中学生編
第1話 とある少年の怒り
「許さない…許さない…許さない……」
中学2年生の少年は散らかった部屋の中でそう言い続けている。
今日は水曜日、なんでもない平日。
しかし今日は学校が休みだ。
休みの原因は学級閉鎖。
いや、違う言い方をした方がいいだろう。
先日、人が死んだからだ。
※
――1ヶ月前。
「なぁ杉浦!俺Youtuber始めたんだ!」
そして目の前にいる見るからにクラスカースト上位の元気な奴は
みんなはカーチンと呼んでいる。
多分普段あまり話さない僕に話かけて来たのは登録者数を稼ぐためだろう。
「そうか。登録者数は何人だ?」
僕の質問に対し金宮は自信満々に答える。
「30人だ。たった1週間で!」
金宮の返しに僕は半目で返す。
「そのうち学校の奴らを抜いたら?」
僕の返しに金宮は顔を
「……5人だよ」
「ぷ…ははっ!」
金宮の登録者数が予想以上に少なかったから笑ってしまった。
「うっせー笑うなよ!増やす目星はついてんだからな!」
金宮の
「そんなのあるのか、まだ底辺だろ?」
金宮はその返しを待ってたと言わんばかりに言う。
「コラボをするんだ、白雪と!」
「白雪?」
白雪とはうちのクラスにいるもう1人のYoutuberだ。
白雪の動画は父親の編集技術とその息子である白雪の発想力で広い年代の人に楽しまれている。
その登録者数は52万人。
僕もよく見させて頂いてる有名人だ。
…と同時に僕の幼なじみでもある。
「白雪か。いいんじゃないか?あいつよくコラボするし」
僕は反対する事無く軽い返しをした。
※
――帰宅路。
「白雪、金宮とコラボするんだな」
「うん」
当然だが白雪と僕は家が近い。
だから小学生の集団登校が終わった後でも一緒に登下校をしていた。
「どんな内容にするんだ?」
僕の質問に白雪は少しした後に答えた。
「カーチンはまだ始めたばかりだから実況力とかは無いと思う。だから逃走中みたいな活動的な内容にしようと考えてる」
多分今考えた内容だよな…と思ったが同時に1つ疑問が沸いた。
「需要の無いコラボを視聴者は見に来るか?」
多分、というか十中八九視聴者はカーチンを知らない。
誰も知らないYoutuberのコラボ動画なんて見るのだろうか。
しかし白雪はそれに対する答えは出していたようですぐに答えた。
「動画最後にプレゼント企画をしようと思うんだ。これなら視聴者も集まるでしょ?」
確かにTwitterでもプレゼント企画はリツイート数がとてつもなく多くなる。
再生回数を稼ぐならいい手段だと思う。
「金宮はいいな、こいつのおかげですぐに登録者を伸ばせるんだから」
僕の返しに白雪は苦笑する。
「こんな方法じゃないと関わりを持てないんだから仕方ないさ」
「そうか…」
それ以上は何も喋らずに各々の家に帰った。
コラボ動画は今週末に出すとLINEで聞いた。
多分いい動画になるだろう。
僕は楽しみにしていた。
……していた。
その1ヶ月後、白雪が死んだ。
第2話に続く…
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