村上駄文集

村上 耽美

ハムスターは新鮮が好き

「すっごくおいしい」

僕のガールフレンドは頬いっぱいにサラダを詰め込む。本当においしいのだろう、まんまるとした瞳に過度なハイライトをつけて、咀嚼が追い付かないほどに口に入れていく。

「もう少しゆっくり食べなよ」

「大丈夫、新鮮に食べられるうちに食べなきゃ」

 

この言葉は食だけにとどまらない。彼女はいつもそう言い訳をして浮気もしでかす。かわいい人間は男女問わず食べてしまうらしい。もうこれは彼女の生まれ持った性質のように捉えて、僕はもうあきらめていた。

ある日僕は、彼女がお風呂に入っている間に彼女のケータイの中身を見てしまった。1時間程度の動画がたくさんあるフォルダを見つけた。

やはり、そういう行為を動画にして残しているらしい。相変わらず彼女は、

「おいしい、おいしい」

「若い男の子、すごく新鮮」

 と、ご飯を食べるときに口にする言葉と同じようなことを言っている。別にがっかりしたとか、そういう感情はなかった。想定内である。

 一通りの行為が終わった後に、15分ほどの間があることに気づき、もう一回再生ボタンを押してみる。

「もう新鮮じゃないね、生きているということ以外は、ね」

そういったあと、ケータイの画面が真っ暗になり、男の人の大きな悲鳴が続く。しばらくすると、彼女の顔が画面に映り、

「ごちそうさまでしたー、星3.2かな」

と血液らしき液体をすすりながら男の身体を観察していた。


「なにみてるの?」


 ケータイを持った僕の、すぐ後ろから声がした。

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