第11話 彼女が出来て初めての朝①

 ピピピ、ピピピ。

 目覚ましがなり、体を起こす。

 朝だ。


「もう朝か……まだ眠いな、眠すぎる……」


 昨日が色々あったからだろうか。

 凄く眠い。

 

「……でもホントにあいつら二人ともと付き合えるとはな……」


 告白され、それに答えた。

 そこまでならいい。

 だが、俺がやっているのは恋人を二人作るという事だ。

 世間一般が知ったら引かれると思うし、普通にヤバいことなんだよな。


「……とりあえずは学校行くか……」


 起き上がり、自室を出て、階段を降りた直後。


 ピーンポーン。

 家のチャイムが鳴る。


「おい、誰だよこんな朝早くから。宅急便か?」


 宅急便もよく朝に来ようとするよな。


「桜、ちょっと誰が呼んでるか見て来てくれるか? 俺、手が離せないからさ」


 そう叫びながら洗面台に向かう。

 面倒くさいし、こういう時は他の人に任せるのが得策だろう。

 ちなみに、桜とは俺の妹のことだ。

 歳は俺と3つ下で中学三年生だ。

 

「えーなんで私が……」


「別にいいだろ。暇だし」


「暇じゃないんだけど……ホント死ねよクソ兄貴」


「おい、ちょっと口が悪くない!? 辛辣過ぎない!?」


 すると。


 ピーンポーン。ピピピピーンポーン。

 

 何度もチャイムを鳴らしてくる。

 なんだこいつ。


「ああああ、もう。こいつ、うるさすぎ! ……しょうがない。出るわよ! これで貸し一つね」


「なんで、こんなことで貸しなんか作らなくちゃいけないんだよ……」


 俺の言葉を無視して、リビングから桜が出て玄関に行く。

 俺はそのまま、洗面台に行き、身支度を始める。


「はーい、今行きまーす……ってあれ、この人って……お兄ちゃんー!」


「ん、どした? 宅急便じゃなくて、宗教勧誘の方だったか? それなら宗教とか、入る気ないから大丈夫です、ってちゃんと断ってくれよ。じゃないとあいつら何回も来て鬱陶しいからな」


 歯磨きしながら答える。


「いや、全然宗教じゃないから。ていうかそれ宗教の人に失礼だよね!」


「違うのか……なら一体全体、誰なんだよ」


「……理沙ちゃんだよ。理沙ちゃん」


「理沙!?」


「覚えてないの? 姫野理沙ちゃんだよ。昔一緒に遊んでた幼馴染の」


「いや、覚えてるけど! 今同じ高校だし!!」


 急いで、歯磨きを終わらせて、玄関に向かう。

 

「……ホントだ。姫野だ」


 ドアの向こうに姫野の姿が見える。

 恥ずかしそうにしながら何回も何回もチャイムを鳴らしている。

 うるさいからそれはちょっと止めて欲しい。


「……お兄ちゃん、早く行ってきなよ」


「うん、わかってるよ……」


「んじゃ私は部屋入ってるから」


 そう言ってリビングに戻った。


「仕方ない。出るしかないか」


 靴を履いて、玄関を出る。

 制服じゃなくて、パジャマなのが少し恥ずかしい。


「おはよう、姫野」


「お、おはよう。颯ちゃん……」


「そ、颯ちゃん!?」


 前もこんな呼び方をしてたけど、何なんだこの呼び方。


「……ダメ、かしら?」


「ダメってわけじゃないけど……どうしてこんな呼び方を……」


「もう、付き合ってるのだし、馴れ馴れしい呼び方をしたくて。昔、使ってた呼び方ならいいかなって……」


 なるほど、そう言う事か。

 颯ちゃんって、俺たちが幼い時に使ってた呼び方なのか。

 時々出て来て、前から疑問だったけどやっと晴れた。

 すっかり忘れてた……。ごめんね、姫野。


「それとなんだけど澤宮さんみたく、できれば、私のことも名前で……」


「……わかったよ。なら俺も、り、理沙って呼ぶから」


「り、り、理沙……」


 空を向きながら感嘆の声を上げる。

 どうやらよかったらしい。


「……それで、今日はどうしたんだよ、こんな朝早くに。まだ学校に行く時間じゃないだろ? 要件はそれだけなのか?」


「……彼女になったんだって思うと、夜寝むれなくて……それで朝になったからすぐ用意してここに来たって感じだわ」


「結局あんだけチャイム鳴らしといてなにも要件ないんかい!」


「……やっぱり帰ったほうがいいのかしら」


「まあ、そうした方がいいのかも」


 身支度もすんでないしな。


「ってことは迷惑ってことなのね……」


「……いや、別にそう言うわけじゃないけど……」


 返しずらい……。

 ……くそどうしたら……。


「ああ、もうわかったよ。時間が来るまで家に上がれよ!」


「え? いいの!?」


「……仕方ない。ちょっと散らかってるけどな」


「親御さんとかは……」


「俺の両親はどっちとも朝が俺たちより早いから今はもういないよ。桜はいるけど」


「……そう、桜ちゃんだけなのね。それならお邪魔させてもらうわ」


 俺は家の中に姫野を歓迎した。

 もしかして、姫野……じゃなかった、理沙って家に入るのが狙いとかじゃないよね……まさかね……。

 家に入れながらそう思った。

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