第10話 「第一高校学生代表」
「はぁ、あんまり目立ちたくなかったのに。まぁ、これも義妹達のためか」
迫りくる攻撃を躱しながら、的確に急所をついて野獣共を葬っていく。
かなり手加減はしているから命に別状はないだろう。
「くっそ! なんだよこいつ! 落ちこぼれの癖に!」
「こうなったら!」
第一高校の数名の生徒が、アークを発動させようとしている。
なぜ、アークを発動させようとしている事が解るかというと、アークの発動時には術式が現れるからだ。
まぁ、これは俺にしか見えないらしいが……。
「おいッ、一般人に力を使うなんてまずいだろ!」
「だまれよ! 落ちこぼれのサンコーの奴に舐められるわけにはいかねーだろうがッ! そんな事知れ渡ったりでもしたら、俺らが
あの人?
察するに彼らの親玉みたいなものだろう。
「一般人にアークを使用することは禁止されているんじゃなかったのか?」
火魔法、風魔法、身体強化……どれも中級以下の大した事ないアークだが小型のフィアを倒せるほどのそれは一般人にとっては脅威なのだ。
だから、よっぽどな事がない限り一般人にアークを使う事は禁止されている。
案の定、アークを発動させた数名の生徒以外は、この状況にやばいと思ったのか逃げる様にこの場から去っていく。
「うっせええええ! そんなもん親の力でどうにでもなんだよおおおお!」
「そうか、親の力で何とかなるものなのか。だが、それを俺に向けるという事はお前達は俺に対して殺意を持っている、という事でいいんだな?」
「あったりめええだろおが! ぶっ殺してやんよ!」
「そうかぁ。なら、お前らを殺してもなんの問題もないんだな」
少年らは俺に敵対した。殺すとまで言っている。
つまり、奴らは俺の敵だ。
敵は殺せ!
こんな奴らに全力を出す必要はない。
俺は少しばかり力を解放する。
「あぁ……あぁ……」
俺の力にあてられた少年らは、顔を真っ青にして小刻みに震えている。
どうやら、やっと力の差が分かったらしい……が、それはそれ、これはこれだ。
俺に敵対した。つまり、奴らは死ぬ運命なのだ。
「すとおおおおおおっぷッ!」
いざ、という所で俺の腰を柔らかいものが包み込む。
「へっ?」
俺より頭一つ小さい日本人形の様な艶のある黒髪。
そして、抱擁力の塊と言わんばかりの二つの母性。
「ストップですわ!」
「えっと……君は?」
「だ、代表ッ……」
「代表?」
「そうですわ! わたくしは、第一高校生徒代表の大野内姫乃ですわ! それよりも栄えある第一高校の生徒でありながら、一般人相手に能力を使うなど、言語道断! 恥を知りなさいッ」
そう言って、大野内姫乃はこちらにビッシと扇子の先端を向ける。
「「す、す、すいませんでしたああああ!」」
大野内姫乃に叱咤され、俺に向けてアークを発動させようとしていた第一高校の生徒達は大慌てでその場を去っていく。
何が何だか分からないけど、拍子抜けだな。
「では、俺も」
「ちょっと、貴方」
「ん? 俺に何か?」
「別に見返りを求めて割り込んだ訳ではないのだけど、お礼の一言くらいあってもよくて?」
「お礼? 何に対しての」
「わたくしが間に入ってあの子達を止めていなかったら、貴方、あの子達の能力でひどい目にあっていたのよ?」
「ひどい目? いや、それはあり得ないね。彼らは高々中級以下のアークマスター。何の驚異にもならないよ。逆に命拾いしたのは彼らだよ」
「なっ……言いますわね。他校の生徒が我が校の生徒に対してそこまで言うなんて」
「事実を述べたまでだよ。では、俺はこれで」
用事は済んだ。
流石に転入初日に遅刻は色々と気まずいので、急いで学校に向かおうとする俺を大野内姫乃がちょっとお待ちと再び引き留める。
この人……俺に向けてアークを発動している。
瞬時に大野内姫乃のアークを読み取る。
これは、
対象者を魅了して虜にするやっかいなアークだ。
まぁ、俺には通用しないけど。
「遅れるから行っていいかな?」
「なッ!? あなた……」
「むやみやたらに力を使わない方がいいよ」
「あなたお名前は?」
「カイト、鷹刃海人」
「鷹刃って……なるほどそう言うことでしたの。分かりました。では、また会いましょう、海人」
「いきなり呼び捨てって……まぁ、いいけど」
今度こそ、俺は学校に向う。
「ふふふ、面白い少年ですわね。鷹刃海人」
そう言って、拡げた扇子で口元を隠しながら妖艶に嗤う大野内姫乃の視線に気づくことはない。
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