推しを運ぶもの
酒井カサ
第『配』話 君にお届け
――配達パートナー。
それは僕にとって天職を意味する言葉だ。
高校と予備校の空き時間に取り組めて、自分の頑張りが成果に直結し、最小限のコミュニケーションで完結する。
なにより親や高校にナイショで稼げるってのが最高っ!
教師たちは「バイトはするな。勉強だけしておけ」なんて馬鹿げたことをいうが、それは土台無理な話だ。だって、推し活が勉強のモチベであり、充足したオタ活ライフにはお金が必要ってわけ。だから、配達パートナーは”自称”進学校に囚われた哀れなるオタクに対する救済措置といっても過言じゃないね。マジで。
けど、今日のは正直外れクジ。だって、お届け先が臨海部にそびえるタワーマンションだったから。あそこは一度、立ち入ったことがあるが内部構造がダンジョンみたいでマジヤバい。三つのエレベーターがそれぞれ別の階にしか止まらないとか、どんなセキュリティなんだよ。時間内に届けるには階段ダッシュ以外方法がない。ひ弱な文系(私大志望)には余りにも酷な試練だ。ここに届けるのが嫌だからわざわざ牛丼チェーンの前で依頼を待っていたのに。
でもまあ、注文者が同志だったので許してあげることにした。というのも注文が僕の最推しVtuber『榎本マツリ』とのコラボ牛丼だったから。なかなか見る目あるじゃないか。一体、どんな奴が頼んだのかちょっと気になるかも。そのまま推しトークができたら楽しいだろうな。さて、32階まで階段ダッシュといきますか!
推しを運ぶもの 酒井カサ @sakai-p
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