★Step43 爽やかな朝の一時に
夕食後…
「はっ、はっ、はっ、はっ」
鈴木は腹筋中。一日二百回はやるのだそうで、筋トレは彼の生活の一部に成っていました。そんな時、部屋のドアがノックされました。
「はぁい、どうぞ」
鈴木は腹筋しながらそう答えました。
「お風呂、空いたから次どうぞ」
リンダは風呂上がりの上気した肌で鈴木に向かってそう言いました。
「あ、はい、ありがとうございます」
鈴木は上半身は裸、下半身はスウェットという井出達でリンダに向かってにこやかに返事をしました。そしてゆっくりと立ち上がると、リンダの方に体を向ける。
鈴木の体は筋肉質で逞しくも有り美しくも有った。それを直視できなかったリンダは、鈴木にくるりと背を向けて、視線のやり場に困ったと言う表情で、こう言いました。
「じゃ、じゃぁ、宜しくね…」
そう言って後ろ向きのまま、ぱたんと扉を閉めると、鈴木の前からこそこそと姿を消しました。そこで初めて鈴木は気がつきました。
「下も脱いでた方が良かったかな?」
良く有りません。
♪♪♪
次の日もリンダは身支度を整えると母屋の前に言ってみました。すると、やっぱり鈴木は昨日と同じたいそうをやっておりました。
「おはよう、鈴木!」
リンダは明るく、声をかけます。
「やぁ、おはようございます、リンダさん。今朝もご一緒に如何ですか?」
「うん、一緒にね!」
リンダも鈴木の指導でラジオ体操を始めます。すると…
「何をしているのかね?」
今朝はミルおじさんも母屋の前に現れました。昨日のリンダと同じ反応でしたので、リンダは、これがラジオ体操で有る事をミルおじさんに話しました。
と、言う訳で、今朝は三人でラジオ体操。鈴木の言う通りにやると、見た目とは裏腹に、結構ハードな運動で有る事が分ります。終わるころにはミルおじさんもリンダも、うっすらと額に汗を浮かべています。侮れませんラジオ体操。
♪♪♪
「ラジオ体操?」
南は牧場の柵の中でボスに脛をかじかじされながら少し怪訝な表情をして見せました。
「そうだよ、南もどお?意外と良い運動に成るよ」
しかし、南はあまり乗り気では有りません。
「そんなガキみたいな事が出来るら手」
「あら、そんな事無いよ、あれ、真面目にやると、物凄い運動に成るんだから、騙されたと思って、一度やって見ようよ」
南は、少し考えてから、こう言いました。
「騙されるかもしれない事は、しない主義だ」
今日も青空が高く、雲も白くて良い御天気です。
「人間一度位騙されてみるべきだよ」
「断る!」
ボスは尻尾をふりふり南の脛が気に入ったらしく、かじかじと甘噛みするのを止めようとしません。南も、止めさせようとはしませんでした。
「どうしたの?夏子がスコップを持って、二人に近付いて来ました。
「あ、あのね…」
リンダは夏子に今迄の経緯を話します。
「わぁラジオ体操、なっつかしぃ」
夏子は経験が有る様でした。
「夏子は知ってるんだ」
「勿論。小学生の頃は、毎朝、近所の公園で皆集まってやった物よ。帰りに貰うハンコがなんだか嬉しくて、よかったなぁあれ」
それを鈴木が毎朝、母屋の前でやっているのを話すと、夏子は南に向かってこう言いました。
「皆でやって見ようよ、丁度、夏休みなんだし、朝早いんだし。きっと良い思い出に成るわ」
「じゃぁ、明日の朝からは、有志が集まって始めましょ」
そう言う訳で、鈴木主催の朝のラジオ体操が仕事前の日課に成る事に成りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます