第23話異世界不思議解説:神通力:

 目の前に居るたぬき人語じんごかいしてみずからをむじな発言はつげんした事によって疑問ぎもんを持った男は理解りかいするため質問しつもんをする事にしました。

 「えっと……君は今、自分じぶんの事をむじなと口にしておきながら妖狸ようりつまりはだぬきだと紹介しょうかいしてきたよね? よく解らないのだけれど、一体どれが正しいのかな?」

 名前すらも聞き取れずに戸惑とまどっている男がたずねると落ち着いた声で『団三郎だんざぶろう』が答えを返してきました。

まぎらわしいまわしをしてしまいもうわけりません。あっしがらす佐渡さど小島こじまならば我等われら一派いっぱむじな総称そうしょうされますが、ここで顔をかせている者共ものどもはどうやらたぬきと呼ばせている様でふたとおりの名乗なのりを上げる事となりました。気軽きがる団三郎だんざぶろうとお呼び下さい〉

 挨拶あいさつをもう一度いちどなお団三郎だんざぶろうは、右の手のうちを見せてこしを低くした姿勢しせい丁寧ていねい対応たいおうを取っているが、頭は決して下げず男を強い眼力がんりき見据みすにらみをかせつづけておりました。

 〈御二方おふたかた はとも大層たいそう御仁ごじんなのでしょうが、此方こちらも小さな島とは言え総大将そうだいしょう名乗なのっている身の上な者で、軽々かるがると頭は下げる事は出来ませんご了承りょうしょうねがいます〉

 強力な妖気ようきを感じ取った団三郎だんざぶろうは敵か味方かを判断するため、『不老橋ふろうばし』の前に居た男達に話しかけたのです。

 〈さて、今度こんどこそ此方こちらといに答えてもらいます。そのあやししげな力があふれ出している石橋いしばしはいったい何なのでしょうか?〉

 団三郎だんざぶろうにらみに殺気さっきくわえたのか、すごみがしこれ以上いじょう余計よけいしゃべりをゆるさないようにと態度たいど一変いっぺんさせてしました。

 【この橋は妖精ようせいの国から来た使者ししゃけた物です。森の中をべる養老ようろう大精霊だいせいれい許可きょかを出せば妖精の国とこの森がつなげられる手筈てはずとなっているようです】

 男が落ち着きを取り戻したと判断はんだんした樹精じゅせいは、話がとどこおる事のないよう自身じしん会話かいわ参加さんかする事にしました。

 〈いくら天竺てんじく菩提樹ぼだいじゅさまおっしゃる事だとしても、こんな人里ひとざと近くの森にわざわざ妖精の国へつながるはしけられるなんて、いささかしんじられない話ですぜ〉

 『団三郎だんざぶろう』の目的もくてきは、樹精じゅせいる『印度菩提樹いんどぼだいじゅ』が会話かいわわった事ですすんだが渦中かちゅうはずの男は何も解っておりません。

 【今、目の前にいる男を求めて人属じんぞくみにくあらそいをこさぬよう、森の中に『あやかしじゅつ』をほどこ算段さんだんなのです】

 樹精じゅせい自身じしん妖精ようせい使者ししゃと考えた計画けいかくを『団三郎だんざぶろう』につたえるとすこだまり考えんだのちに、樹精じゅせい怒気どきつよめたこえを上げました。

 〈……たしかにこのおかたはっするちから並々なみなみならねえすげえもんだが、このあたりは『養老ようろうさま御膝元おひざもとどれだけ人属じんぞく野郎やろう勝手かってあらそいをはじめたとして、このにはあしせねえはずだ‼︎〉

 佐渡さどしまを支配(しはい》するほどつよちからち、固有こゆう名前なまえを持つ『団三郎だんざぶろう』ですら他所よそ縄張なわばりでは本領ほんりょうを出し切れず不覚ふかくってしまうかもれません。自然しぜん淘汰とうたして繁栄はんえいする人属じんぞくもりなかことなど出来できるはずがないとこえあらげて否定ひていしました。

 【人属じんぞく同士討どうしうちだけにはとどまらないのです。『預言者よげんしゃ』なるものがあらわれ、『覇権はけんためには聖情(せいじょう)をつけなければならない。聖情せいじょうとはけっしてけがれることがないきよらかでありつずけるかたまりる』とすで発言はつげんしてしまい、人々はりとあらゆる神聖しんせい瑞祥ずいしょうだろうと祥瑞しょうずいでもかまわずにもとめております】

 この新世界しんせかいまれるすこまえめられたことわり……『男が望めば望む程に幸せになれるのかがわかるよう』につくげられた異世界いせかいで、前世ぜんせ絶望ぜつぼう心傷しんしょうようにして昇華しょうかされるか未だ誰にもわからないのでした。

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