推し活

郷野すみれ

推し活

 推すものが、二次元でも三次元でもいいけど実体のある人物じゃなきゃいけないって誰が決めたの?


 私は小説を推している。ただただ推し本を語るだけの、30分ほどの音声配信を週一でやっているが、もうすぐ1年だ。細々とではあるけれど、常連のリスナーさんもいらっしゃってありがたい限りだ。自分でこういう風に言うのもなんだが、物好きもいるものだ。


「こんばんはー! はい、始まりました、みかんの『本ラジオ』です! 皆様いかがお過ごしでしょうか? 寒暖の差も激しいですよねー、最近。あっ、そういえばこの間……」


 最初は場を温めるために、ハンドルネームからの連想で、果物について話すことにしている。そしてただただ推し本について語る。文章じゃ、語り足りない。普通じゃ、ついてこれない。そんな私の推し語りの場。


 次々と流れるリスナーさんのコメントから発想が飛び、話題も飛ぶ。そんなのも一興だ。


 実は、1周年企画などでコラボをやってみたいと画策している。さて、誰にお願いしようかな。テーマも話すことも未定だけど、構想するだけでワクワクしてくる。果たしていつも通りの時間で終わるのだろうか。


 多分いつも現実世界で会ったり話していたりする人には想像もつかないであろう、人見知りで大人しい私の推し活。私だけでなく、推し活すらも人と変わっているかもしれない。

 絶対に知られてはいけないので、声も変えている。私がのびのびと活動できるこの場を知られたくないし、取り上げないでほしい。

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推し活 郷野すみれ @satono_sumire

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