第5話 更なる謎③
「うああああ!」
つばめは悲鳴を上げ、頭を地面に擦り付ける。一日で二度目の非日常の出来事のせいで、精神崩壊を起こしそうになる。
「何で‥‥‥こんな‥‥‥そうか夢だ! 現実でこんな現象が起きる筈がない! 夢なら覚めてくれ! 早く───」
「残忍なこと、理不尽なこと、非日常で信じられないこと、その全てが起こりうるのが現実よ、これは間違いなく現実」
現実逃避すら許してくれない。
「実はねつばめ、あなたには前々から興味があったの。何故なら、あなたのような脆弱な心を持った人間が非日常に巻き込まれた時、どんな反応をするのか。まあ、脆弱な心の持ち主なら誰でもいいのだけれど」
とてもではないが会話ができる状態ではないつばめ。おそらくラミアの言葉も正確には聞き取れてはいない。それを承知で話し続ける。
「いいわね! その反応、絶望に満ちた表情! ゾクゾクするわ」
感情を露わにした表情を初めて見せる。顔を赤らめ、快感に満ちているのだ。それだけでは済まず、体でも快感を表現している。容姿端麗な童女だが、悪意に満ちている姿はまるで悪魔である。
悲鳴を上げていたつばめは、完全に思考停止して蹲っている。実際にこうなるのは自然の摂理なのだ。つい昨日まで普通の高校生をしていた人間が、目の前で殺人が二度も起きるのを目の当たりにして平静を保てない。
「久しぶりに興奮してしまったわ」
ラミアはつばめに迫り、
「知りたくはないかしら? この新葉市で起きていること」
「そんな事‥‥‥僕に教えてどうする‥‥‥だ」
少しだけ話を聞ける状態まで精神が回復したつばめは、ラミアから真実を知っているような話し振りで、興味が湧いたので理由を聞く。
「知る義務──というかあなたには拒否権はないわ」
掠れた声でつばめは、
「そんなのは理解している‥‥‥拒否すればきっと殺す気だ‥‥‥和真のように」
「あら、現状把握が早いわね」
予想通りだったという様子で呵呵大笑するラミア。そこで、ようやくつばめは蹲るのをやめて、ゆっくりと起立する。
「聞くよ、現実を。知らない方が畏怖の念を抱いてしまう」
「今日は遅いから明日でいいかしら?」
「そうして欲しい‥‥‥僕はもう疲れてしまった」
「なら決まりね、それではまた、つばめ」
その言葉を最後にラミアは立ち去った。
つばめは蹲っていた場所で誰もいない中、しばし佇立する。いつの間にか和真の遺体が消えているのに気づいても無感情。心境の変化がない。
しかし、何からも逃げるのが人生だったつばめの瞳には、意外にも力強さを感じさせる決意があった。
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