推し活
もと
みんな死ぬ。
推しが宇宙で爆死した。
次の推しは幼なじみの盾になって死んだ。
次の推しは最終回まで生き残ったのに最後のページで死亡フラグが立ちまくって終わった。アニメ化されても変わらないだろう。
次の推しは失明して片腕を切り落とされて闇堕ちして主人公に殺された。
イヤだ、もう……もうイヤ、イヤ、イヤ。
なんで私の推しすぐ死んでしまうんんんんんー!
こんなに苦しい思いをするならもう誰も好きにならない、推しなんて作らない。
風や木や草花になりたい。
何も感じたくない。
十年伸ばした髪を切って少しでも幸せになって欲しくて捧げ祈り呪ったのに。
推しが世界を滅ぼしかけて主人公に追い詰められた時も、私が土下座で謝ったりしたのに。
誕生日にはケーキを用意して、誕生日イラストを描いて、誕生日グッズを並べて、死ぬ程集めたラバストと缶バッジ並べてTwitterに載せたりしたのに。
なんで私の推しすぐ死んでしまうんんんんんんんんんんー!
夢になりたい、モブになりたい、推しの目に映る壁になりたい、通り道の石になりたい、吸われて吐かれる空気になりたい、否、そんな贅沢申さぬよ神様仏様女神様、推しと同じ世界に生まれたい、生まれるだけでいいから、生まれたら即死んでも悔いは無い……いや、それは嘘だ。
んなもん嘘に決まっておろう。
リアルで一番妄想してたのは性欲の捌け口として穴になる事だったはず。
同じ世界に生まれて死ぬだけでも幸せなんて無理、ただの無害ヲタアピールのテンプレ。
どうせなら出会って二秒で合体、無茶苦茶に犯してくれ、誰にも渡さん、同担の前で中出し百連発したい、しゃぶり尽くしてやる、私だけ愛せ、愛されなくてもいい、むしろ愛してないのに私を犯してイッて嫌な顔して欲しい。
逆も、イキそうな時に動くの止めて泣かせたい、いやそれ泣かねえよ普通にただ萎えるわ、バカじゃねえのあのマンガ、でも推しに電マはあててみたかった、中出しさせながら無限に突っ込むやつ試したかった。
とか思ってたのに。
私、本当に死んで本当に転生したら草っぽい。
草、なぜそこなの。
確かに草花とかになりたいと願った、半分本気だった、本当に辛かったんだもん。
でも神様仏様、もしくは転生を司る女神様よ、アンタは知ってたはずだが?
絶対エロい妄想してる時間の方が長かったし、ぶっちゃけ推しが死んだ日も私の脳内では血も精子もドクドク流しながらヤッてた。
叶えてくれるとこは草花違う、そこ違う、そこじゃない絶対。
心底願ってた方にしてよ。
せめてそこは推しのオンナにしてよ、百歩譲ってモブでしょうよ。せっかく死んだんだからクソみたいな超絶転生やってくれよ。
なんで草だ、どうしてこうなった。
なんで死んだの私、迂闊に死ぬなよ私。
人間だった頃に色々と願ったり祈ったり祝ったり呪ったりエロったりしてたはずだ。
なのにそれよりも強かったのか、あの時の草花になりたいという絶望は。
推し怖い、本当に怖い、もう推しなんて作らない。
種から芽が出て物事を考えられる様になってからブツブツ言ってる、ずっと言ってる。
あ、そうだ私死んだんだ。
ローターとかバイブとかどうしたんだろう、毎回洗ってたからキレイはキレイだったと思う。お母さんが片付けたのかな、親不孝者だわ私。
エロ同人はデジタルで集めてたから大丈夫、いや大丈夫じゃないか、スマホの連絡先ぐらい見るだろうし、ついでに色んなアカバレしてるかな。
意外と恥ずかしいとか嫌だとか思わないんだな、死ぬのって凄いな、無なんだ。
双葉が出た。
私、成長してる。死んだのに。
ああ、あああ、もうクソが、こんな事なら一回ぐらいリアルでホストとかイケメンと遊びたかった。違う、ヤリたかった。一生に一回ぐらい朝から声が枯れるまで無茶苦茶タイプの男とベトベトにヤリ狂いたかった。
あ、雨だ。
私、またきっと育つ。死んだのに。
双葉の間から何か出た。
私、花とか咲くのかな、草なんて詳しくない、知らんし。
ああでも誰かが、ピンクの髪の誰かが薔薇が好きだった。あんなに何百回も犯されたのに名前が思い出せない、誰だっけ。
あ、私死んだんだわ。
なんか私、伸びてる。
目がついてたら見えるのに、目? 目ってなによ、ウケる。
このまま成長したい、早く受粉したい、早くヤりたい。
あ、蕾が出来そう。
私咲くんだ、私死んだんだっけ。
早く咲いてよ、早く、早く、早く、なんか沢山いっぱい超山ほどメッチャ子孫残したい。
暖かい。
咲いた。
どんな花、雌しべ、雄しべ、雌しべ。
あ、子供、あっ、あっ、ダメ、あっ、切れた。
千切れた体、花、千切られた助けて痛い、水もう足りない水、ダメやめて死んじゃう、まだ、痛い痛い痛いまた死ぬから止めて戻して!
「……あげる」
「可愛い花、ありがと」
「……またね」
「うん、また明日」
……好き。言えばいいのに、好き、簡単だよ好きなんて。
私は死ぬ、ダメもう死ぬ痛い水が欲しい手が手が手が手が子供の手が熱い。
言葉で、好き。
痛い。
好きって、言葉で。
簡単なのに。
「ママ、ソウタ君からもらった! これなんのお花?」
「良かったね、調べてみよっか……これかな?」
「あ、これだ」
「いろんな色があるね。花言葉は『たくましい』『したたかな』……あ、『いつまでも友達』って」
「……ふーん」
「良かったね」
良くない、違う友達、友達じゃなく、死ぬ、好きって、お互いに好き、好きって、痛い死んじゃう、ダメ死んじゃう、好きなの、違うの友達、ああもう死ぬ。
次はヒトになりたい。
普通のヒトに。
花言葉、クソだったな。
おわり。
推し活 もと @motoguru_maya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます