第11話 メリアと


厨房では賄いも食べ終わり、後片付けをしていた。

小春はデザートを持ってメリアのもとへ向かった。



コンコン


「お嬢様、小春様が来られました。」


「どうぞ」


「お嬢様、おまたせしました。」


「どうぞ、お掛けになって。」


メリアと小春はソファーに座った。



「お茶を2ついただけますか? 豆煎り茶で結構ですので。」


メリアはメイドにお茶を持ってくるように言った。



「お約束のデザートお持ちしました、こちらがモンブラン、こちらがブランマンジェ、こちらはご要望のプリン、こちらがシュークリーム、そして果物のソルベでございます。」


「わぁ~、どれも美味しそうですね♪ お父様のデザートを横で眺めながらツバを飲み込んでいましたのよ。」


「すべてメリア様のですから、ごゆっくり召し上がって下さい、あ、果物のソルベはすぐに溶けてしまいますので先にお召し上がり下さい。」


「ありがとう。」


メリアはお皿を目の前に持ち上げて色んな角度から一品づつ眺め、シャーベットをスプーンにひとすくい口に入れた。


「ん~、冷たくて美味しいですわ! このような菓子は初めて頂きました、他のも楽しみですわ」


メリアは今日で15歳、小春より2歳年下だ。


《わたしも貴族の家に生まれてたらあんなに上品になったのかなぁ?》


ニコニコしながら満足そうに、ひと口、またひと口とデザートを口に運ぶメリアを眺めながら小春は微笑んでいた、歳はそう変わらないのに幼く感じるのは大事に育てられたからだろうか。


「お茶をお持ちしました。」


メイドが豆煎り茶を二つテーブルに運んだ。


「ちょっと待って。」


メリアはそう言ってメイドを呼び止めた、年齢は恐らくメリアと同じくらいだろうか


「目をつぶって、口をあけて」


メイドは何をされるのかわからず戸惑いながら目を閉じて口を開けた


「ア~ン」


そう言ってメリアはプリンをひと口メイドの口に入れた。


「!」


ビックリしたメイドは目をパチパチしながら口を押さえた。


「どう?『プリン』という菓子だそうよ」


「美味しいですお嬢様、とても美味しいです!」


メイドは大きな瞳をパチパチさせて喜んだ。


「小春様にもお礼を言ってくださいね。」


「あ、ありがとうございました。」


メイドは起き上がり小法師こぼしのように何度も頭を下げた。


「お口に合いました?」


小春はニコニコしながら嬉しそう


「私のような者に勿体ないですお嬢様!」


「いいえ、美味しいものは皆んなで食べるほうが美味しいのですよ。」


《15歳なのに菩薩さまのような笑みだ・・・》


「では失礼いたします。」


そう言ってメイドは下がった。




「そういえば小春様は異国の出身だそうですね?」


「はい、日本という遠い国から参りました」


「どのようなお国なのでしょう?」


「そうですね、四季がございます、山も海も川もとても美しい国です」


小春は少し上を向いて日本を思い浮かべていた。


「お料理はそちらで学ばれたのですか?」


「はい、家が料理屋をしておりまして」


「素晴らしいですね、さぞかし繁盛してらっしゃるのでしょうね」


「はい、お陰様で」


「私の国は人口がとても多く、人々は毎日忙しく暮らしております。テレス王国へ来てからは何と言いますか、心にも身体にも負担が無いように感じます」


「そうですか、大変なお仕事なのですね。当家の料理番の者たちに後で労いの言葉を欠けておきましょう。」


「はい、皆んな喜ぶと思いますよ。」



「私はこの屋敷で生まれ、この屋敷で育ちました、父は私が生まれる前は各国を周る商人をしていたそうです、その時の話しを聞くととても楽しそうで、私も旅をしたいとずっと思っているのですが、なかなか父に許してもらえず残念です。」


メリアは窓の外を眺めながらそう言った。



「旅ですか~ 良いですねぇ、私も機会があれば世界を周って美味しい料理を食べたいですね♪」


「フフフッ、さすが料理人ですわね」


「ヘヘッ、食いしん坊なだけです」



「小春様、わたくしのことは『メリア』と呼んで頂けないでしょうか?」


「そんな滅相も御座いません」


「その代わり、わたくしも『小春』と呼ばせていただいても? わたくしは気軽に親しく話せる友人が居ませんの、よろしかったら友人になって頂けませんか?」


メリアはほんの少し頬を赤らめて上目遣いで小春を見た。


「もちろんです!」


「『です』ではなく、もっと気安く会話しましょう」


「わかったわ、メリア」


「はい、小春」


二人はにっこり笑った。


「小春、時間を取らせてゴメンね、まだ忙しいんでしょ?」


「ん~そうね、後片付けが少し残ってるかなぁ~」


「それでは、どうぞお戻りになって」


「うん、そうさせてもらうね」


「あの、たまに遊びに来てくれると嬉しいな」


メリアがおねだりの視線を送る。


「もちろんよ! メリアもお店に遊びに来てね、ご馳走するから」


小春はウィンクをして厨房に戻った。






厨房はすっかり綺麗に片付いておりルディとノーラが待っていた。


「ごめんね~、待ったでしょ?」


「いえ、今日の復習をノートに整理してたので」


「ん、待った」


「じゃ、ふたりとも帰りましょうか? 料理番の皆さん、今日はお疲れ様でした~、有難うございました~!」


一同

「有難うございました~~!」



三人は帰路についた。


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