5 女幹部はもうゴメンです。
◆経営不振です。
ここは浅草花屋敷、地下5メートルにあるダメダメ団本部。
今日もダメダメ団幹部達による、お台場ステージの企画会議が行われていた。
「と、言うわけで、私は❪コブラ大使マン❫さんのステージは止めて、❪モモンガだよ、こんにちは❫さん子供ショーと、私の『唄のお姉さんは魔法少女』ショーをやります。そうしなければ、観客が減り続け、ジリ貧は確実です。宜しいですね?❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マン様」
と、話しているのは、ピンク髪を腰下まで伸ばし、ミニスカートコスチュームの美少女。
世界を救った魔法少女、ラブリーミラーだ。
魔法少女とアイドルを兼任していたラブリー、ダメダメ団に負けて本業のお台場ステージをすっかり乗っ取られている。
しかも、アイドルステージから子供ショー専門にすっかり様変わりしたステージ。
もはや、共同経営者と化したダメダメ団の経営不振は、ラブリーにとっても死活問題だ。
ラブリーは仕方なく、経営会議に口出しする事にした。
そして、そのラブリーミラーが訴えているのは、長い会議机の先に身体の線が出まくりで、明らかにその下は何も着てないだろうと思われるマントを着込み、王冠を付けた人物。
ダメダメ団の親玉、❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンだ。
彼は顎に手をやり、真剣な表情でラブリーミラーが提出した、ステージの収支報告書を眺める。
額にシワを貯めた表情からは、事の深刻さは理解いただけたようだ。
意見を言い終えたラブリーミラー、その場に着席し一息ついた。
ちなみに、この会議に怪人❪モモンガだよ、こんにちわ❫と、怪人❪コブラ大使マン❫は出席していない。
❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンと、その側近の黒タイツだけだ。
理由は簡単、会議室が手狭でデカイ着ぐるみが入れないからだ。
❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンは、サラサラっとメモ書きすると、側近の黒タイツにメモを渡した。
黒タイツはそれを受けとると、ほふく前進でラブリーミラーにメモ書きを届ける。
ラブリーミラーはミニスカートを手で押さえて、中が見えないようにしながら黒タイツからメモ書きを受けとると、黒タイツをキッと睨んで言う。
「普通に歩いて渡して下さい。セクハラで訴えますよ!」
黒タイツはヘコヘコしながら立ち上がり、座席に戻った。
「部下の躾がなってません。ちゃんと指導して下さい!」
さらに、❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンにも直接言う。
❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンも、ラブリーミラーにヘコヘコした。
「大体❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンさんは、なんでいつも喋らないんですか。先日は、拡声器で幼稚園バスを誘導してたじゃないですか。私、ちゃんと見てますよ!」
ラブリーミラーの話しに、❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンが、何故か扇子を出して自分の頭を叩き、『こりゃ、1本とられた』的な態度をしている。
ムカッ
ラブリーミラーは、青筋を立てて震えるが、まずはメモ書きを見る。
「はあ?コスチューム変更!?どういう事?」
そこには、魔法少女ラブリーミラーのコスチューム変更依頼と、後日、ラブリーミラーの自宅に、新コスチュームが送られる旨の連絡書だった。
「あの、これは一体?それに私、自宅を教えてないんだけど…ってあれ?」
ラブリーミラーが、メモ書きから顔を上げると、❪着てるよ裸じゃないよ王様だよ❫マンと側近の黒タイツは、すでに居なかった。
◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
会議室を出たラブリーミラー。
浅草駅から東武線に乗り、家路に向かう。
ラブリーミラーが自宅近くに着いた頃、その自宅前の電信柱の影で、ラブリーミラーを待っていた者がいた。
ラブリーミラーが自宅に近づくと、その影は突然、姿を現した。
「コブラーッ!!」
コブラ蛇の着ぐるみだが、コブラ蛇の首下辺りから、無精髭の怖いおっさんの顔。
両手両足が生えており、両手にはコブラ蛇頭の手袋?、両足は黒ブーツを履いた怪人、❪コブラ大使マン❫が、プラカードを掲げて現れた。
「きゃーっ、変態?!」
突然の怪人❪コブラ大使マン❫の来襲に、思わずしゃがみ、頭を抱えるラブリーミラー。
そのラブリーに、プラカードを持った怪人❪コブラ大使マン❫が迫る。
「待て!悪の秘密結社ダメダメ団の怪人!」
その怪人❪コブラ大使マン❫とラブリーミラーの間に、割って入る者がいた。
背丈は185cm、長めの茶髪の髪に、目だけの仮面を付け、真っ赤な長いスカーフを纏い、真っ白い繋ぎスーツに、手は白手袋、白いブーツの均整のとれた容姿を感じる男。
「私は正義のヒーロー、❪ワッテハイルマン❫だ。いたいけな少女を襲う怪人め!許さぬぞ!『行列は並ばず、割り込みましょうキッーク!!』」
「コブラーッ!?」、ばきゃっ
怪人❪コブラ大使マン❫に、❪ワッテハイルマン❫の必殺技が決まった。
ちゅどーんっ
怪人❪コブラ大使マン❫は、プラカードとブリーフを残して爆発消滅した。
「お嬢さん、もう大丈夫ですよ。悪い怪人は、私が退治しました」
「へ!?」
しゃがんでいたところに、手を差し伸べられ、その手を取って立ち上がるラブリーミラー。
そこで初めて相手の顔を見る。
ズキューン
ラブリーミラーはその瞬間、カミナリに打たれた気がした。
そこで何故か、ラブリーの中で回想シーンが流れる。
『ははははは。ラブリー、こっちだよ』
『待ってーっ』
キラキラ輝く海岸で、追いかけっこをしている二人。
美しい光景は、まるで恋人のようだ。
「…お嬢さん、どうしました?」
「は?!あら、嫌だ。私ったら、ボーっとしていましたわ」
顔を赤らめて立ち上がる、ラブリーミラー。
「あ、あの?お名前を伺っても?」
「❪ワッテハイルマン❫です。美しい人」
ニカッと歯を出して笑う、ワッテハイルマン。
キラーン、白い歯がキラリと光る。
「まあ、美しいだなんて、そんな」
ポッ、さらに赤くなり、手で頬を押さえるラブリー。
「悪の怪人は滅びました。もう、大丈夫です。それでは!」
「ああ?!ま、待って、お礼を?あら?」
シュタッと手を上げ、瞬時に居なくなる❪ワッテハイルマン❫。
ラブリーが辺りを見回したが、すでに姿はなかった。
「ワッテハイルマン様…私だけのヒーローだわ」
目をキラキラさせ、祈るように両手を組んで空を見上げたラブリー。
❪コブラ大使マン❫が残したプラカードには気づかない。
プラカードには、こう書かれていた。
(新コスチューム、確かに自宅に届けました)
謎が謎を呼ぶ、壮大なスペクタクルロマン。
❪ワッテハイルマン❫とは何者なのか?
ラブリーミラーの新コスチュームとは?
果たして、ラブリーミラーの運命はいかに?
つづく?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます