宇木先生
「…はあ。しょうがねえなあ。」
どっこいしょ、とベッドから起き上がる。
おもむろに、パソコンの電源を入れる。
「何をするのじゃ?」
「宇木先生に聞くんだよ。」
「宇木先生とな?」
「大抵の事は何でも知ってる奴が、このパソコンの中に居る。」
「偉大な者がおるものじゃのう。」
「その名を宇木ペディアと言う。」
カチカチとマウスを操作する。
「えーと、名前は…」
「だ…ちゅ、中日如来じゃ!」
「中日如来ね…えっと、そっちのは…たしか、」
「ふ…可動明王だ!」
「そうそう、可動明王で…それで、そっちの、」
「儂の事は知られてはおらんじゃろうが!い、一応、般若っ菩薩じゃ!」
「般若っ菩薩ね。検索っと。なになに…先ずは中日如来は、真言密教の教主??って何や。検索っ。一宗一派を開いた人。教祖??宗祖??分からんな。検索っ。…宗教もしくは宗教集団を創始した信仰上の指導者を教祖という…なるほど。それで、真言密教ってのは、検索っ…大日如来の秘密真実の教法をいう…。秘密真実の教法って何?」
「密っ教の経典を書いた事はあるのじゃ。良くなればいいなあと思ってやったのじゃ。」
「へえ、すごいな。俺、今歴史の当事者と直に喋ってるのか。ここに書いてるのって本当なんだな…」
「本当なのじゃ。」
「へえ…じゃあ、ここに書いてある通り、真言宗の本尊になるんだな?」
「それは、知らんのじゃ。」
「いやだって、ここに…ちょっと待てよ。そもそも、真言密教と真言宗って何が違うんだ…検索!…真言宗は、弘法大師空海が平安時代初期に大成した真言密教の教えを教義とする教団…なるほど…それで、本尊ってのは…検索っ!仏教寺院や仏壇などに最も大切な信仰の対象として安置される仏像・経典・仏塔、お守りとして身辺に常時携帯されるもの、仏や菩薩などの彫刻・絵画・曼荼羅(まんだら)・名号などをいう…」
「坊主に請われて、曼荼羅に描かれることは了承したのじゃ。呼ばれたら来て欲しいと、約束したのじゃ。」
「ふうむ。じゃあ、曼荼羅に描かれてるから、真言宗の本尊にはなるわけだ。と、なれば次は、真言密教の教主って書いてたけど、宗教集団を創始したとかではないんだな?」
「それは、知らんのじゃ。真言密教と、真言宗自体、儂は知らんのう。」
「中日如来自身が能動的に、真言密教や、真言宗に関わったわけではない…坊っ主にでっち上げられたってことか?」
「出鱈目なのじゃ。」
宇木先生!
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