不穏なギルドを改革します。

@konohahlovlj

第1話 悪徳ギルドマスターの死

 ホクトウ地方のとある街は、最悪なギルドマスターに独裁政権を敷かれていた。

 そのギルドマスターの名は、ロキ。彼は、事故で死んだ父の後を継ぎ、若くして商店街の長を務める事になると、ギルド内部に潜り込み、そこで一定の地位を得た。その後、権力争いに勝利した彼は、街長を手駒に付けると、5年もの間、私利私欲の為に多額の街の資金を使いこみ、増税、ハンター全体の賃金低下などを幾度となく繰り返した。

 ハンターを始めとするその街の住民たちは、日々ギルド前でデモを繰り返し行った。それでも、悪徳ギルドマスターは変わろうとしなかった。

 そして、デモは過激の一途をたどって、遂には人の血が流れる寸前まで来ていた。


 「マスター!そろそろ民衆の我慢も限界です!!」 

 ロキの補佐役であるエリックは、窓の外を見ながらそう叫んだ。

 「またそれか。どうせ今回も時間が経てば帰っていくだろう」

 ロキは、葉巻を咥えながら呑気にそう言う。そして、プレジデントチェアに深々と座ると、机の上の書類に目を通した。

 {ガングイ商店 今年分の税金について}

 またガングイんところの親父か、とロキは思った。

 ガングイ商店は、唯一ロキの悪政に反対する権力者だ。他の権力者は、全て金で黙らせている。

 「そろそろこちらも武力行使にでるべきじゃないかな」 ロキは、エリックにぼやいた。

 「あ~、ガングイさんのところですか?武力行使って言ったって、ハンターは誰もあなたの為には動きませんよ」 エリックは、眉を歪めた。

 「なんだと~。なら死刑だな」 ロキは、笑いながらそう言う。

 「やめてくださいよ、ロキさん。みんな、貴方の言葉にびくびくしているんですから」

 「グロイの件が効いてるんだろうな」 ロキは、そう言うと、高笑いした。

 グロイとは、以前、北地区の農業組合長を務めていて、反ロキ派を引っ張っていた権力者であった。しかし、1か月前のとある日、彼は、謎の失踪を遂げた。ロキによる仕業だと人々は噂しているが真相は闇の中である。

 「もうあんな事は、やめてくださいよ。また暴動が起こります」

 エリックが言い終わると同時に、部屋の扉が開かれた。

 「し、失礼いたします~」 か細い女の声だ。

 この女の名前はマナ、ロキの秘書を務めていて、爆乳おっぱいの持ち主だ。以前は、ギルドの受付嬢を務めていたのだが、ロキのお気に入りということもあって、彼のマスター就任を機に、秘書の座に就いた。昔から、ロキの事を怖がっており、彼に対してだけひ弱な態度をとる。

 マナは、机を隔てて、ロキの前に立った。

 彼女は、ロキを前にして、体を震わせている。その震えに合わせて、胸がボインボインと揺れる。ロキは、はだけた彼女の胸元を見つめてニヤついた。

 「あ、あの、マ、マ、マ、マスター様にお客さ、さまがお、、お見えです」

 ロキは手で、通せ、の合図を送る。

 マナは、それを見て会釈すると、ゆっくりと出口に向かって歩きだした。すると、ロキも立ち上がって、出口に向かって歩き出す。マナの左に並ぶと彼は、右手で彼女の肩を抱き、耳元でこう呟いた。

 「久しぶりにお前としたくなってきちゃった。今夜、俺の寝室に来いよ」

 肩をすくめる彼女の横顔を見ながら、ロキは、右手を下に降ろす。そして、彼女のお尻を二度さすって揉んだ。怯え顔に変わるのを見て、嬉しそうに笑う。

 扉を開けると、ロキはマナから離れた。

 円形のホールに、左と正面に二つの扉、右に一つの廊下が見える。左の扉がロキの寝室につながり、正面は応接室につながっている。廊下はプレジデントエリアの出口だ。

 マナは右側の廊下に、ロキは左側の部屋にそれぞれ消えていった。

 ロキは、手早くパジャマを脱ぎ捨てると、びしっとしたスーツを身につけた。現在、午後2時過ぎだ。

 寝台に放り捨ててある名札のワッペンを、左胸ポケットにさす。鏡を見て服を整えた。寝癖が見えたが、面倒に思い放置する事にした。

 ふわぁ~、と欠伸を自分にかまして、応接室に向う。

 エリックが先に入っていて、椅子や机を整えていた。

 「ん~、ごくろうごくろう」 ロキは、ぶっきらぼうにそう言うと、自分の椅子に座った。エリックは、無言で会釈する。

 ロキは、葉巻を取り出すと指に挟んで、エリックにそれを向けた。少し後ろで待機していた彼は、急いでライターに火を灯す。葉巻から煙が出てくるようになると、彼は再びロキの右斜め後ろに立った。

 5分経った位で、ようやくマナと客人が顔を見せた。部屋に入るなり、マナは、ロキと目を合わせてしまい、胸を揺らせる。オドオドした様子で、客人をロキの前の席に座らせた。

 客人は、見るからに貧乏そうな見た目で、薄汚れたダブダブの衣服を身にまとっている。大きめのハット帽子が顔を隠している為、男か女かはっきりしない。体の大きさから、男ではないかとロキは推察した。

 ロキは、彼を馬鹿にするように鼻で笑うと、「何の用かね?」と訊く。彼は、何も応えない。

 ロキは、再び訊く。「何の用かね?」 

 しかし、返事は帰ってこなかった。

 ロキは、痺れを切らしたのか、葉巻を灰皿に押し付けると、「俺は忙しいんだ。しゃべらないなら、帰ってくれたまえ」と言った。そして、肘置きを叩いて、席を立った。 

 「おい、エリック帰るぞ。とんだ無駄な時間を食わされたぜ」 

 ぶっきらぼうに、エリックの方を振り向くロキの目に衝撃的な光景が映った。

 エリックは、ロキに銃を構えていた。

 「おい、なんのマネだ。銃を降ろせよ」ロキは、荒々しくそう言う。 

 バンッ!! 鈍い銃声の音が鳴り響く。

 ロキの体から、赤い血がどばどばと染み出し始めた。煙を吐いているのは、客人の持っている銃だった。

 

 

 

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