第4章 厄災
15.来た
軍人五人の変死の話は瞬く間に壁の内に広まった。
村人たちは恐れ慄いた。
マガ神様が来た。
マガ神様が来た。
マガ神様がついに来た。
今月は誰もお祭りをやらなかったのだ!
言わんこっちゃない。皇帝様がニギ神様信仰をお禁じになられるから、こんなことになった。
被害がこれだけに留まるわけがない。惨劇が始まるのはこれからだ。
もう何もかも滅茶苦茶だ。もうこの村は終わりだ。おしまいだ。
マガ神様は人を殺す。それも大勢。
誰彼構わず無差別に人をお殺しになる。何の予告もなしに。
だから、軍人や役人だけではなく村人も危ない。あまねく全ての人が危険に晒されている。
次は自分だ、と誰もが思った。
村人にとって、いつ殺されるのか分からないという状況は、今までも同じだった。いつ軍人から銃弾が飛んでくるか分からない。そんな環境だったから。
今日からはそれに加えて、マガ神様のことも恐れなくてはならなくなった。
二重の恐怖が村人たちの精神に重くのしかかる。
それでも心を強く持って生きようと足掻く者もあれば、投げやりになって労働を放棄し銃殺に甘んじようとする者もあった。マガ神様に殺されるくらいなら、銃殺の方が遥かにましだと考える者も、少なくはなかったのだ。
一方、軍人や役人たちは首を傾げていた。
朝になったら、真っ赤な肉塊が五体、畑に転がっていたのだから。
監視兵五人が突然こんな猟奇的な死に方をするなど、全くもって意味不明だった。
犯人も分からないし殺害方法も分からないし理由も分からない。八方塞がりだ。
何か超常的な力がはたらいたとしか思えないが、誰もそんなものを信じてはいないから、ありえないと一蹴される。
原因不明のまま、事件の真相は闇に葬られる。
軍人たちはかすかな恐怖心と大きな疑問を抱えながらも、今日も村人たちの監視に当たる。
よく分からない事故などは無視して、目の前のことをやるのが己の仕事だと、彼らは頭に叩き込まれていた。だから彼らは異常事態が起きても、いつも通り滞りなく日課をこなすのだ。
だがその日にも災厄は起こった。
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