2-3 怠惰なこの世界

「まさかシャーリーさんが【白忌子シニステラ】だったなんて驚きです」


 はむっとホットサンドウィッチを頬張りながら、アンリはキラキラとした視線をシャーリーに向ける。同じ嫌われ者の【白忌子シニステラ】でありながら、英雄と称される彼女に憧れの様なモノを抱いている様だった。


「そんなに意外かなー。沢山いる人類、【白忌子】って名称もあるんだから別にあり得ない話じゃないでしょ」

「そうだけど、俺たちは他に会ったことがないからな。色んな面から驚きなんだよ。その素顔も含めてな」

「なになにー? リヴィってばわたしの美貌に見惚れちゃったの? やだもう~わたしってば罪な女っ!」

「あぁ素直に見惚れたよ。まるでおとぎ話に出てくるお姫様みたいだ」


 恥ずかし気もなく、牛乳を飲みながらいたって普通にリヴィは言う。揶揄っている様子もなく、本当に感じた事実だけを伝えていた。

 それを感じ取ったからこそ、リヴィを揶揄おうとしたシャーリーの頬が赤みがかる。


「あっははー……、まさかそんな反応されるなんて思わなかったなー。シャーリーちゃん困っちゃう」

「私も兄さんと同じ気持ちです! シャーリーさん羨ましいです!」

「この兄妹、感情が直球すぎる……!」


 二人の本心に胸打たれたのか照れまくるシャーリー。

 照れ隠しと言わんばかりに、アンリに抱きつきその顔を隠す。そんな子供っぽい姿にアンリは微笑み、同じ髪色の頭を優しく撫でていた。


「よしよしですシャーリーさん」

「うー! アンリちゃーん!!」


 似ている姿のせいか、その光景はまるで可憐な姉妹の様。ここだけ見ればリヴィよりも血の繋がりがある様にすら見える。


「やっぱりアンリちゃん可愛いすぎる……! こんな妹欲しい……! ねぇ今度の【月霊祭】、一緒に遊ばない!? あ、リヴィもいて良いからさ!」

「なんで俺がハブられる可能性があるんだよ……」

「あのシャーリーさん……。私も是非って言いたいんですけど、事情が……」


 楽しいであろう未来を夢見て満面の笑みを浮かべるシャーリーに対して申し訳なさそうな表情を浮かべるアンリ。

 【白忌子】であるアンリが外に出て正体がバレでもしたら、ギルドの時の様に面倒なことが起きることは間違いなし。

 人類最高の日がぶち壊しになる危惧がありながら楽しむなんてアンリには出来なかった。


「お前も【白忌子シニステラ】なんだから分かるだろ? 平時の時には少しでも自重しとかないと俺たちは生きていけないんだよ」

「ふっふっふー。甘いねリヴィにアンリちゃん。【暴食亭】で出てくる特別パフェより甘い考えだよ」

「なに?」

「どういうことですか?」

「私が着ているこれはなーんだ!!」


 シャーリーは子供が親にサプライズするかの様なこ憎たらしい笑みを浮かべて、羽織っているそのクロークを翻す。

 そこで二人は気付き、シャーリーは即座に答え合わせをする。


「これは着ている人の認識をズラす特殊な外套でね! 長時間同じ人と喋らない限りはその人の記憶には残らないんだ!」

「つ、つまり……それって!」

「そうだよアンリちゃん! これさえ羽織っていれば自由に外に出られるんだよ。アンリちゃんもリヴィも!」

「それをくれるっていうのか?」

「もちろん! じゃなかったらわざわざ見せびらかしたりなんてしないって!」


 碧の双眸をアンリは輝かせる。

 二人にとって望外すぎるこの申し出。このケープマントがあれば今よりずっと生きやすくなること間違いない。喉から手が出るほど欲しいこの代物が手に入るのなら、二人はシャーリーに感謝しても仕切れなかった。

 しかし、これがただのプレゼントではないことをリヴィたちは見抜いている。


「それで、俺たちはそれを手に入れる為に何をすれば良いんだ?」

「……あはは。やっぱり気づいた?」

「流石にわざとらしすぎますよ。いくら同胞だからと言って、そんな特殊な品を貰えるほど私たちはまだ関係を築いてないんですから」

「よっっっっぽどのお人好しじゃないとあり得ないな」

「わたしがそんな人間だとは思わないんだね」

「思いません」

「思わない」


 二人して即断。

 と、言いつつも二人はシャーリーをそう認識しようとはしていた。

 これは単に、出会ったばかりの人を信じないという二人の経験から来ているものに過ぎない。

 この兄妹はまず最初に人を疑ってかかる癖がある。二人を気遣おうと優しく近づき、裏切られたことは何度もあるのだから――。


「ま、そんな境遇なんだ疑い深くはなるよね。その通り、認識阻害のケープマントはわたしの依頼クエストを受領した時点であげるよ」

「受領した時点で……?」


 報酬全てを前払いする依頼なんて、持ち逃げされることを考えたら普通あり得ない。

 逆に言えば、受領した時点でまたは話を聞いた時点で持ち逃げ出来ぬ状況が必ず訪れるということだろう。

 シャーリーの表情は今まで通り快活そのもの。けれど言葉に含まれた重みがどこか違う。

 それをリヴィたちは感じ取り、昨日ギルドからの去り際に届いていたライラの言葉と【称号持ち】という上の立場からの依頼ということを結びつけた。

 

「――なるほど、そこに【福音教」とやらが関わっているというわけか」

「察しがいいね」

「さっきアンリも言ったろ。わざとらしすぎるって。わざわざあんな遠回りしてまで気になる様に仕向けやがって」


 【福音教】はギルドと【称号持ち】しか知らない様な規制されている言葉。普通なら、ブロンズしかも【黒忌子ニグラス】の人間に不要な情報が行き渡るような真似はしない。

 ギルドでは感情で動いてしまったライラだが、そもそもシャーリーが渡すようなことをしなければああも心が揺らぐことはなかっただろう。リヴィたちだって気にも留めなかった。


「【福音教】ってモノをリヴィたちには知っておいて欲しかったんだよ」

「それでしたら別にあんなことをしなくても……」

「それもそうなんだけどねアンリちゃん。人は見たいもの・知りたいものしか信じようとはしないからね。最初に会った時にわたしがいきなり言っても信じないでしょ?」

「まぁそうだな。知らない奴に知らない単語言われたところで、“はぁ?”ってなるだけだな」

「でしょ。だったらギルドの人の反応で知る方が信じやすい。焦り具合からことの大きさが分かるだろうし。好奇心が働いて知りたくもなる。結果、信じるものになると言うわけだよ」

「なるほどな」

「全部、シャーリーさんの手のひらの上だったというわけですか」

「あはは、そんな暗躍みたいなことはしてないけどね」


 二人は納得し、シャーリーはカラカラと笑う。

 シャーリーの思惑が分かったところで、いよいよ本題に入ろうとした。


「それで? 【福音教】ってのは結局何なんだ?」

「“おひさま”を奪うという奇跡を齎した超常の存在に憧れ、神を崇めて己も神に近づこうとするイカれた集団だよ。奴らは“神の為に”というお題目で何でもやる。それこそ人を殺すし、隷機の出現させるし、なにより【神よけの陣アンチエリア】も破壊している人類のもう一つの敵さ」

「【神よけの陣】の破壊ですか!?」


 埒外すぎたその情報にアンリが思わず驚愕の声を上げる。ガタリと動いてしまい、スープの器が床へ落ちようとしたとこをリヴィが素早く掬い取った。

 冷静に見えるリヴィの行動。ただ、それでも内心はアンリと同じ気持ちだった。

 器をアンリのひざ元へと戻しながら、胡乱げな視線をシャーリーに向ける。


「どういうことだ? 【月】はまだ空に浮かんだままだぞ。【神よけの陣】が破壊されたら今頃は――」

「あーごめん、言葉が足りなかった。正確には一部の一部だよ。【神よけの陣】は、人間が無意識に持っている根源的七つの欲求一つ一つを七人の大賢者が利用して作り上げられているってのは知ってる?」

「いや……」

「大賢者が――って言うところは知ってますけど、何を使っていたかまでは……」


 劇にもなるほど語り継がれている大賢者の伝説。けれど、その中に大賢者が何をどうしたかなどの方法論は語られていなかった。

 リヴィたちはおろか、知っている人は【福音教】と同じく限りなく少ないだろう。

 

「まぁ普通に生きてたら知らなくていいことだからね。人の根源的欲求って言っても嫉妬やら憤怒やらの欲望っていう負の面ばかりだし。聞いてて気持ちよくなることじゃないよ」

「そんなものが神に対抗するまでの力になったのか……?」

「そんなものでも、全人類が共通して持っている大きな力の源だからね。君たちだって、怒った時に力がいつも以上に入るってことは良くあるでしょ? だからそんな力の源であるそれら欲求を集約させることで、形而的存在である神への防衛対抗手段になり得たんだ」

「それが【神よけの陣】であり【月】の成り立ち……」

「なんだか話が難しくなってきましたね……」

「簡単に言えば、物理攻撃じゃどうしようもないから概念的攻撃に切り替えた――みたいな感じさ。詳しい原理はわたしもよく分かってないから、とりあえずは人の意志は神にも対抗できるって思ってたら良いよ」


 スケールが大きすぎるシャーリーの言葉たち。

 けれど、人の意志が神にも通用している。その事実を知れたことは、【おひさま】を夢見る二人にとっては僥倖だった。

 ただ、それと同時に【神よけの陣】が人の手によって少しでも破壊されている事実に薄ら寒いものを感じていた。

 神からすれば人類は矮小な生物の一つでしかない。そんな存在の行動にいつまでも煩わされては格が下がるというもの。そう考えると、【福音教】が不敬だとでも言って率先して破壊しにかかったのだろう。

 【神よけの陣】の破壊に成功すれば、【月】の効力減退は免れず最悪の場合はそのまま消滅して人類の終了だ。

 神の役にも立て、降臨させることも出来、自らのアピールになる。まさに最悪の一石三鳥だった。


「それで、そんな【神よけの陣】の一部の一部っていうのは?」

「その言葉通りさ。用心深い彼らは【月】を無くさない為に【神よけの陣】を二重構造にして保険を掛けていたんだよ」

「保険……ですか?」

「そう。【月】の軸たる【神よけの陣】には自身の遺体を媒介として人の欲求の受信装置となり大元の出力源に。もう一つは、大賢者の一人一人から選ばれた人が欲求の一部を受け取って動く媒介として小さな出力源と攪乱の任を担う様にってね。――わたしもその代替者、オルタナの一人だよ」


 そのオルタナという証なのか、シャーリーが首筋を見せてくる。そこには、芍薬が刻まれていた。英雄と呼ばれる彼女。それはまさしく真の意味でもあった。

 七つの大きな出力源と代替の役割を持つ七つの小出力源。合計十四の出力源が二つあることによって【月】は成り立っていると、シャーリーは言う。

 途方もないこの情報開示に、リヴィたちは内心驚くばかりだった。

 それをシャーリーは理解しているが、話はここからが重要だとして一拍置いてから話を進めだす。


「そして百年前、そのオルタナの一人が奴らに殺されたんだ。そのせいで【月】の効力は減退して【夜】が生まれちゃったってわけ」

「【夜】は最初からあったわけじゃなかったのか……」

「その時、生きてた人はどんな思いだったんでしょうね……」


 つまり【夜】の出現もまた敗北の歴史の一つ。百年前、再び始まってしまった光が無い世界に人類はどれだけの絶望を抱いたことか。

 立ち上がれたのが奇跡に近い。

 

「今、奴らが狙っているのは本丸の【神よけの陣】を破壊すること。わたしは活発になっていた奴らの動きを捉えることが出来たから【福音教】の思惑をぶっ壊す為にこの都市にやって来たんだ」

「人類――いや生物の生死の瀬戸際が今ここにあるのか……」


 ここで完全に【月】が無くなってしまえばおそらく人類が立ち上がることはほぼ不可能だろう。

 その後に待っているのは死だけだ。

 なるほど、確かにこんな案件を世に知らしめるわけにはいかない。誰が【福音教】かは分かっておらず、隣にいる人が敵だと誤認すればこれもまた疑心暗鬼から人同士の闘争開始だ。

 立ち向かうにしたって神を背景に持つ様な組織相手に一個人が立ち向かえるわけもない。無駄死にが目に浮かぶ。

 だからこそ、余計にリヴィは訝しんだ。


「――そんな戦いになんで俺たちを巻き込んだ? 俺がエンジェリアと戦ってた時、お前がスルーすることだってできたはずだ」

「あの時も言ったように隷機ミニステラを見つけたら見境なしに破壊しにかかっちゃうんだよねわたしってば。ただ、そこで縁を繋げたかったのは君たちだから――かな。【黒忌子ニグラス】と【白忌子シニステラ】の兄妹なんて珍しすぎるし何より【黒忌子ニグラス】がボロボロになりながらでも本気で戦ってたからね。わたしの為にもこれは縁を結ぶべきだと思ったんだ」

「わたしの為……?」

「そ、一緒に戦ってほしいんだよ」


 その言葉を聞いて、リヴィが真っ先に思ったことは“理解不能”だった。

 【黒忌子ニグラス】はまともに【霊法】を扱えない無能すぎるその特性から、【叛者レウィナ】になる人はいない。なったところで死ぬだけだからだ。

 【死にたがりスーサイダー】とリヴィが呼ばれているのだって、それが理由。傍からリヴィを見れば死にに行っているようにしか思えないのだ。


金級ゴールド、しかも【暴虐姫ブラックサレナ】なんて【称号持ち】がなんでこんな無能を欲しがる。シャーリーが声をかければ一緒に戦ってくれる人なんていくらでもいるだろう」

「兄さんが無能ってのは否定しますけど、私も同意見です。それこそオルタナと呼ばれる方々だって――」

「確かにオルタナは戦ってくれるだろうね。【福音教】を相手取ることも、実力さえあればみんな動いてくれるはず」

「だったら」

「――だけど、その先は絶対に動こうとはしない。この世界に真の意味で神に抗おうとしている人なんていなかったんだから。そこに【叛者】も一般人も関係ない」


 諦観。そして怒りを孕んだシャーリーの静かな激情がリヴィたちに叩きつけられた。

 先程までとは打って変わって鋭さを持った金色のその眼光に二人はたじろぎながらも、シャーリーの言葉を否定すべく口を開こうとするが、


「だってさ君たち、隷核石が無くなって今の人類がまともに生きていけると思う?」

「あ」


 その言葉で理解出来た。

 隷機を狩り続けて生きている【叛者】。そこから齎される隷核石などによって生きる一般人、商売人、農業者、畜産者、職人などなど――誰も彼もが生活と生きる術を全て隷核石に委ねている。

 それが無い生活にはもう戻れない。

 何せ人類は、最初の発明とされる火の起こし方すらも忘れ去っているのだから。


「勿論、全員が表立って考えているわけじゃないだろうけどね。でも無意識下では思っているよ。神を殺せば困るのはこっちだってね。六百年経って変わったのが悪化なのがその証拠さ。みんな、やる気がないんだ」

「ですが、少なくともギルドの人たちは……」

「ギルドが見ているのは現状維持だけさ。人類がこれ以上減らない様にする為の――ね。それ自体が悪いとは思わないけど、その先の未来を見ていない以上かれらを頼りにすることは出来ない」


 人類の大半が見ているのは【今】だけ。

 その上、人の意志が神への対抗手段ならそれを失ってる今じゃ絶対に勝てない。

 人類が神と同じ土俵に立てたのは、【月】の完成が最初で最後だった。

 それもまた、今となっては崩れ去ろうとしている。そうなれば待っているのは滅亡だけだ。


「わたしはこんな現状も滅びる未来も嫌だ。【白忌子わたし】を受け入れてくれた村を滅ぼして、お母さんたちも殺した【福音教】と隷機ミニステラは根絶やしにして、絶対に神を討ってみせる」


 彼女の口から溢れる憎しみの怨嗟。ナニモノにも怒りを覚えている様なその心持ちに、体が思わずぶらりと震えていた。

 敵がのうのうとのさばる事を許しているこの状況があるが故に、その怒りの矛先は何もしようとしない怠惰な人類にも向けられているのだろう。

 そうなるだけの凄惨な過去を彼女は送っていた。


「だけど、一人で戦おうとするほど過信もしてない。だからわたしはわたしだけの仲間が欲しいんだ。本当に神を討つ覚悟を持った人を」

「それが俺たち……」

「そう。過酷な過去と現在を持ちながらそれでも一心に前を向いて戦い続けている君たちがわたしの理想さ」


 込められたシャーリーの想いに【黒忌子】も【白忌子】も関係ない。

 重要視しているのは、未来を見据え続けるその意志だけだった。


「多分、戦ってたら人に恨まれることもあると思う。もしかしたら敵対するかもしれない。——それでも良かったらどうか、わたしの仲間になってください」


 ずっと見せていた快活さは鳴りを潜め、切実な願いだけが込められたその言葉。

 頭を下げている彼女の姿は、祈りと共にあった。


「関係ないな」

「——ッ!」


 放たれたリヴィの否定の声。

 シャーリーは体を強ばらせると、下を向いた顔には諦めが残る笑みが宿った。


「そう、だよね……。わたしの都合に君たちを——」

「勘違いするな」

「え……!?」


 顔をバッと上げ、シャーリーは顔に驚愕を貼り付けた。

 希望が宿り始めたその金の双眸は潤みながら、優しく笑みを浮かべるリヴィとアンリを捉えていた。


「俺たちの戦いに誰がどう思おうが関係ない。最初から俺たちは誰かのために神を殺すなんて思いで戦ってないからな」

「そうです。私たちは【おひさま】を見るっていう二人だけの約束のために戦っているだけです! 私の力は私と兄さんのために——」

「俺の力は俺とアンリのために。戦う理由と力の使い道は俺たちが決めるんだ」


 常夜の中でも【おひさま】を希う。

 そう心に刻み、一緒に観るためにリヴィたちは戦っている。

 他の理由を入れる隙間なんてどこにもなかった。


「じゃ、じゃあ!!」

「仲間になる。どうせ人に恨まれるなんて今更だし、目的は一緒だからな」

「まぁ、本当はこっちからお願いしたいくらいですよ。なにせ私たち、どう神を殺せば良いか分かっていなかったんですからね」

「シャーリーが仲間になった今が【おひさま】を観る絶好の機会。【福音教】を討ち倒して、その隙に【月】っていう最大の盾を最大の矛にでもして神に突き立てるぞ」


 ひたすらに前だけを見据える二人の姿勢。そこに諦めなんて一切ない。

 そう、二人の中に諦めなんて言葉はない。そんな言葉があったら今頃この場になんていなかっただろう。

 蔑まれ、体を傷つけられ、心をも打ち砕かれも二人で立ち上がって生きてきたのだ。

 誓いは絶対に叶えてみせる。あるのはその一心だけだ。


「やるぞシャーリー。まずは【福音教】の思惑の阻止だ」

「頑張りましょー!! それで一緒に【月霊祭】を楽しむんです!」


 シャーリーに差し出される、鍛錬で硬くなっている強きと幼く小さな宿っている優しき手のひら

 素直すぎる二つのがシャーリーの心にも届いた。

 自然と浮かぶ心からの満面の笑み。

 ここに三人の心が通うのだった。


「うん!! よろしく、リヴィにアンリちゃん!!」

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