第8話 ケンタウロスの襲撃!!


「・・・た・た・助けてェェェェ・・・。」



 ユリアンナが叫びながら、全力で走ってきた。

 彼女は私とリリアナをバヒュンッと追い越して行く。


 ………はい?

 私達に気が付かないほどの取り乱し様だったけど。何だろ?


 ユリアンナが全力で走り去った後の風圧で、髪型がグシャグシャになったので、手直してしていると次にポーシャがやはり私達に気が付かずに、全力で通り過ぎて行く。



「アタアタアタ!・・ヤ・・ヤ・ヤバいですぅ。」



 ユリアンナより、やや風圧は少ないものの、やはりグシャグシャになった髪型を手直しすると。何やら危険な禍々しい気配を後方、2人が来た方角から感じた。



 2人より少し遅れて、ドシンッドシンッドシンと大地を揺るがす、重そうな音が気配と一緒に近付いてきた。




 ブモォォォォォォォォォ!!



 何アレ!?


 大きな雄叫びと共に頭に2本の大きな角を生やした、牛の顔なのに上半身は人間の体、下半身は馬の体の魔獣が現れたのだ。




「ケンタウロスよ!!」


 リリアナが叫ぶ。


 あたしはケンタウロスの余りに大きな体と威圧魔法のような禍々しい気配に圧倒され、アワアワと足がすくんでしまった。


 ケ…ケンタウロスって、牛の顔だったぁ?こんなんだったかしら?



「ホラ、逃げるわよ。」



 再び、リリアナに手首を掴まれ、ユリアンナ達が逃げて行った方角に向かい逃げ出した。


 私は震える足がもつれそうだったので、咄嗟に足に強化魔法をかけた。手にも強化魔法をかけると、リリアナを脇に抱えて速度を上げた。


「オワッと・・う・うへ?」


 リリアナはビックリしたようだったが、気にせず速度早め、ユリアンナ達の姿を追った。

 途中、ポーシャを拾い、リリアナと反対の左手で抱える。



「こ、こっち!!」


 ユリアンナは洞窟の手前でふり返り私達の姿を確認すると、洞窟へと手招きした。


 何も考えず、私達は大きな洞窟の中へと逃げ込んだ。所が、ケンタウロスも足が早くて、洞窟の中まで追いかけてくる。洞窟の中はデコボコな岩や泥濘で滑りそうになったので、私は2人を降ろした。ケンタウロスは体が大きくて、洞窟の中は狭いのだろうと、岩をドガンッと蹴り上げたり、殴りつけ岩を壊しながら追いかけてくる。なんて奴だ!!岩が崩れていく衝撃で小石がこちらにも飛んでくる。このままでは追いつかれてしまう。


 私は立ち止まると、ケンタウロスに向かって雷の魔法を繰り出した。



「雷の舞!!」



 狭い洞窟の中で唱えるのは危険だったけど、一時的に奴を縛りつけて置くには仕方がなかった。


 轟々しい雷の落ちる音と共に、辺りが真っ白な光に包まれる。まずい、目が眩む。


 ケンタウロスは体を突き抜けた雷魔法の効果で暫く体が動けなくなった様だった。目が眩んで周りが見えにくいながらも、私は皆と慌てて駆け出す。


 洞窟の中は暗くて、何も見えない。ライト代わりに光魔法で辺りを照らしながら奥へと進んでいく。

 思ったより広く、深い洞窟のようだった。兎に角、ケンタウロスから逃げる為には奥へ行くしかない。


 それにしても随分深いし、段々下に降りていってない?このまま下に降りていって、突き当たりになったらどうしよう。ケンタウロスが正気になったら、また追いかけてくるのではないかと今更、恐怖にかられるが、奴が正気にかえって引き返すかもしれないし、そんな望みは少ないかもしれないが、今は奴との距離をとる事が最善の気がしていた。


 それが後に間違いだったと気が付いた時は遅すぎだったのをこの時は思いもしなかったのだ。

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