その名は二刀流、うさぎ
いすみ 静江
その名は二刀流、うさぎ国より
この世は、うさぎで溢れかえっている。
そして、季節は、冬。
今季も、うさぎ達に人気の祭典、スケーター大会が催された。
第百回と言う節目となるものだ。
ファンファーレに続き、大会曲のスケーター番長が流れる。
リンクからは、黄色い声が、今か今かと素敵な男子スケーターの出番を待っていた。
二人は好敵手だ。
二刀は、全身が灰色をしており、鼻筋と口元が白い、精悍な男子だ。
スケートは、雄々しく力強い四回転を飛ぶクワドラプルを得意としている。
第九十九回で、クワドラプルアクセルに失敗し、挫折をしたが、それでも果敢に挑んでいる。
流は、全身は白いが、左目に黒の眼帯をしており、背中の一部が黒い優しい面差しの男子だ。
スケートは、シークエンスと呼ばれる様々に舞いながら大きな円、若しくは直線を描くものが得意だ。
さて、順番が来て、黄色い声の門を二刀と流が潜る。
暫く、リンクでスケーティングをし、本番前に慣らしていた。
流が高難度のスピンを確認していたときだ。
ライバルの二刀が近付いて来た。
「おい、流」
「ああ、二刀くんか。僕のスピンが当たると怪我をするぞ」
流は、黙々と練習をし、確認をしていた。
「なら、止めろよ」
「分かった。用事はなんだい、二刀くん」
六ウサウサの練習時間も一杯になる。
「俺さ、シングルでも男子ペアでも行けるよ。流……」
肩に触れられながら言われる。
突飛なことに、流は戸惑いを隠せなかった。
「二刀くんは、どっちも行ける口だったのか。僕は、驚いたよ」
流は、少し笑うように流そうとした。
リンクのサイドに二人は消えて行く。
「俺らシングルスケーターとして、やって行けるんだ。どうだろう。一度ペアを組んでみないか?」
「僕らで? どうやって男子同士で滑るんだよ。男女の体格の差があって、成り立つ競技だと思うよ」
うさぎの国の王、
二人は、控えの間に来ていた。
「ならば、俺が身の軽い流を支えるリフトとかをするさ」
「何故、僕らがそこまでしなければならないの」
「今度の第百回では、エキシビションで、新しい競技を発表しなければならないらしい。国王命令だ――!」
国王命令とは、伝家の宝刀を抜かれてしまった。
「分かったよ。プログラムはどうしようか。スケーター番長」
「んだ? 番長とは!」
二刀が怒りながら提案をし、プログラムのアタリをつけて、振り付けまでも決められた。
『男子シングルスケーティング、最終滑走です』
アナウンスがあると、一人、四ウサウサの本番演技は、あっと言う間に終わる。
一位は、華麗な舞だが、ジャンプの弱かった流が取れなかった。
流は二位となる。
「おめでとう、二刀。一位だな」
「謙虚だな、全く。流は」
お互いにメダルを掛け合う。
色の異なるものを。
そして、夕方になった。
『では、エキシビションを始めます』
最初は、女子シングル、男子シングル、男女ペア、アイスダンスと、競技毎のメダリスト達が、各々趣向を凝らしていた。
「行くよ、流!」
「分かったよ、二刀くん!」
二人で手を繋いで、リンクの中央に立つ。
流が手を挙げると、音楽が掛かった。
「おお! これは、スケーター番長ではないか」
王の四季が身を乗り出した。
「今季のスケーター大会をおちょくったような、激しい音楽だと思っていたが、余を楽しませる為のものだったか」
このプログラムは、後に伝説となる。
流がリバースラッソーリフトで二刀にしっかりと支えられる。
後ろ向きに滑り、頭上で流が半回転する大技だ。
そして、音楽にのって、滑らかに降りる。
また、二刀が軸となり、流がしなやかに背中を反らせ、デススパイラルも儚げに決まる。
次々に大技が決まる中、二刀が流の腰を支えて回転させながら投げる、スロージャンプで着地も美しく指先の演技までぬかりがない。
これらが、ビシッと決まる。
更に各々優れたスケーターなので、クワドラプルアクセルをペアでシンクロしながら飛ぶ。
ペアコンビネーションスピンは、スピンを得意とする流の誘導で、花が幾重にも開くように美しく広がったり、蕾になったりした。
「流、やったな……」
「ああ、思い残すことなんてないよ。二位だったのも忘れた」
二人で汗を掻きながら、リンクの中央へ行く。
花束が投げられた。
それを拾い、手を繋ぎながら挙げ、リンクを一周した。
四季は、満足が行ったようだ。
立ちながら、大きな拍手を送っていた。
「うさぎ国の皆、聞くがいい。次の第百一回から、男子ペアスケートの導入と、女子ペアスケートの検討を行う」
興奮冷めやらぬまま、高らかに宣言した。
二刀と流は、一人の名スケーターでありながら、二人でも滑れることで国外でも有名になる。
このことから、一人でもペアでもできるスケーターを
【了】
その名は二刀流、うさぎ いすみ 静江 @uhi_cna
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