あたしの彼はフリーター☆

山下 巳花

① 合コンの誘い

紅美くみ、おはよー。いきなりだけど・・・明日の夜、空いてるー?」

 金曜の朝。

 窓際に座ったあたしをみつけ隣の椅子に腰掛けたりりあが、突然訊いて来た。

「んー・・・用件によるかな?」

「どういう意味ぃ?」

 りりあはポカンとした表情であたしを覗き込んだ。

「りりあの用件によっては、空いてるし。用件によっては、空いてない」

 あたしはそう言ってりりあに微笑み掛ける。

「あ。そういう事?」

「そういう事ぉ~」

 一限目の授業の準備をしながら返事をするあたしに、りりあは身体を乗り出した。

「合コンだよ~。一枠、空きが出ちゃったんだぁ~・・・暇でしょ?」

 りりあはドヤ顔をしたが、あたしも食い下がる。

「んー・・・相手は学生?社会人?」

「勿論社会人っ!そこそこの企業みたいだよー!」

「マジー?!」

「マジっ!」

「行く行く~~!社会人のなら行くっ!」

 あたしは即行で返事をした。

 途端、前の席の男子が呆れ顔であたし達を振り返った。

 あたしとりりあは、お互いの顔を見合わせ肩をすくめた。

 

 ふと窓の外に目をやると、常盤色ときわいろに輝く葉桜がさわさわと揺れているのが遠目に見えた。

 あたしはそのまま視線を上げる。

 鮮やかなスカイブルーの中に、ハート型をした真っ白な雲がぷかりと浮いている。

(平和だなぁ~)

 反対隣を見ると、ケータイをいじっているりりあと目が合った。

「今、時間と場所、チャットしたから」

「ぁ・・・うん!ありがとっ!」

 あたしは早速ケータイを確認した。

『18時

 ダイニングバー/月下美人』

 見ると、時間と場所が書かれたその下にURLが貼られてあった。

 アルファベッドと数字の羅列をタップすると、店のホームページが出てきた。

 そこには、スタイリッシュな店の内観とカラフルな料理の写真が並んでいた。

「すごっ!めっちゃお洒落綺麗な店じゃ~ん!」

「当たり前じゃないのぉ~~社会人との合コンだよ!」

 少し興奮気味なあたしに、りりあはもう一度ドヤ顔を向けた。

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