学園二大美女の冷徹な幼馴染と甘えたがり屋の後輩が俺のことを好きと言ってくるんだが

シア07

第1話 告白

「はぁ……」


 教室の少し前に着くなり、俺――相川颯太あいかわそうたはひっそりと陰でため息をついた。

 この高校――私立明野宮あけのみや学園に入って三年が過ぎた。

 そこからまだ一か月も経っておらず、クラスにも馴染めるどころか名前も覚えてもらえてなさそうな時期に非常に災難なことが訪れた。


「あはは、なにそれウケる!」


「それな!」


 教室に入れないのである。

 ドアの前には陽キャどもが馬鹿でかい声で話していて、中への道を塞いでいる。

 俺に気づく様子もなければ立ち去る感じもない。

 つまり――詰みだ。


「私にも見せて!」


「いいぜ……ほら!」


 携帯の画面を向ける。


「……うわぁ、なにそれマジウケるんですけど」


「ほんとそれ」


 さらに人は増え、絶望的な状況になってきた。

 

 ……何言っちゃってんの? ウケないから。全然、面白くないから!

 こっちは、朝のテストがあるから少し勉強したいのに……


 きっと先生が来るまでいるつもりなんだろう。本当に気持ち悪い。

 しかも、ピッカピカの金髪やら赤髪やらの男女たちがなにやら楽しそうに戯れているのがさらにムカついてくる。

 ……ぶん殴ってやろうかな。それくらい、いいよね? 権利あるよね?


 そんなことを思いながらも、俺はその場で硬直して、動かない。


 だって、よくよく考えてみたら俺陰キャだし。人と会話なんか全くできないし。

 無理やり進んでぶつかりでもしたら気まずいしな。 

 ……今日はもう帰ろうかな。


 と、その時。


「ちょっと、どいてももらえるかしら。邪魔なのだけれど」


 ドアの方から彼女――姫野理沙ひめのりさの声が聞こえて来る。


「あ、ごめん姫野さん。すぐどくから」


「別にいいわ。今度からそこにいないようにしなさい」


 彼女のことを簡単に言葉にするなら容姿端麗、文武両道の完璧超人だ。


 ツヤツヤに光った青の長髪にすらっとした美形。

 極めつけは大人びた顔。

 この学園において、ほとんどの生徒から絶大な人気を誇る。


「……そんな冷たいこというなよ。俺たち友達だよな」


 そこでひかないのが陽キャだ。

 ここぞとばかりに姫野に話しかける。

 その精神だけは正直羨ましい。


「? なにを勘違いしているのかしら。私はあなたの友達でもなんでもないわよ。ただのクラスメイトでしょう」


「えぇ……」


 話しかけた男の人はショックでがくりとうなだれる。


「流石は学園二大美女のうちの一人、冷徹の姫! 強すぎる……」


 誰かが言う。


 そう、彼女は冷徹なのだ。

 この学園の二大美女の一角であり別名が冷徹の姫。

 冷徹な姫野ってことでそうあだ名がついたらしい。

 彼女に告白して冷たくあしらわれた人はいるとかいないとか。

 

 ……まあそんなことはどうでもいいや。

 人もいなくなったし、さっさと中に入って勉強でも……


 中に入ろうと歩き出す。


「あら、颯太君じゃない。そんなところで、もじもじとなにをしているのかしら?」


 すると、姫野が急に後ろを向いて、話しかけてくる。

 突然のこと過ぎて、緊張してしまう。


「……いや、別になにも、していないです」


「そう? さっきからずっといるけど。何かあるのかしら」


「……」


 見ていたのかよ。

 

「そんなにかしこまらなくてもいいのよ。私たちはこれでも――幼馴染なのだし」


「……まあ確かに」


 そして彼女は俺の幼馴染でもある。

 昔は仲がよく、遊んでいた。お互いの家に行く、くらいにだ。

 しかし、今は会うどころか会話すらもしない。

 そんな生活が続いていたのに。

 いきなりどうして……


「ああ、それと颯太君。今日の放課後いいかしら? 話したいことがあるのだけれど」


「え? 話し? 俺に!?」


「そうよ。無理かしら?」


「いや、行けるけど……」


「なら放課後、屋上にきて。待ってるから」


「あ、ちょっと!」


 声をかけるがそのまま、教室の奥に入っていき、席に座ってしまう。

 近くには女子や男子が集まっていて、話しかけれそうにない。


「なんなんだろう、話って……」


 なんか、少し怖くなってきた。 

 昔は仲が良かったとは言え、今はあれだぞ。あの冷酷の姫だぞ!

 なんか酷いこと言われる気がする……

 絶対そうだ……


 そうこうしているうちに先生が来る。


「おい、相川。早く中に入れ。テスト始めるぞ」


「あ、テスト!」


 勉強するの忘れてた!



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「う、くそ。余計なことがなければ勉強できたのに……」


 廊下を歩きながら呟いた。


 案の定、テストの結果は散々だった。

 多分、再試決定だろう。再試は卒業するのに関わるから避けていたのに。

 一学期からこんなんで大丈夫なんだろうか。


 そんなことをしていると。


「せーんぱい!」


 可愛らしい声が聞こえて来て、肩をポンと押される。


「あ、凛音ちゃん」


 彼女の名前は澤宮凛音さわみやりおん

 俺の一個下で高校二年生。

 去年たまたま知り合って、たまに話す仲だ。

 

 小柄な体形にピンク色の髪が二つ結びになっている。

 そして一番のチャーミングポイントはその仕草だ。


「ふふ、先輩ったら。声だけで気づいてくださいよ~」


 頭を俺の肩に乗っけて来る。

 さらに頭をぐりぐりと動かして触ってくる。

 その動作に流石にドキドキが隠し切れない。


「わ、なにあれ。なんであんな陰キャラっぽい奴に学園二大美女である甘えん坊の澤宮さんがくっついてるんだ!?」


 そう、彼女は姫野と同じ学園二大美女のもう一角。

 あだ名は甘えん坊の澤宮さん。

 名前の通り、こんな感じで甘えて来る。


「ほらほら、みんなに見られてますよ~。もっとぐりぐり~。ぐりぐり~」


 さらにねじ込んでくる。

 少しくすぐったい。


「ちょ、そろそろ止めてくれ!」


「嫌です。私はもっと先輩と触れていたんですよ!」


「そういう事じゃない! みんなが見てるから! 恥ずかしいから!!」


「ふふふーん。そんなことは関係ないのです。私は勝手気ままな女の子なので!」


 どうやら辞める気がないらしい。まだ動かし続けてくる。


 ああ、周りの変な視線が直に伝わってくる。

 悪口とか言われてなきゃいいけど。


「あ。そうだ、思い出しました。ここに来たのは先輩に話したいことがあったからなんです」


 急に体を離す。


 おっと。

 危ない。倒れるところだった。


「……それで、話っていうのは」


「今日の放課後って暇です?」


「……どうだろう。ちょっと用事があるけど。時間がどれくらいかかるかとかはわからないな」


 姫野に屋上に来てと言われているはいいものの、時間とか全くわからない。

 ならば、話しかければいいとか思うかもしれないが、1人で話しかけには行けないのだ。

 主に怖くて。


「それなら、それが終わり次第、屋上に来てください。待ってますから」


「え? 屋上!?」


「それでは、じゃあね。せーんぱい」


 俺の言葉なんかには目もくれず、そのまま走り去っていく。

 ホントに勝手気ままな奴だ。

 

 ……それにしても同じ放課後に屋上って。

 どのタイミングでいけばいいんだよ。

 ていうか、二人ともいたらどうするんだよ。



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 いつの間にか放課後になっていた。

 退屈な授業は終わり、姫野と凛音ちゃんから呼び出されている時がやってくる。

 教室を見渡せば、姫野の姿は見当たらない。

 本当に屋上にいるのだろうか。

 少し心配だ。


 ……まあ、それでも呼び出されたからには行くんだけどね。

 階段を一歩一歩歩いていき、進んでいく。


 久々に話した姫野。そして凛音ちゃんのボディータッチ。

 そんな二人が同じ日に同じ場所に呼び出すか?

 ……なにかある気がする。そう考えるとちょっと怖くなってきた。

 

 そして、いよいよ屋上のドア前に来る。

 なぜ、こんなに緊張するんだろう。

 やましいことがあるわけでもないのに。

 ……まあいいや。さっさと用事を済ませよう。


 俺はドアを一気に開ける。


 中に人は……


「あれ、いない?」


「遅かったわね、颯太君」


「わ、びっくりした。姫野!?」


 ドアの影に隠れるように姫野が座っていた。

 手には本が握られている。

 隣には……


「あれ、凛音ちゃんまで!?」


 凛音ちゃんが座っている。


「あーあ、見つかっちゃった。せっかくバレないように隠れてたのに。謝ってください!」


「え……なんで?」


「見つけた罰です!」


「俺、悪くなくない!?」


「はいはい、くだらない雑談は後にやってちょうだい。さっさと本題に入ろうと思うのだけれど」


 流石は冷徹の姫。

 冷たいぜ。


「本題? そう言えばなんで二人とも話したいことがあるって言ってたけど何のことなんだ?」


「そう、話したいことがあるのよ。私だけでなく彼女も添えてね」


「そうです。先輩にとっても私たちにとってもめちゃ大事なことです」


「え? 二人とも一緒!?」


「もちろん、一緒よ」


 どうやら、二人とも言いたいことが同じらしい。

 なら、最初から一緒に言えばよかったのに。余計な勘違いしちゃったじゃないか。


「……ならその言いたいことっていうのは……」


「そうね。早く話してあげましょうか」


「……わかりました。言いましょう」


 二人が深呼吸する。

 それをみて、俺もつられて深呼吸した。


 そして、彼女たちは少し頬を赤く染めながらこういったのだ。


「私はあなたが好き。だから付き合って欲しいの」


「私はあなたが好きです! 付き合ってください!」

 

 俺を好きだという告白を。


「え、えーーーーーー!!」



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 どうも作者のシアです。

 

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 本当にモチベにつながるのでおなしゃす。感想も待ってます。


 では。

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