推しの推しはどんな推し?

サムライ・ビジョン

イッチアザーな関係性

「はうー…裕也ゆうやくんマジでもう…」

私が見ているのは、お気に入りの俳優さんが出演するドラマの公式アカウントだ。若くてスタイルがよくて、「白馬の王子様」という言葉はまさにこのような人物を意味するのだろうと思う…

ドラマでは熱血で真面目な若手刑事を演じているのだが、公式アカウントにアップされた写真には、共演者とともに笑ってピースサインをする彼が映っている…

役に入っているときはかっこよくて、撮影の裏側では可愛くて…うちの子ったら、もしかしなくても最強なのでは?

もう一回、見逃し配信みようかな…そう思った矢先に、私は大事なことを思い出した。


(そろそろ始めなきゃ…)


★ ★ ★


「ねぇ、あの人って赤坂裕也あかさかゆうやじゃない?」

「え!? …いや、似てるけど違うよ」

「えー? 絶対裕也くんだよ」

「違うと思うな〜 背も低いし」


違わないんだよこれが…俺の背が低いのは元からなんだ。

まったく…コンビニで甘いもの選んでるときが、仕事終わりで「二番」目の楽しみだってのに、そのコンビニでも身長をイジられて意気消沈するとは…


…まぁいいや。これから「一番」の楽しみが待ってるんだから! 俺は先ほどよりも帽子を深くかぶり、マスクの位置を高くしてコンビニを出た。


マンションに戻ってお風呂の栓を抜き、手を洗ってうがいして…部屋着に変身!

(よっしゃ! 動画あがってるぞ!)

再生ボタンを押し、流れる動画を観ながら…さっきコンビニで買ったストローのコーヒーとロールケーキを取り出す。


「ど〜もゆきりんです! さっそく始めていきましょう、バケモン実況パート3〜!」

バケットモンスター、縮めて、バケモン…

人気ゲームを実況しているのは、ゆきりんという女性ヨーチューバーだ。

ピンクの目隠しをしていて素顔は分からないが、黒のセミロングと優しい声。それからこの…「膨らみ」…絶対美人に違いない。


「いきなりですが質問コーナー!」

実況中、彼女はコメント欄の質問とその答えを喋り始めた。


「彼氏は…残念ながらいないんですよぉ…」

いいことを知ったぞ。


「今までで一番面白かったのはぁ…やっぱりあれですね! モンスターバッカー!」

モンスターがわんさか出てくるやつな。


「好きな男性のタイプですか?」

おー…良いこと聞くじゃないか視聴者…




「私、俳優の赤坂裕也さんの大ファンなんですけどぉ…」

…ソファが汚れてしまった。ついコーヒーを強く握っちゃって…

俺? 数ある芸能人の中で俺いくぅ? 俺いっちゃう!?

いっちゃったか〜! あはは〜!


「はぁ…」


★ ★ ★


「は〜あ…」


★ ★ ★






「「うちの推しサイコー!!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

推しの推しはどんな推し? サムライ・ビジョン @Samurai_Vision

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ