は新生活の期待も不安もなかった。


 真希にとって高校とは高校卒業を取るために通う施設であり、別にそこに友達とかそれ以上のことは求めていなかったからだ。


 よく周りからは冷めているとか言われたが、そう思うのだから変えようがない。


 高校も淡々と通い、単位を取って卒業できれば良い。


 この時まで真希はそう思っていた。


「もしかして君は新入生かっ」

「……」


 誰かが誰かに話しかけてきたのだろう。


 残念ながら声をかけた人は無視をされたようだ。


 関係ないから別に良いんだけど。


「いきなり声をかけられて戸惑っているのだろう。すまない。なんせ高校三年目にして初めてこの駅を使う同じ学校の人に出会えて思わず興奮してしまった。……そっか、まだ自己紹介がまだだったな。あたしは鈴木紗那、高校三年生だ。これからよろしくな」

「……もしかしてそれ、私に言ってるんですか」

「なにを言ってるんだ。君しかいないだろ。ほらっ、目の前に立って君に話してるだろ?」


 まさか自分に向かって声をかけていたとは露知らず真希は普通に無視していた。


 目の前に立って自己紹介した女子生徒に面倒臭そうに尋ねると、なにを馬鹿なことをきいているんだこいつと言いたげそうな顔をして答える。


 これがウザい先輩、鈴木紗那との出会いだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る