異世界へ飛ばされた殺戮者~死刑が執行されたと思ったら陰謀で無敵の身体と魔王並の魔力を手にし異世界生活スタート~

@jioken

第1話 異世界へ飛ばされた殺戮者

「それでは判決を言い渡します。被告人、田中翔弥を死刑に処す……」



「速報が入りました。本日、連続殺人容疑で逮捕された田中翔弥容疑者の裁判が執り行われました。田中容疑者はおよそ五年に及び十七人の殺害の関与がかけられております。公判では死刑判決が言い渡されました……」




 当然だな。

 十七人も殺したんだ。

 俺は死刑判決を受けた。

 素直に受け入れよう……。



 何日経っただろう。

 俺がこうしているうちに犯罪者はどんどん増えてるんだな。



 最後に妹の顔が見たかったな……。

 俺のせいで迷惑かけるかな。



 特に何も考える事もなく、なにもする事なく時は過ぎていった。



 いつもとは違う時間帯に足音が響いてきた。

 ついに今日なのか……。

 俺は覚悟を決める。



「おい、九〇六番! 面会だ」

「は?」

「だから面会だ、早く出ろ!」



 面会だと。

 俺にはもう面会に来るような奴はいるわけない。

 一体誰が来たんだよ。



「入れ!」


 俺は面会室へ入る。

 向こう側には日本人ぽくない、まるで天使のような女神のような女性が座っていた。

 見たことない女だな。



「はーい! 田中翔弥君、元気かい?」



 俺は呆気にとられた。

 なんだこの女は


「はぁ、まぁ体調は悪くないです」



「うふふ、それは良かったわ! それじゃ座って!」

「はぁ、それじゃ……」



 俺は椅子に座る。

 目の前の女に見に覚えがないか思い出すが、やはり知らん。




「突然ごめんね、私はこういう者よ!」



 女は名刺を見せてきた。



「月刊人類、編集部、神作世界さん?」

「そうだよ! 世界ちゃんって呼んでね!」



 絶対偽名だろ……。

 聞いたことない出版社だな。



「実は今度犯罪者の特集やることになって、お話聞かせてくれる?」

「はぁ、答えられる事なら……」



 そういえば人と会話するのなんか久しぶりだな。

 そんなに嫌な気はしない。



「それじゃ単刀直入に聞くけど、何で連続殺人をやったの?」

「あいつらが悪だからです」



「あいつらってのは殺された人よね、どうして悪なの?」

「あいつらは許されない事をしたんです、それを知ってしまったら俺はやるしかない」



 その後約三十分に及び、女は俺の殺人論を聞いてくれた。

 この事をこんなにも話したのは初めてかもな。



「ありがとう、参考になったわ! また会いましょう!」

「俺が生きてたらいつでもお会いしますよ」



 そう言うと俺は面会室を後にした。

 その翌日、俺は死刑になった。



「おい、九〇六番! 出ろ」

「はい」

「今日がその日だ」

「分かりました……」



 俺は目隠しをされて、移動された。

 車にも少し乗ったのだろう。

 少し離れた施設に連れて来られた。



「それじゃこの椅子に座って」

「はい」



 俺は知らない部屋の椅子に座らされる。

 そして腕や頭、足に器具が取り付けられる。

 これは電気ショックの器具なのか……。



 俺は自分の死を受け入れ、刻々と待った。

 すると扉の開く音がした。



「うふふ、それじゃ田中翔弥君、刑の執行を始めるわよ」



 女の声?

 聞いたことがあるような。



「分かりました、お願いします」

「それじゃ行くわよ、次の世界では精々頑張りなさい」



 何かのレバーを押す音が聞こえた。

 その時頭から身体までがフワッとなり意識がなくなった。

 俺はようやく死んだんだな……。






 俺は目を覚ました。

 目を開け、回りを見渡すと、辺りはモヤに包まれていた。



 これは死後の世界?

 死後の世界というには幻想的だな……。



「あ! 良かったですぅ、目を覚ましましたね!」



 突如綺麗な声が直接頭に聞こえた。

 なんだこの声は、どこにいるんだ!



 するとモヤの中から、天使の羽根を持った、おそらく天使が目の前に立っていた。



「天使だ!」

「良かったです、そうですぅ、私は天使ですよ」



 なんて綺麗なんだ。

 今にもその身体に飛び込みたいぜ。



 いや、待て待て。

 死んだとはいえ、そんな事は俺の理性が許さんぞ。



「あなたは死にましたけれども死んでません、これから別の世界へ行ってもらいます」



「は?」


 何言ってんだ、この天使。

 アニメ見てたからすぐピンと来たが、まさかそんな、異世界転生なんてあるわけない……。



「だから、あなたはこれからぁ、異世界に飛んでもらいます。実はあなたは選ばれたんですよ!」



「マジですか! 俺が異世界転生! 行ったら魔法とか使えるんですか?」



「頑張れば使えると思いますよぉ、とりあえず職種だけ決めちゃいましょうか!」



 そう言うと天使は箱を取り出した。


「はい、どうぞぉ」

「あの、何ですかこれは……、」



「箱の中に紙が入ってて、それに書いてある職種があなたの物ですよぉ」

「何でここだけアナログなの!」



 まぁいい……。

 これが夢でも現実でも、異世界に行けるんなら。



「俺の職種はこれだ!」

「なるほどぉ、そう来ましたか……」

「あれ、この紙、何も書いてませんよ」



 俺は白紙の紙を天使に見せた。

 しかし天使は当然のように続ける。



「それでは職種も決まった事ですし、異世界に行っちゃいましょう!」

「いや待て! まだ何の説明も!」



 俺が言いかけた時、足元に大きな穴が空いた。

 俺は落ちる。



「は?」


 俺が気づいた時には遅かった。

 穴の下には限りない大陸があった。



「あ~~! ヤバイ、死ぬってこれ、高い!」



 高度は一万メートルはあるだろう。

 人間なら即死だ。



「そうだ、魔法! 何か使えないか」

「出でよ魔法! 集まれ魔力よ! ファイヤー! ライトニング!」



 思いつく限りの厨二病単語を叫んだ。


「邪眼発動! 地獄の業火で焼き尽くせ、ボルケーノ! 我の声を聞き、我と共に戦え、出でよタイタン!」



 もう五百メートルくらいだろう。



「チキショー、せっかく異世界来たのに! もう死んじまうのかよ!」



 ドゴォーン!

 辺りに落下音が響き渡る。



 俺は閉じていた目を少しずつ開ける。

 上には綺麗な青空がある。

 顔を上げ、身体を起こしていく。



 身体はなんともない。

 これだけの高さから落ちてかよ。

 なんてご都合主義なんだ……。



 辺りにはゴツゴツした岩場が広がっている。

 これからどうするか。

 とりあえず回りには何もなさそうだ。




 俺は平坦な道を歩いていく。

 ゴォーー

 大きな音が近づいてくる気がした。



「キャーー!」


 遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。

 俺は声のする方へ走り出した。

 すると岩場の影から金髪美少女が飛び出してくる。



「キャッ!」

「うわっ!」



 目の前に現れた女に一瞬見とれた。

 が、後ろから追ってくる物を見て一瞬でその気が失せた。



 なんだありゃ……。



「助けて下さい!」

「ちょっと!」



 女は俺を置いて走り出す。

 俺は後ろを振り返り、すぐにその後を追う。

 何でかって。

 後ろからバカでかいミミズが追っかけてきてるからだよ。



「ゴギャーー」

 ミミズは唸りながら俺たちを追ってきている。



「ちょっとすみません! あれは何ですか!」

「ハァハァ、あれはモンスターワームです、とても獰猛なモンスターですよ!」



「何で追われてるんですか!」

「ハァハァ、私にも知らないわよ!」



 モンスターって、体長三十メートルくらいあるぞ……。

 こんなの序盤で当たるモンスターじゃねぇよ。



「ちょっとあなた、あれ何とかできないの?」

「はぁ? 何で俺が?」



 だって俺はまだ来たばかりだぞ。

 魔法とか、スキルとか使えれば話は別だが。



「だってあなた転移者でしょ?」

「えっ?」



 あれ……。

 これは転移が認知されてる世界なのか。



「何で分かるんだよ!」

「見りゃ分かるわよ! 転移者なら力が備わっているはずよ、何とかしなさいよ!」



 この女……。

 まぁ良い、元々は死んだ身だ。

 やれると言うなら、やってやる。



 俺は後ろを振り返る。

 デケェ、恐ぇ。

 くそ、とりあえず一発いれてやる。



「やっちゃいなさい!」

「くらいやがれ、バケモノ!」



 モンスターワームに拳を思いきりあてる。

 ミミズは一瞬動きが止まる。

 そして目が合う。


 あれ、これマズイような……。

 ミミズの口が目の前に来ていた。


 パックン。

 ゴックン。


「キャー、あの人食べられた!」



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