第2話 大いなる厄災 その1

不思議な表示のイベントに懐疑心を持つことなく軍と調査隊を派遣させた


イベントの場所に到着するまでゲーム内時間で2時間(現実世界で10分)かかるため、首都の政治的中枢である大帝宮殿で景観を楽しみながらコンソールをいじっていた


【目的地に第一部隊が到着しました】


その表示を見てすぐに巨大な映像を目の前に出した


調査隊が洞窟に入った瞬間


俺の視界を含めすべてが真っ黒な闇に包まれた


「うおぉお!!」


ただの演出かと思ったら”それ”は俺の全身を掴んできた


「なんだこれ!!うわぁ!!」


黒い闇に連れ去られ、同時に意識も失った




「様............人様!..............ご主人様!」


「うわ!おおい!!」


「もう、いきなり大声を出されると驚きます」



目の前にメイドがいる



NPCの補佐メイドか!


目をぱちぱちさせているメイドに俺は違和感を覚える


「あれ、今なんて喋った?」


そう、NPCは定型文しか喋らないはずなのだ


おはようございますとか、今日も一日頑張りましょうのような、どこでも使える言葉しか発しないはずなのに


今この子は俺の反応に人間のような反応で返した


あの黒いのが原因なのか?


いや。今考えるべきなのは状況だ


そう自分に言い聞かせ、コンソールを開く動作を右手で行った


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?


何も反応しない


え?え?


動揺だけがあった


いつもは開けるはずのメニューが出てこない


それに何か変だぞ


俺は自分の身体を見渡す


どこにもおかしな点はない


だが左の小指に微小な痛みが走った


「うっ…」


小指を見るとそこには小さな切り口があり赤色の血がゆっくりと出ていた


おかしい!おかしい!


ここはゲームの中なのに!痛みなんてあるはずないのに、異常だ


さっきからおかしなことばかり起きている


「ご主人様!手から血が出ております!失礼いたします」


メイドがハンカチをポケットから出し、俺の手に当て、出血を抑えてくれた


「あ、ありがとう....」


メイドの息遣いや体温が感じられた


もう疑うことはなかった


間違いなくこのゲームに異常が起こっている


そしてそれは自分が思っている以上に深刻で重大な事態だ


心臓の鼓動が耳の横にあるくらい大きく聞こえる中、俺はただ黙ってメイドに介抱してもらった



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