勇気をくれる、この場所で

奏流こころ

喫茶 はと

 家の間隔がぽつりぽつりとなってきた道を通り過ぎると、生い茂る木々があり、そこを抜けると、平屋建ての古民家が現れる。


 この古民家は『喫茶 はと』。


 リノベーションして開店した。


 テラス席はないが、店内は広い為、寛げるようにはなっている。


 カウンターは5席。

 テーブル席は2人用を3つ、4人用を5つ。


 “はと”の意味はなく、店主の灯夜とうやと妻の朝歌あさか、2人で開店準備の買い物にて、時計屋で見つけた鳩時計から“はと”にしただけ。


 メニューは喫茶店に必ずある定番のものばかり。

 こだわりはないが、客が何か希望があれば、それに沿えるようにはしている。


 音楽はクラシックやジャズ。

 客の要望でラジオの時もある。

 春と夏は高校野球が気になるのか、その期間だけはラジオ中心になる。


 鳩時計が時刻を知らせる。

 鳩が飛び出してから、ポポーッと3回鳴いて引っ込む。


 開店時間は午後3時。おやつの時間だ。

 閉店時間は午後9時。時に午後10時になることもある。

 最近の夏は尋常ではない為、暑さが和らぐまでは開店時間を午後2時にしている。


 客層は高校生から社会人、ご年配の方もたまに。

 午後3時から午後7時までは高校生。

 午後6時から9時までは社会人中心となる。


 定休日は毎週月曜と金曜。

 土日を頑張る為に、その前後を休みにしている。


 酒の提供はしていない。

 この喫茶店の特長として、誰かの相談に乗ったり、ただただ話を聞くこともある。


 こうして得た客はたくさん。

 ありがたい話だ。

 新しい人を呼び込むのも大事だが、常連客を大事にしていくのも大切なこと。


「そろそろだね」

 今日も張り切る妻。

「そうだな、開店しようか」

 開店するって時はいつも緊張してしまう。

 おかしいかな。

 妻が店のドアを開けて、ドアに掛けてある看板をClosedからOpenにした。


 バタッ!と鳩が飛び出して。

 ポポーッ!ポポーッ!ポポーッ!

 と鳴いて。

 パタン!

 と引っ込んだ。


 鳩時計の合図で、午後3時、『喫茶 はと』は開店した。

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