世界が優しい聖女様

@NONOsan2525

第1話異世界転生

 神様を心の底から信じた男が一人、この世を静かに去りました。

男の生涯には幸福などはなく、奇跡は起こらなかったのですが、それでも、男はただの一度も教えを疑うことなく、真剣に祈り続けていたのです。

 その男の最期は、微睡むような心地良い脱力と幸せで満ちており、今までに受けたありとあらゆる暴力や、いわれのない暴言によって疲弊した身体が解けて、神様の元に導かれているのだと歓喜し、意識を手放したのです。

 しかし、男はあたり一面が真っ白に覆われ、自分の手足でさえ見ることが叶わない不思議な空間で意識を取り戻したのです。

「……ここは?天国は?何で?どこ?」

男の独白にあたりが光り輝き反応を見せます。

「あなたは全ての試練を私に頼むことなく、最後までやり遂げたのです。次は幸福のみが降り注ぐようにしましょう。」

あたりに人はおらず、世界が輝いているのみでしたが、男の言葉に返事をする確かな存在がありました。

「神様でしょうか!?楽園に私は行けるのでしょうか?亅

「私の世界は複雑怪奇に絡まったまま、絶妙なバランスで止まってしまいました。はっきりと奇跡が降り注ぐ人間と、そうでない人間はわずかしか決まっておらず、蘇ることはないと嘲笑い、他者を貪り喰らうことがいまだ許されています。」

「何をおっしゃっているのですか?世界は神様がすでにお決めになっているのですよね?絶対だと信じておりました。これから先ずっと幸せの楽園で過ごせるんですよね?」

光は答えず一人で話しを続けます。

「私が創った全てのものには、きちんと意味が決めてあり、貴方達はその全てを支配するはずだったのです。ですが、貴方達はあろうことか他の生き物と対等にあろうなど、あまつさえ愛を育もうだのと特別一番良いものを創った筈なのに……」

「私はどうすれば……」

男の疑問に光がやっと連れてきた理由を説明しだしたのです。

「あなたにはこの世界ではなく、新しい世界を創り、その世界で一番良い特別な存在になってもらいます。」

「どうしてですか?私はあなた様のいらっしゃる世界には不必要なのですか?」

男は自身は神様に見捨てられてしまうのかと驚き声を上げてしまいます。

「いま、新しくできた世界はとても良いものになったと思っています。前の経験を元に、嫌悪や好意を存在する全てにきっちり決めてしまい、人間だけを特別にはしません。決まりを守らない人間と決まりを守れない人間を送り込むことで、始めの世界には正しい人間が残り、一度も終わらせることなく天国へと変えることができる。良くしてくれたあなたには自分がどれだけ望んだだけ幸せになれるのかがわかるよう、今のままあちらへお送りしましょう。」

男は考えが追いついてはおりませんが、光から見捨てられぬように、自分の気持ちをできるだけ伝えるために、言葉を並べていきました。

「もう辛いんです、死ねてよかった、嬉しかったって……笑いながら、死んで欲しい、殺せば楽しい気持ちになると襲った男に心から感謝してしまいました。もし生まれ変わることなく、私のままだとどう死ねるのか考えて、そのまま死んでしまいそうなんです。」

悲痛な叫び、心からの願いにひかりは少し黙り男の話に耳を傾けました。

「私は貴方のいる世界で生きていたい。必要ないのなら消してください!お願いします、どうかお願いします。」

「あったことを無かった事にするなんて、何もかもを綺麗さっぱりともとに戻さないといけないのでしたくはありません。」

無慈悲な否定でしたが、絶対的な力を持つ光が、わざわざ話を聞いてくれただけで、男の心は落ち着きを取り戻しました。

「ですが、あなたに感謝はしています。七日間頑張って考えた初めての大作が少し上手く行っていないことに不満がありましたが、これで解決します。二つ創って、分けてしまう。望むものにだけ与えて、望まないものを消してしまうなんて手間をかけようとするから上手く進められなかったんです。」

興奮したように一人で好き勝手にはなしだす。

「次の世界に私は向かわないので、奇跡を与えて修正していく必要はありません。しかし、信じることができなかったものでも、まとめて創ったものに優劣があるのは見ていて不愉快です。特定の条件下で、開く楽園位は用意しましょう。永遠ではないほうがいいですね、程度の周期で交互に繰り返すとかか……」

「まだ、試練が続くのですね。」

自身の願いは聞きとどけられず話し合うことすら叶わない男でしたが、それでもなを神様信じ続け、救いを求めてます。

「失礼しました、最初の予定よりも創った世界が上手きそうなので、ついつい考え込んでしまいました。あなたのことは新しい世界で、あなたが好ましく感じているすべてを与えていかに素晴らしいのかを体験してもらうこととします。すでに創ったものとそう変えようとは思っていませんので、七日間はかからないと思いますが、それまでじっとしていてもつまらないでしょう。これから創る世界一度とまとめてしまいますね。それではありがとうございました。」

男がなにかすることさえかなわず、何もない空間もいつの間にか消えてしまいました。

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