ファミレスでオムライス

雨夏

とろとろ極上のオムライス

カランカラン。


「いらっしゃいませ〜」


ドアが開くとなる鈴の音と、店員の声。

俺・和賀聡わがさとるは『touching』というファミレスに来ていた。

ファミレスと言っても、家族と来ている訳ではなく、会社の後輩と来ているのだ。


「こちらへどうぞ」


店員の案内により、窓側の1席に座る。


「先輩、何にします?」

「そうだな……」


後輩の宇賀静留うがしずる。しっかりと人のことを思えるいい後輩だ。

……メシのことになると食いつきがよく、目がないんだが。


「俺は、これにしようかな。『とろとろグラシアスオムライス』。」

「グラシアスって何ですか?」

「さあ?知らね。静留は?」

「そうですね。僕もそれにします」


静留は注文を決めると「すみませーん!」と店員を呼ぶ。

ったく、ここの店はなぜ呼び出しベルがないんだか。


「はい!」


運よく、近くにいた店員がすぐにこちらにやって来てくれた。


「この、『とろとろグラシアスオムライス』、二つお願いします」

「かしこまりました!少々お待ちください。あと、水です」

「ありがとございま〜す」


水がコトンと置かれる。

ちょうど喉が乾いていたので、その水をグイッと飲み干す。

すると静留が、俺におかわりを入れてくれた。

待ち時間に、俺はスマホで『グラシアス 意味』と調べてみた。

どうやらグラシアスは、スペイン語で『ありがとう』という意味らしい。

注文してくれてありがとうということだろうか。謎だ。


「お待たせいたしました、『とろとろグラシアスオムライス』です!」


オムライスがゴトンと置かれる。

俺と静留は「ありがとうございます」とお礼を言ってからオムライスの方に目線をやる。


とろとろほかほかで、湯気が出ている卵焼き。

食欲がどんどん湧き出てきて、真ん中をナイフでぱかっと割った。


とろ〜。


中からとろとろの卵が出てきて、俺は思わず「くぅ〜」と声を漏らしてしまう。

ケチャップライスもごろごろと鶏肉や玉ねぎが入っていて、とても美味しそうだ。


「「いただきます!」」


静留と声が被り、顔を見合わせて「ははっ」と笑みをこぼしあう。

そして今度こそスプーンを握る。

一口分すくうと、ぱくっと口の中に入れた。


「お、美味し〜い!」


とろっととろけるオムレツの部分。ほかほかでたまらん!

ケチャップライスの部分も美味しすぎる。

これ、『極上のとろとろオムライス』に改名した方がいいぞ、絶対。

と、心の中で思いながら、食べ終える。


「「ごちそうさまでした〜」」


またもや静留と被り、笑い合った。

そのあと店を出た。


「美味しかったですね!」

「また来ような」

「はい!先輩の奢りで」

「はいはい」


また、絶対来よう。

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