第12話 星見さんの行方
久しぶりに帰った師匠の家は少しばかり散らかっていた。平日はサラリーマンとしてどこかの会社で働いている師匠は、まだ帰宅していないようだった。私の部屋のテーブルには、星見さんのペンダントが、以前私が置いた通りの形で置かれていた。私は、そのペンダントを首にかけた。
軽く掃除をした後で、夕食の準備をしながら師匠の帰りを待った。午後七時。ちょうど夕食の準備が出来たところで、丘の向こうに車が停車する音が聞こえた。
「ただいま」
師匠と私は同時にそう言って笑いあった。
「どうです。占いの魔法は」
「はい。バッチリです」
夕食を食べ終わった後で、私は本題を切り出した。緊張で、喉が渇いていた。水を飲もうとしてコップを持つと、手が震えているのがわかった。
「師匠。師匠の得意な魔法は変身ですよね」
「はい?」
「誰にでも、変身できるんですか」
「ええ。私の場合、変身する前にその人に触る必要があるんですが」
「率直に質問します。今の師匠の姿は、本来の師匠の姿なんでしょうか。いえ、もっと率直に質問させてください。師匠は、星見さんなのではありませんか?」
私の占いを信じるならば、星見さんはこの家にいる。ならば、目の前の師匠が星見さんであるとしか考えられないではないか。そして、師匠は変身の魔法使いなのだ。
「違うよ」師匠はあっさりと言った。
「自分が自分であることを証明することは難しい。でも、自分だけはそれを知っている。私は星見さんではない。星見さんは、そこだ。その中にいる」
師匠は、私を指さして言った。私の中に星見さんがいるの?
「そのペンダント。妖精の石の中に、星見さんは、いるんだ」
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