7-3 : リゼット
◆ ◇ ◆
膝を抱き寄せ身体を丸め、銀の毛先を
まるで、手負いの野良猫が自分の縄張に引き籠もり、傷の癒えるまで息を潜めているかのよう。
捨て
それから結局〝ここ〟へ流れ着き、かれこれ丸一日こうしている。
目を閉じても
〝記憶〟といっても、彼女のそれは数えるほどしかない。
古代の技術遺物たる、中間二元存在――〈
だから彼女の記憶は、まだたった二週間分しかなくて。
それを新しいものから順に
…………〈
――認めねェ……あンなヤツが
…………〈ぽかぽかオケラ亭〉が襲撃された日のこと。そんなことになっているなんて夢にも思わず、皆で夜明けまで機械を囲んで騒いだ夜。似顔絵コロッケを投げ渡すと、アイツらが笑顔になっていたのを思い出す。
――ハッ。めでたい
…………〈ぽかぽかオケラ亭〉ですごした日々。昼間は店の四人でてんてこ舞いで、夜はアイツの寝床で眠った記憶。
――聞き分けのねェヤツら……アタシは〈
…………〈解体屋〉との出会いと衝突。アイツが身代わりになって、
――……
更に記憶を遡る。
…………アイツの寝顔を踏みつけたこと。己の名を告げた、最初の夜。
――……。……そりャ、あのときのアタシは今よりバカだッたけどサ……仕方ねェじャン、何にも知らねンだから。どうすりャイイかなンて、わかるわけねェジャン……。…………。
気がつけばそうやって、頭の中に浮かんでいるのはいつもアイツの顔だった。
仲間たちの顔だった。
「…………ホンット……なンでアタシ、あンなヤローのこと、
シーツにモゾモゾと
そして、記憶ははじまりの場所へと流れ着く――
…………それは、
感覚はまるでなく、意識もない。
闇一色の、夢とも呼べない夢を見ていた気がする。
『
ふいに、アイツの口にした、そんな言葉が浮かんできて。
――……アァ、クソッタレ……思い出しちまッたジャンか……。
彼女は自分の身体を不思議に思った。
何で
その言葉は、アイツが地下で見つけた銀の結晶に向けて
「……。……
「――――…………やっぱり、ここにいたな……
その声が聞こえたのは、彼女が独り言を
ここは、〈汽笛台〉……
倉庫の片隅で、およそ二日振りに、二人が互いの名前を呼んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます