天才鍛冶屋が見る初めての日本刀


 エルメアーナもエルフの女子が、自分の間合いから離れたのを確認すると、カウンターに置かれた剣を手に取って、鞘から剣をゆっくり引き抜くと掲げて覗き込んだ。


(剣に、刃こぼれって、これは使った事があるって事だな。 それにしても、何だ、この剣は?)


 エルメアーナは、掲げた剣を裏返し、また、覗き込んだ。


(材質は、鉄だよな。 この細身で、刃こぼれ程度なのか。 それに、この剣は何だ。 しのぎの辺りか、いや、刃と峰では、材質が違うようだ。 どちらも鉄? 重ね合わせてあるのか。 それに、この刃としのぎの間に波打つような模様もんようは何なんだ。 どうやったら、こんな模様もんようを出せるんだ)


 エルメアーナは、剣を見ている目が、真剣になり、徐々に鋭い目つきに変わり始めた。


「なあ、この剣は、お前の剣じゃないと言ったな」


 エルメアーナは、少しドスの効いた声で、エルフの女子に聞くと、それを聞いたエルフの女子は、その声が怖いと思ったようだ。


「はい、それは、ジューネスティーンの持ち物です」


 エルメアーナの剣幕にエルフの女子は、何だか恐怖を感じ、通常なら、ジュネスと愛称で言うところを、エルメアーナの言葉にプレッシャーを感じたのか、一歩下がりながらジューネスティーンと答えてしまった。


 そして、エルメアーナは、この剣の持ち主の名前を知ることが出来た事で、何か一歩前進したように思えたのかニヤリとした。


(やはり、あの男の持ち物か)


 エルメアーナは答えを聞いて、店の前にいる、以前、店に来た男子の持ち物で、名前も聞けたことに満足すると、エルメアーナは、立ち上がり、その剣を掲げたままカウンターから出てきた。


 その表情は真剣そのものであり、上にかざした剣を見つめている、その目は鋭いものだった。


 そのエルメアーナを、エルフの女子には少し恐ろしくもあった。


 エルメアーナは、エルフの女子に向かって歩いて来る。


 それは、その方向に店のドアが有るからであり、エルメアーナの興味はエルフの女子とドアの向こうに居るジューネスティーンなのだが、エルフの女子には分からなかった事もあり、その表情が怖いと思った様子で、慌てて道を開けるように避けると、そんなエルフの女子の事は気にする事なく、ドアまでの道が開くと、ズカズカ歩き出し、入口のドアを開けて外に出た。


 そして、店の外に居る男女に声をかけた。


「ジューネスティーンというのは、お前かーっ!」


 その怒鳴りのような声に、店の外に居た男女は、その声に驚いた様子で声の方に視線を向けると、剣を掲げたままズカズカと近寄っていった。


 ジューネスティーンは、エルメアーナの表情と掲げている自分の剣に驚いて後ずると、踵を何かに引っ掛け後ろに倒れて尻餅をついた。



 その様子にジューネスティーンは、少し怖いと思った様子で、足を伸ばすようにして少しでも離れようとした。


 尻餅をついたまま、後ずさるジューネスティーンと、歩いてくるエルメアーナでは、すぐに追いつかれてしまい、その足元から見下ろした。


「私は、これが、お前の剣かと聞いたのだが、聞こえなかったのか!」


 そう言うと、ジューネスティーンをまたぐようにして前に出たので、履いている巻きスカートの後ろの重なり目が広がって、スカートの中の足が見えるようになっていたが、そんな事に気がつく事なく、徐々に前に進む。


 視線を逸らす事なく、胴の辺りまで来ると、エルメアーナは、膝を外に向けて、しゃがみ込んだ。


 そして、顔を近づけるのだが、エルメアーナの巻きスカートは、人をまたいでしゃがみ込んだことにより、両膝は外側に向かって開いた状態になった事により、スカートが出て前に垂れるようになり、後ろからは、下着が丸見えになってしまっていた。


 その様子を魔法職の少女が見て、顔を赤くして見ていた。


 エルメアーナの下に居るジューネスティーンは、目の前の顔と手に掲げた剣にビビり気味だったので声がまともに出ないようだ。


 しかし、ジューネスティーンと一緒に居た魔法職の少女は、エルメアーナの行動に驚いてはいたが、直ぐに我にかえると、手に持っていた杖を両手で振りかざし、いまにもエルメアーナの後頭部に振り下ろそうとしていた。


 その杖をエルメアーナの後頭部に振り下ろそうとした時、店から後を追いかけてきたエルフの女子が、魔法職の少女を羽交締めにして、慌てて声をかけた。


「ダメーっ! シュレ、そんなことをしたら、その人、死んじゃうわよ!」


「アンジュ、この女は、ジュネスを襲っている。 ここで、倒さなければ、ジュネスが犯されてしまうぞ!」


 アンジュと呼ばれたエルフのアンジュリーンは、シュレと言われた魔法職の少女であるシュレイノリアを羽交締めにしつつ、倒れたジューネスティーンを見ると、そこには、ジューネスティーンの股間に腰を下ろすエルメアーナの淫らな姿が確認できた。


「あっ!」


 そこには、仰向けに後ずさるようにしているジューネスティーンの腰の上に、自身の巻きスカートがまくれ上がって下着丸出しで座り込んでいたエルメアーナが居た。




 ただ、エルメアーナには、そんな自分の後ろの女子2人には気が付かず、また、自分が何処に腰を下ろしているのかも気がつくことなく、自分の下に居る男子から視線を離さずにいる。


 ジューネスティーンは、エルメアーナの顔と手に持った自分の剣を見比べるように見ていた事から、何とかしないと自分の命が危ないかもしれないと思ったようだ。


「あのー、それは、自分の剣です。 手入れをお願いしたいと思ったのですけど」


「そうか、分かった! だが、手入れは、この剣について詳しく知ってからだ! 手入れをするにしても詳しい事を聞いてからでないと、余計なことをしてしまうかもしれないからな! すまぬが、色々、教えてもらえないだろうか」


 ジューネスティーンは、焦っていたが、今の言葉で、剣について教える間は、命の保障があると分かったことで少し安心したようだ。


 そして、自分以外に、この剣を持つ者は、知り合い程度しかいない事もあり、エルメアーナが剣について聞きたいと言ってきたことから、自分の作った剣が特殊で有ることを見抜いた事に気がついた。


 その鬼気迫るような表情は、自身の剣について知りたいのだろうと分かると、命の危険は無さそうだと感じたようだ。


 そして、ジューネスティーンは、徐々に顔を赤くしていた。


「は、はい。 その剣は、自分が作った剣なので、一通りの事は教えられるとお思います」


 エルメアーナは、ニンマリとして、手に持っていた剣を見た。


「そうか、それでは、教えてもらおう」


 ジューネスティーンの教えるという言葉にエルメアーナは嬉しそうにした。


 だが、ジューネスティーンは、少し恥ずかしそうにしたままだった。

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