第27話 最初のお客様

「みなさん、きょうは『グラン・プリマ』の記念すべきグランドオープンです、本日のご予約は一組とさせて頂きました。ホールスタッフの方は料理を運ぶ際、客席の動線などを注意しながらサーブをお願いします、キッチンスタッフの方はホールスタッフと連携を蜜にとり最高の状態で料理を仕上げて下さい、私からの連絡事項は異常ですが何か質問はありますか?」


みんな緊張しているようだが、それ以上に目が輝いている。


「質問はないようですね、では、本日も宜しくおねがいします。」


「宜しくおねがいします!」


みんな気合十分だ。


「いよいよだな!」


「あぁ、そうだな!」





「カルミア男爵様、到着されました」


車寄せに男爵家の馬車が入ってきた。


「手が空いてるスタッフは玄関でお出迎えします、並んで下さい」


スタッフが入り口入ってエントランスの両脇に並んだ。


「いらっしゃいませ、男爵様、本日はご来店くださり有難うございます」


小春が頭を下げて挨拶をするとスタッフも全員頭を下げた。


「あぁ、来たよ小春ちゃん」


「小春~! オープンおめでと~! これお祝いね」


そう言ってメリアが花束をくれた。


「ありがと~、メリア、あとでお店に飾っておくね」


「小春さん、おめでとう」


「奥様、ありがとうございます、本日はごゆっくりしていって下さい。」


「はい、そうさせて頂くわ」


「ご案内いたします」


そう言って、小春は2階のロイヤルブルーの部屋へ案内した。


「これはこれは! 豪華な作りとは聞いておったが、ここまでとは」


「すご~い! 小春すごいよ~」


「あなたの全盛期よりも素晴らしいのではありませんか?」


「ハッハッハ、そのとおりだな、あの年齢で大したものだ。」


3人は部屋の内装や調度品に驚いていた。


「小春ちゃん、お手洗いはどこかしら」


婦人が口を隠して小さな声で小春に尋ねた。


「ご案内しますね、こちらへどうぞ」


小春は婦人をトイレへ案内した。


「トイレの使い方はこちらに書いておりますので」



トイレは女性用、男性用それぞれ4部屋づつで、女性用は広さが一部屋18畳ほどある。

ドアや室内は沢山の彫金細工が施してあり、天井からはノーラ特製の光がサラサラと降ってくる光魔法の照明が仕掛けてある。部屋の中には絨毯の上には、色々な花びらが敷き詰めてあり、柔らかな花の香が漂う仕掛けがあった。トイレも手を洗うボールもノーラの水洗だ、この世界は手を洗うのは料理人と医者くらいで、その他は手を洗う習慣がない。


パタパタパタ・・


婦人が走って部屋へ戻ってきた。


「あなた! いえ、メリア! あとでお手洗いに行ってみなさい、すごいわよ!」


「なんだね、はしたない」


「失礼しました、でも本当にすごいですのよ」


「お手洗いには大変こだわりました」


小春は小さくお辞儀した。


「ふむ、私もあとで行ってみよう」


「ゴメンナサイね食事前にお手洗いのお話なんて」


「いえ、では、本日のメニューになっております」



小春は一品づつ料理を説明していった。

まだ料理も食べてないのに、料理の説明を聞いて三人はため息をついていた。



「では、私は厨房にもどりますので失礼いたします。」


そう言って小春は厨房へ下がって行った。





―――――― 本日のメニュー ――――――


アミューズ

 マールン鴨の卵の泡仕立て、燻製サルモ(サーモン)とともに



オードブル

 アルザン産きのこのテリーヌ仕立て、ゴトー山羊のグラスドビアンソースで



スープ

 ブルパラギ(ホワイトアスパラ)のクリームスープ、チーズの香り



魚料理

 リーアン産ピースリンプ(アカザエビ)の香草グリル、数種類の貝とともに



肉料理

 アルザン産赤ポルポ(豚)のコンフィ、スパイスとフレッシュハーブの香り



デザート

 クレーム・ド・ブリュレ、アランチャのソースで



――――――――――――――――


代金、飲み物込で一人小金貨3枚(3万円)



「お料理はいかがでしたか? お口に合いましたでしょうか?」


小春はお腹をなでているカルミア家のもとへ挨拶へ来た。


「いや~、素晴らしかったよ! 驚きの連続だった」


「小春はほんとにすごいよ!」


メリアが座ったままピョンピョン跳ねている。


「小春さんは天才なのね、あんな素晴らしい料理を考えつくなんて」


「お口に合って何よりでした、このあと食後に深煎豆茶をお持ちしますね」


「あぁ、気が利くね、丁度ほしいと思っていたところだ」


「では、後ほど」


そう言って小春は下がった。




「あの、お父様、お母様、相談がありますの?」


メリアがかしこまった。


「どうしたの急に、なにかあったの?」


「どうしたメリア、言ってみなさい」


「私、小春と一緒に働いてみたいです」


メリアは思い切って言った。


「あらまぁ、あなた?」


「うむ、メリアよ、実は私と母さんで話してたことがあるんだ」


「はい」


「小春ちゃんを見てて思っていたんだよ。お前と歳もそう変わらない女の子が、これだけ力を振り絞って、やっている。『私達はこれでいいのだろうか? メリアにも色々と経験させた方が良いのではないか?』そう母さんと話していたんだ。お前もデビュタントが終わり大人になった。これからはお前が決めなさい、小春ちゃんのところなら私も安心だ。あとは小春ちゃんに相談してみなさい。」


「お父様、お母様、ありがとうございます」


メリアは潤んだ目で両親に礼を言った。




「おまたせしました、深煎豆茶をお持ちしました。あれ? メリアどうしたの? 大丈夫?」


「小春ちゃん、メリアからお願いがあるそうよ、聞いてあげて」


「あのね、小春、わたし小春と一緒に働きたい! 色んなもの見てみたいの、色んな事を知って、色んな経験をしたいの!」


「おっと、急ねぇ、男爵様のお許しは?」


「あぁ、問題ない、小春ちゃんなら安心して預けられるよ」


「私も、メリアがいてくれたら心強いよ、よろしくね」


「ありがと~、小春」


「一緒に頑張ろうね、メリア」


「うん!」


ふたりは両手で握手をした。



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